武庫川女子大学附属中学校・高等学校 ハンドボール部 インタビュー

知りたい!武庫川ハンドボール部
合言葉
「Fight to win」
合言葉 「Fight to win」
半数以上の部員が高校からの初心者だったという高校3年生。
武庫川ハンドボール部においては珍しいが、それだけに結束も堅く、勝利を目標に頑張ってきた。
普段から足腰を鍛える基礎トレーニングを大切に、
勝つための練習に励む部員の合言葉は「Fight to win」。
スタイル
武庫川フォーメーション
スタイル 武庫川フォーメーション
上原監督が考案したフォーメーションで攻めていくのが、武庫川ハンドボール部のスタイル。
崩されれば別のフォーメーションを組み直して攻めるため、
どんな状態になっても監督の指示通りの形が組めるように日々練習する。
練習の証
日焼け
練習の証 日焼け
大半の試合は屋内で行われるハンドボール。
しかし、学内での練習は、試合前以外は屋外になるため、部員全員がこんがりと日焼けしている。
それがハンドボール部で練習を重ねた証になっている。
悩み
松ヤニ
悩み 松ヤニ
ボールをしっかりつかむためのハンドボール用の松ヤニは、部員の必須アイテム。
しかし、手がベタベタになり、服につくと汚れがとれない…それが部員たちの悩み。
PHOTOGALLERY
体育館での練習。他のクラブと場所交代になるため、限られた時間内でキャッチボールやシュート練習などに素早く取り組む。軽快に走り込んで放たれる猛烈なスピードのシュートは圧巻。上原先生の身ぶり手ぶりを交えた大きな声での指導に真剣に聞き入りながら、さらに技を磨いていく。
INTERVIEW
田中さん[高校3年インテリジェンスコース] 田渕さん[高校3年インテリジェンスコース]小山さん[中学3年インテリジェンスコース] 加藤さん[中学3年インテリジェンスコース]

独自のフォーメーションで攻める
武庫川ハンドボール部

武庫川のハンドボール部の個性は何でしょうか。
【田中さん】
ハンドボールのコートプレーヤーは、6人でボールをつないで最後に1人がシュートをするのですが、そこまでに至る過程が武庫川は特殊で、それがすごく面白いと思います。
特殊というのは?
【田渕さん】
他校だったら、それぞれが1対1を仕掛けて戦うのですが、武庫川は攻め方のフォーメーションが決まっていて、それを何回も繰り返すんです。

【田中さん】
ひとつのフォーメーションの形が崩れたら、次はこのフォーメーションをやると決まっています。監督から指示を受けながら、最後のシュートまで持っていきます。普通はこんな戦い方はしないと思います。監督の方針で、特殊なフォーメーションで戦うことが武庫川ハンドボール部の個性です。このフォーメーションができるようになるために、毎日練習に励んでいます。
中学生も同じですか。
ボールなどの道具
ボールなどの道具
【小山さん】
そうです。私はもともとハンドボールを知らなかったので、試合の応援に行って他校のプレーを見て、武庫川の戦い方が特殊だとわかりました。
【加藤さん】
私は小学校でハンドボールをやっていましたが、そうした攻め方は初めてでした。積極的に攻めることが苦手だったので、フォーメーションが決まっていると私はやりやすかったです。
上原監督は、部員にとってどんな存在ですか。
【田中さん】
すごいとしか言いようがありません。私たちの学年は高校からの初心者が半分以上という異例の学年で、このチームを全国大会につれていってくださったことに感謝しています。厳しいですが、ついていけば絶対大丈夫という確信があるので信じてついていきます。
特殊な戦い方だけに練習は厳しそうですね。そんなハンドボール部の一番の喜びは何ですか。
【田中さん】
練習は大変ですが、私たちの学年の合言葉は、「Fight to win(勝つために頑張る)」。楽しいというより、勝ったときがうれしいから、それを味わうために今頑張るんです。“勝つ”ということが根本です。それが喜びです。

【田渕さん】
高校生チームのテーマは「新しいことへの挑戦」で、みんながそこに向かって頑張ることが喜びです。

【加藤さん】
中学生はまだ勝ったことがないので、勝って喜びを感じたいです。

日焼けがハンドボール部の証

中高合同で練習しているそうですが、先輩・後輩の関係性はどんな印象ですか。
【田中さん】
自分たちでは、他の部活より仲がいいと思っています。全体練習が終わった後でも一緒に練習をして、コミュニケーションもすごくとれています。

【小山さん】
わからないときは自分から聞きにいくこともありますが、先輩方が教えてくださることも多く、とても感謝しています。

【田渕さん】
わからないことがあったときに後輩が聞いてきてくれると、こっちもうれしいです。そのぶん責任も感じるし、自分も頑張れます。
武庫川ハンドボール部員らしさや部員だからわかる共通の話題を教えてください。
【田中さん】
ハンドボール部員は「黒い」とよく言われています(笑)。ハンドボールは屋内競技ですが、校内の練習場所の関係もあり、私たちはいつも屋外で練習していて日焼けするんです。基本、日焼けしていない部員はいないですね。

