1大阪学芸高等学校附属中学校の国際理解教育
英語の技能は4技能から6技能へ
新時代の英語教育を導入
週3時間の総合的な学習の時間に展開される「国際理解教育」。
生徒達は、SDGsをはじめ、世界で起こる様々な事象や問題を、英語圏の学校で使われる教科書などを通じて、ネイティブ教員と共に、英語で学んでいきます。この授業の一番大切なテーマは、「世界を知ること」です。
「日本人に対しては失礼ではありませんが、私たちネイティブに言うと失礼になることはたくさんあります。それを生徒に伝えたところ、『どう失礼なの?』と聞かれたので、『自分の家に靴を履いたまま上がられたらイヤでしょう?それと同じ』と返すと、その生徒は『絶対イヤだ』と言いました。その感覚を持ってもらうことが非常に大切です。様々な人種や民族が生活しているこの世界には、言語や文化、肌の色など異なる部分はたくさんあります。同じ物事でも、その人達の見え方と、日本で暮らす自分たちの見え方は違う時もあるということを理解し、その理解を通して、グローバルな視野を育める授業を展開します」(ECS担当:キャンベル先生)
また英語力に関しては、従来の4技能「リーディング・ライティング・スピーキング・リスニング」に加え、
「ヴィジュアル」(画像や様々な人物のインタビューなどの映像を見て、考え、答えを導き出す力)、「プレゼンテーション・ディスカッション」(発表する力・意見交換する力)の6技能を磨けるカリキュラムとなっています。
自分が獲得したい英語技能で選ぶ
LAPとECS2つのクラス編成
授業は、リーディング・ライティングメインの「LAP(Language Arts Plus)」とスピーキング・プレゼンテーションメインの「ECS(Effective Communication Skills)」の2本立て。さらに「ECS」は英語技能により、高い習熟度を持つ「Intensive」と通常レベルである「Advanced」に分かれています。
クラス編成は、本人の希望と1年1学期時の「国際理解教育」の授業態度や実力テスト結果のほか、通常の英語での評価も参考に、担当するネイティブ教員全員で決定します。英語技能が高いクラスである「LAP」と「ECS」のIntensiveは、技能レベルは同じですが、自分の意見を掘り下げ、書く形で発表したい生徒は「LAP」を、英語が話すのが好きな生徒や英語でのプレゼンテーションに関心がある生徒は「ECS」を選ぶことが多いといいます。
「カナダのブリティッシュ・コロンビア州のカリキュラムを取り入れたLAPでは、英語技能はもちろん、自分の意見を深めて行く姿勢も大切です。『なぜ』を追求していく授業ですので、考えることが好きな生徒にぴったりです。英語が得意な生徒で、より発信力を高めたい子にはECSがオススメです」(LAP担当:アレン先生)
ネイティブ教員だからこそ出来る
世界スタンダードの成績の付け方
「国際理解教育」の成績評価は、日本の一般的な教科のように定期テスト中心ではなく、普段の授業を一人ひとり丁寧にチェックし、授業中の質問やディスカッションなどで積極的に発言をし、自分が学ぶだけではなく、クラス全員が学ぶことにどれだけ貢献しているかを評価します。
「スキルごとに判断していくので、例えばとても元気な子は『アウトプット力が高い』『理解力が高い』と評価することもありますし、反対におとなしい子は点数が低くなるのかというと、『書く力』や『読解力』という違う観点で評価するので、その子はその子で点数が高くなることもあります。海外で指導する教員の成績の付け方を導入しています」(キャンベル先生)
2解説!LAP(Language Arts Plus)
- 様々な教科を英語で学ぶ、イマージョン教育を展開
- 「HOW=なぜ」を追求し、書く力を養う
- LAPはこんな授業!
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- イギリスの教科書『Oxford Skills World』を使用し、様々な教科を英語で学ぶ
- オールイングリッシュ
- リーディング/ライティングを重視(ライティングは中3時で小論文を書けることを目指す)
- 中2時で英検準1級~2級レベルの授業を展開
Writer’s Report 中2・LAP授業
Teacher’s VOICELAP担当
ローレン・アレン先生
英語を英語で理解できる力を育む
LAPでは、6技能の中でも特に「リーディング」「ライティング」の2つのスキルを磨くことに重点を置いています。テキストは『Oxford Skills World』というイギリスの小学校の教科書を使用します。このテキストは、ユニットごとに理科や保健など、様々な教科について学べる内容で、今日の授業『Theme』は社会の単元に当たります。
授業はオールイングリッシュで行い、分からない単語や文章が出てきた場合も日本語で教えるのではなく、他の英語で置き換えるなど、英語を英語で理解できるように指導しています。また、一字一句完璧に理解することを求めてはいません。先程のアニメでも分からない部分があっても、それはOK。分からない所があっても見進めていく内に、「あの部分はこういう意味だったのかな」と推察する力も大切です。また、生徒同士の助け合いも勧めています。
HOWを通して磨く、論理的思考と批判的思考
LAPの授業では、「HOW=なぜ」という質問を一番大事にしています。今日の童話を見る際にも、「なぜそのキャラクターはそのような行動を取ったのか」「その行動についてあなたが不快に思ったなら、なぜそう思ったのかを考えよう」と伝えました。また、レポートを見せ合う時間では、友達と同じ答えがあるかどうかを確認し、もし違う答えがあれば、「私はこう思うけれど、あなたはなぜそう思ったか」ということについて話し合ってもらいます。なぜという質問を自分にも、他人にも向けることで、物事を筋道立てて考える力や批判的思考を身に付けさせ、自分の意見をしっかり持てる生徒に育ってほしいと思っています。
中3で小論文を書けるライティング力を養う
