学校力レポート TEAM RIKA Interview 関西大学中等部
TEAM RIKA 日本一の理科教育を目指す「TEAM RIKA」の飽くなき挑戦
「TEAM RIKA」とは
「日本一の理科教育を目指す!」をキャッチフレーズに関西大学初等部、中等部、高等部の理科教員で結成されたプロジェクトチーム。「学ぶことが楽しい」という感覚をすべての生徒が持てるように、チーム一丸となって様々なチャレンジを行っている。
村松湖生 先生 INTERVIEW

「日本一の理科教育」を目指す集団

ココロコミュ
「日本一の理科教育」を目標にされていますが、それはどのようなものだとお考えですか。
松村先生
私としては、世界をリードして活躍する科学者を卒業生から多数輩出することが「日本一の理科教育」の証明になると考えています。そのためにチームが一丸となって最高の環境を作りたいです。今回、理科教員全員にアンケートを取ってみると、それぞれの「日本一の理科教育」に対する視点が違っていて面白いなと思いました。それぞれの視点から日本一を目指して切磋琢磨していく中で、チームとしての「日本一の理科教育」が見えてくるのかもしれませんね。もちろん、生徒のことを一番に考え、生徒と一緒に学んでいく姿勢が最も大切ですけどね。
ココロコミュ
「最高の環境」という言葉が出ましたが、ハード面も充実していますね。
松村先生
理科室が物理、化学、生物、地学の4教室あり、すべてにプラズマディスプレイが設置されています。ハード面の充実は、本校設立の前年から準備委員として、いろんな学校を視察できたことも大きかったですね。良いと思ったものを積極的に取り入れることができました。40人の生徒を想定して、デジタル顕微鏡などの実験器具やコンピュータも1人が1台使えるように揃えています。また、理科の実験時には、全員が関大ロゴの入った実験衣(白衣)を着ます。物理の実験や野外観察でも実験衣を着用します。
理科の実験時には、全員が関大ロゴの入った実験衣(白衣)を着ます。
ココロコミュ
汚れないような実験の時でも実験衣を着用するのはどうしてですか。
松村先生
体育の体操服のように、これから理科実験をするんだという気持ちの切り替えの役割もあるからです。いかに生徒たちに考えさせるかという本校の授業スタイルとも通じるように思います。中等部1年生でも、実験衣を着ることで、研究者であるという自覚が生まれるのかもしれませんね。授業は生徒主体でなければいけませんから。説明し過ぎてしまわないように、授業中は口数を減らしてなるべくしゃべらないということも「TEAM RIKA」で共有しています。大袈裟に言うと「教えない授業」という感じです。
ココロコミュ
非常にバラエティに富んだ7人の先生方ですが、チーム内での役割は決まっているのですか。
松村先生
経験や性格によってそれぞれの役割を担っている感じです。宇都口先生は科学辞典のような方、明神先生は論理的思考のスペシャリストです。まず、このお二人がドンと構えてくれているおかげで他のメンバーは様々なチャレンジができます。チームの柱として活躍している森岡先生はとにかくアイデアマン。身の回りのいろいろなものを使って、本当に楽しい授業を考えるんです。若い宮本先生、岡本先生は刺激を与えてくれます。外に出て勉強し、そこで得た経験や理論で授業を実践し、私を含め経験豊富な福島先生や森岡先生に勝負してきます。

インパクトある実験は「打ち上げ花火」

ココロコミュ
「液体窒素の実験」や「ダイヤモンドを燃やす実験」などインパクトのある実験もありますが、実際に生徒たちの反応はいかがですか。
松村先生
インパクトのある実験は確かに生徒の反応がいいんですよ。家でも話のネタになりますからね(笑)。 ただし、そういう授業は「打ち上げ花火」のようなもので、定期的に刺激を受けたり、みんなで感動を共有したりできますが、私たちの目指している授業と必ずしも一致するわけではありません。そうした実験ばかりでは授業の本質とずれてしまうので、あくまでも学びのきっかけとして位置付けています。「学ぶことが楽しい」という感覚をすべての生徒が持てるようになり、生徒が自分自身で学んでいけるようになればと思っています。
ココロコミュ
映像制作を理科の授業に取り入れられているそうですが、どのような効果があるのでしょう?
松村先生
中高共に、動画にアフレコを入れる授業を取り入れています。
中高共に、動画にアフレコを入れる授業を取り入れています。限られた時間(尺)の中に情報を入れるのはとても高い学習効果があります。要約することで本質に近づきますし、具体例を抽象的に表現するのも深く考えるきっかけになります。例えば、ある単元に関する寸劇(ロールプレイ)を生徒に創らせて、それを映像化し、映像化したものにアフレコを入れるということをしました。何回もリハーサルをし、何回も撮り直しをして、出来上がった映像を何回も見直します。そうすることによって、こちら側が意図しなくても、生徒たちにはこの単元の知識が定着しているんです。
ココロコミュ
ICTの活用はどのようにされていますか。
松村先生
文房具のように活用しています。必要な時に必要なアプリを使うことで、効果的に学習を進めることができます。授業での活用はもちろん、教員同士の授業内容の共有にも役立てています。自分の授業をアップしておくと、他の先生方がコメントをくれるんです。意見交流がスマホやタブレットの中でできますし、直接授業を見に行けなくてもお互いの実践を共有できるんです。でも、写真や動画での共有だけではなかなか授業の本質まではわからないので、日頃から「TEAM RIKA」では他の教員の授業をよく見学し合っています。

大きな夢を実現するための「考える力」

ココロコミュ
開校から6年がたち、中等部1期生が高等部を卒業ということですが、現段階での手ごたえはありますか。
松村先生
授業の様子
海外の大学への進学を考えている生徒がいることを嬉しく思います。アメリカに行く生徒が2名、マレーシアに行く生徒が1名、ハンガリーに行く生徒が1名です。大学に行ってから留学を考えている生徒は数え切れないほどいます。数値化できることではないのですが、視野を世界に広げ、大きな夢を持つ生徒が多いというのも手ごたえのひとつと言えるかもしれません。
ココロコミュ
最後に読者へのメッセージをお願いします。
松村先生
松村先生
「TEAM RIKA」を含めてこの学校では、世界で活躍するために「考える力」を鍛える授業を教員一丸となって実践しています。他校ではできないような色々な体験ができます。それから、決して大規模校ではないので、生徒にとって先生たちが非常に近い存在です。そういった環境で学ぶことができるのも、本校のたくさんある魅力のうちのひとつだと思います。

関西大学中等部

関西大学中等部
生徒が楽しみながら自身で学んでいける力を育成している関西大学初等部・中等部・高等部の理科教育。今回は中等部・高等部の授業を受け持つ先生方に登場していただきました。ややもすると充実した設備に目が奪われがちですが、何よりもTEAM RIKAの先生方が経験や性格によってそれぞれが役割を担いつつ、常に議論し、その過程を全員で共有していることが、同校の掲げる「日本一の理科教育」の根幹なのだと感じました。