【加藤さん】
部員ならではの悩みは、ボールがすべらないように手につけるハンドボール用の松ヤニが服についてしまい、洗濯でも取れなくて困ることです。ベタベタで、専用のクリーナーを使わないと取れないぐらいに強力なんです。
松ヤニを使うということは、ボールをしっかりつかむことがハンドボールの基本なのですか。
フットワークのサイドステップ。足全体をしっかりと鍛えるために、腰をかなり低くして横に素早く動く。
フットワークのサイドステップ。
足全体をしっかりと鍛えるために、腰をかなり低くして横に素早く動く。
【田中さん】
それよりも絶対に鍛えなければいけないのは足ですね。他のクラブではやっていないような腰の低さでフットワークに励んでいます。足の筋肉もつくし、動きもよくなります。部員数が少ないこともあって、ケガをしない体づくりも大切です。
プレー中に一番求められるのはどういったことですか。
中学生は高校生とは別のプログラム。クロスステップで足を鍛える。
中学生は高校生とは別のプログラム。
クロスステップで足を鍛える。
【田中さん】
ハンドボールはボールをつなぐことが必要なので、パス・キャッチができないとシュートまでつながりません。

【田渕さん】
相手をいかにだましながらパス・キャッチをやるかが求められます。

メンタルが強くなり根性がつけられた

練習は毎日あるようですが、勉強との両立はうまくいきますか。
中高の仲の良さがうかがえる部員たち。
中高の仲の良さがうかがえる部員たち。
【田渕さん】
テスト週間になったら、朝、みんなで集まって勉強会をしています。家では、学校の宿題だけはやるようにしています。

【田中さん】
私は行きたい大学があり、そこに進学したいと思ってこの学校に入ったので、ハンドボールは大切ですが、どんなに疲れていても毎日勉強するようにはしています。明日やろうと思ってしまいがちですが、習慣にすることが大事かなと思います。

【小山さん】
私も電車に乗っている時間が長いので、暗記物は電車の行き帰りにやり、ドリルなどは家で毎日最低1時間はやるようにしています。

【加藤さん】
英語は授業までに予習しないといけないので、英語は毎日やっています。
練習で疲れていても頑張っているんですね。部活で鍛えられている部分もあるのでしょうか。
【田中さん】
メンタルは強くなりました。ちょっとのことではへこたれないと思います。気持ちがへこたれてしまうと練習も続かないし、ポジションも確保できないので、監督から注意されたことを心に留めながらも次へ向かうという精神力はついたように思います。これは社会に出たときにもきっと役立つと思います。

【田渕さん】
根性をつけられたと思います。つらいことがあったら投げ出しそうになりますが、「今だけは頑張ろう!」と思えるようになり、耐える力がついたと思います。
では、最後に武庫川のハンドボール部に興味を持った読者にメッセージをお願いします。
【小山さん】
入部したら楽しく部活ができると思います。

【加藤さん】
ハンドボール以外の部分で学べるところも多いです。

【田渕さん】
楽しくてやりがいのあるスポーツだし、誰でもうまくなれるので、ぜひ入部してほしいです。最初はルールがわからなくてもやりながら覚えられます。

【田中さん】
部員みんなが明るくて、思いやりがあります。つらいことや悲しいことも支え合え、これがチームプレーなんだといつも思います。私は人として備わっていないといけない心や感情が、ハンドボール部に入ったからこそ身についてきたような気がしています。やりがいがあって楽しいハンドボール部です。
【ハンドボール】
手を使ってボールをパスでつなげ、相手チームのゴールに投げ入れて勝負を競う球技。
6人のコート内プレーヤーと1人のゴールキーパーによる7人のチームで戦う。
INTERVIEW
右)??本蒼史くん(高校3年Aコース・高校31代目・部長)中)長谷川卓也先生(太鼓部顧問)左)今村暁里さん(中学3年Vコース・中学5代目・部長)