テキストを読み込むことで「リーディング」を鍛える一方、「ライティング」については段階を経て、長い文章が書けるように指導しています。文章を書く時には、あらかじめ正しい例文を提示することはしません。1行のシンプルな英文を提示して、「この文章に何を足したらいきいきとする/深みが出るかな」「どういう単語を使えばいいかな」とクラスの皆に聞いて、ディスカッションをさせ、最終的に皆の意見を取り入れた英文を提示する形で勧めています。このような指導を経て、中1時は1行を書くのも時間が掛かっていた所から、それが段落になり、エッセイになり、中3時では小論文まで書けるようになります。
毎回の授業では、『Quick Write』も取り入れています。授業ごとに異なるトピックを用意し、そのトピックについて3分間で自分の意見を書くというもの。例えば、トピックがお手伝いの場合は、どんなお手伝いをしているか・それは将来どのように役立つと思いますかなど、単なるお手伝いの羅列ではなく、こういうお手伝いをしているからこそ、将来こういう風な人間になるために役立つという所まで書かせます。
誰が読んでもきちんと理解できる英文を
書く上で重視しているのが、どの読み手が読んでも、「この子が言いたいことはこれだ」ときちんと理解してもらえる文章を書く技術です。これは、LAPで取り入れているカナダのブリティッシュ・コロンビア州で展開されているカリキュラムの特徴です。カナダは移民が多い国。色んな言語が飛び交う国なので、他の国に比べて、きちんと伝えることを重視しています。私たちの文化が当たり前じゃないという所からスタートした国の学びを実践することで、生徒達にも自分の意見が間違って伝わることのない英文作成技術を身に付けて欲しいと思っています。
3解説!ECS(Effective Communication Skills)
- 世界の課題に英語で取り組む
- 月2回のプレゼンで育まれる発信力
- ECSはこんな授業!
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- ナショナルジオグラフィック社『TIME ZONES』を使用し、SDGsをはじめ、世界で起こる事象を英語で学ぶ
- Intensive 1クラスとAdvanced 2クラスに分割
授業内容・進度は一緒だが、Intensiveはオールイングリッシュ、Advancedは日本語も併用 - アウトプットを重視
- プレゼンテーションを1ヵ月に2回も実施
- Intensiveの英語レベルはLAPと同じ、Advancedは英検3級レベルの授業を展開
Writer’s Report 中2・ECS授業
Teacher’s VOICEECS・Advancedクラス担当
ヴィクトリア・キャンベル先生
スピーキング・プレゼンテーション・発信力を重視
ECSでは「アウトプット」に重きを置いています。伝え方も、単語を並べるだけでも、でたらめな文法でも伝わっているならOK!というスタンスで指導をしています。伝わることが一番大事です。
使っているテキストは、ナショナルジオグラフィック社の『TIME ZONES』。宗教も一部ありますが、人種や環境保護など、SDGsをメインに取り扱うテキストです。今日のAdvancedクラスの授業は、海の単元の『Camouflage』がテーマ。海の中からはタツノオトシゴ、陸上からはふくろうを例に出し、どのように『Camouflage』しているかについて説明している英文を読みました。海藻や木があるから生き物たちは、隠れることができて、命をつなぐことができるということを学び、次に今の海や陸の状況を見て、最終的に自分たちがどのようにして陸や海の自然環境を取り戻していくかという所まで考える内容となっています。読む量や語彙のレベルは、英検3級程度です。
自然な動機付けでプレゼンを得意に
次の授業では、陸と海のチームに分かれて、生徒同士でペアを組んで、『Camouflage』している動物を調べ、スライドを作り英語で発表してもらいます。ECSでは「アウトプット」を重視しているので、プレゼンの機会がとても多く、1単元に付き2回。大体、1ヵ月で1つの単元を行うので、生徒達は、月に2回はプレゼンします。2020年度から、この国際理解教育を通して磨く技能を4技能から6技能へと変更し、プレゼンやディスカッションを多く取り入れるようになったのですが、実際生徒達からのアウトプットが増え、色々なことに興味を持つようになったと感じています。
中1の初めてのプレゼンの時は、前に出るのがイヤだという生徒もいましたが、私たちは前に出るのを強制することはしません。「それなら、自分の席でしようか」と本人が出来る場所で行ってもらい、「次はもうちょっと教卓に近寄ろうか」と伝えます。中2の今では、皆が前に立って堂々と発表してくれるようになりました。プレゼンを繰り返し行っている内に、生徒の中に自然と「教卓の前でプレゼンできるのってカッコイイ!」という気持ちが育めるように配慮して指導している結果です。また、1年生の時から、社会に出てどんな職業に就いても、調べる力・理解する力・それを第三者に伝える力が絶対必要で、それらの力を育めるプレゼンは何よりも大事だと繰り返し伝えていることもあるのでしょう。
大人になるのに必要な自立心の育みも大切に
生徒達は、プレゼンの準備も経験を積むことで非常スムーズに進められるようになりました。テーマについて調べ、画像収集・スライド作成し、説明の英文を書いて、プレゼンの練習をするまでが、50分で終わります。自分で「今何をしないといけないか」「どうすればいいのか」を考え、行動する姿勢が養われていることを感じます。
6技能をカバーするオンラインワークブック
『TIME ZONES』のワークブックはオンライン上で提供されており、生徒達はタブレットで取り組むことができます。きちんと6技能に分かれていて、声に出して録音しなければいけない単元、英文とそれに対する質問を聞いて答える単元、ビデオを見て答える単元、もちろんライティングもあります。オンライン・ワークブックで、従来のライティングメインの宿題から飛躍的に出来ることが増えたと感じています。