武庫川流1点を取るためのフォーメーションプレー

中高合同で練習しているそうですが、メニューは違うのですか。
【上原先生】
部員は、高校生9人、中学生12人で、同じ練習メニューを中学生と高校生が一緒になってやっていますが、意識も狙いも全く違います。中学生は本校に入ってハンドボールに触れた部員が大半ですから、まずハンドボールを好きになってもらうことが大前提で、そのためには燃え尽きることなく、先輩たちを見習って「ああいうふうになりたいな」と思ってほしいという考えです。高校生は「簡単な基本プレーが試合で生きる」という事から、あえて中学生と同じメニューを中心に練習しています。
上原先生が大切にされているハンドボール部の指導方針を教えてください。
【上原先生】
部活も学校行事も目いっぱい参加するということです。部員たちには10月の体育大会の実行委員に全員手を挙げてもらっています。9月に新しいチームでの公式戦がありますので、忙しい時期に敢えて実行委員をやるということは練習時間も短くなるし、放課後に役員の集まりや運営の準備などがあって様々な制限が出てきます。しかし、それをやり切ることで限られた時間内での集中力をつけられます。
ハンドボール部の顧問になられてからずっとその方針ですか。
【上原先生】
そうですね。体育大会の実行委員長は10年近くハンドボール部員です。
練習が忙しい運動部でそのような方針を取られているのはめずらしいですね。
上原先生が考えたフォーメーションが武庫川ハンドボール部を支える。部員はフォーメーションを徹底的に記憶して試合で戦う。
上原先生が考えたフォーメーションが武庫川ハンドボール部を支える。部員はフォーメーションを徹底的に記憶して試合で戦う。
【上原先生】
本校の体育大会はなかなか他では味わえないものがあり、壮大な行事になっています。参加するにしても、縁の下力持ちになるにしても、とても良い経験ができると思いますから、クラブと同じぐらい熱が入ってくれたらいいなと思っています。そしてクラブでは、できれば成功体験をしてほしいと思いますので、“試合に勝つ”ことを目標にしています。
武庫川のハンドボール部は、決まったフォーメーションで攻めるそうですね。
【上原先生】
「記憶することができなければ考えることもできない」と言われます。それをスポーツにも当てはめて、まずは徹底的に形を覚えます。他校ではなかなかやっていないのですが、フォーメーションを使って確実にシュートチャンスを作ります。
そのフォーメーションは上原先生が考えられたのですか。
【上原先生】
かなり紆余曲折がありました。とにかく強くなりたいという一心だったんです。あちこち渡り歩き、大学生の試合を見に行ったり、全国大会にビデオを撮りに行ったりして、強くなるためにできることはないか、取り入れられものはないかと方法を探しました。行き着いたところが、経験が少なければ形(フォーメーション)を覚えることが一番だということでした。形なので相手に見破られることもありますが、見破られたら見破られたときの形を作って戦います。
武庫川ハンドボール部ならではの戦い方ですね。
【上原先生】
そうかもしれませんね。キャリアのなさをどうやって補うかを考えました。特に今の高3は高校から始めた生徒が多かったので、フォーメーションに落とし込むことは効果的だったと思います。

ハンドボールは起こしたい現象を起こすスポーツ

部員の皆さんからは、「勝つこと」への強い意識も感じられました。
【上原先生】
世の中には自分たちよりももっとすごい選手がいて、頑張ったつもりでも自分の至らなさを思い知り、さらに努力を積み重ねる大切さを実感することになるから、大きな世界を見た方がいい。そのために「全国大会に行きたいね」と常に言っています。あと、18時30分が完全下校ですので、その時間的制約の中で伸びるには、普段の生活の中で頑張りを練習に取り組もうと言っています。これは体を使ってトレーニングをするわけではなく、帰宅後もひと踏ん張りして、勉強を含め、「つらい」「厳しい」「苦しい」を頑張ることをハンドボールに応用できるという意識をもとう、つまり、生活も練習の一部とすることで、強いチームと戦える力になると言っています。
それを部員たちがやり遂げられるように指導されるわけですか。
ハンドボール部の次のステップを考え、進み続ける上原先生に、部員たちはついていく。
ハンドボール部の次のステップを考え、進み続ける上原先生に、部員たちはついていく。
【上原先生】
結果的にずるいのかなと思いますが、やるように仕向けているんです。生徒たちのやらされている感をいかになくすかが大切だと思うんですよ。休日練習も9時から12時で終了して僕は離れてしまうのですが、その後3時間ぐらいは自分たちで練習しています。「こういう時に上手くなるんだよね。」と工夫する事を促して任せています。
今後のハンドボール部の目標はありますか。
【上原先生】
勝つことだけが目標ではなく、そこへ至るまでのプロセスが大事だと思っています。今年、全国大会に出場したことで、部員たちは全国大会が身近に感じたと思うので、それは追い続けられるような、届きそうな雰囲気になるように指導していきたいですね。
そのためには、先ほど話した24時間が練習の意識です。1日の中でハンドボールをしている時間は2時間程度ですが、それに関連づくような項目を生活の中で増やす意識づけをしてあげることを大切にしたいです。そうすれば強豪チームと遜色のないことが本校のハンドボール部でもできると思っています。
ハンドボールはスピードも速く、かなり激しさを感じますが、球技の中でも難しいスポーツなのですか。
【上原先生】
僕は、試合では何が起きるかわからない、とは思っていないんです。何が起こるかわからないからいろんなことを練習しようではなく、起こしたい現象を起こす。そのために守り方や攻撃の方法を洗練させていくというだけです。武庫川のハンドボール部は楽しいと思いますよ。練習は簡単で、すぐに成功が味わえることばかりです。成功の連続の先に考えることになり、ハンドボールというものが何かを知るのは最後の最後になりますが、そこへ行くまでは楽しいことが連続で起きるんです(笑)。ぜひ、一緒に挑戦しましょう。新しい仲間になってくれる人を待っています。