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生徒自身の気づきを大切に、新たな視点と課題を見つけ出す探究の場「サイエンス・ラボ」
TODAY’S EXPERIMENT
中学3年 電流によるイオンの移動を見て酸性とアルカリ性を示すもととなる物質を探ろう
TEACHER INTERVIEW
自分なりの答えを出すことが目標!
たくさんの実験や観察を通して自分で考え追求する力を育てる
理科教育
― 貴校の理科教育の特徴や目標を教えてください。
佐賀先生
本校にはいろいろなことに興味を持ち、チャレンジしようとする生徒が多いので、理科的分野に興味を持ってくれる生徒を増やすことを目標に、観察や実験を積極的に行っています。生徒達は、教科書や動画教材などで見たものを実際に体験することで興味と理解を深めていきます。そういう実体験を重ねることで、将来理系に進みたいという生徒が増えてほしいと思っています。ですから、中学生の間は「理科は面白い」という理系の種をまいて、芽が出る所までを目標にしています。
― 実験を行う上で大切にしていることは何ですか。
佐賀先生
安全を第一に進めることと準備から片付けまでを生徒自身にやってもらうことです。高校生になれば、実験で使う溶液を用意するために、濃度の計算から行います。その過程で気づくことも多く、実際に理系に進学することになれば自分でしなくてはいけないことだからです。理系に進まない生徒であっても、準備や片付けなど見えない部分の大変さを知ることで、実験で結果が出た時の達成感もより大きなものになると思います。
また、実験のやり方は説明しますが、ある程度説明したら明らかに手順と違うことをしている場合を除き、後は基本的に見守ることに徹して、まずは生徒にさせてみることも大切にしています。
― まず、させてみることの狙いは何でしょうか。
佐賀先生
やはり様々なことを実際に経験してほしいからです。失敗して、他の班と違う結果が出ることもあります。しかし、失敗も経験のひとつ。中高生の教科書に載っている実験は、習ったとおりの結果が出ない場合でも、その原因が分かっていることが多いのですが、理系に進学する生徒は、大学等で答えのない実験を行います。失敗した時はなぜ失敗したのか過程を見直し、きちんと考え、条件を変えるなどして実験を再び進めていくことが求められますから、失敗を通して学び、自分で考える力を中高の6年間で付けておくことはとても大事なことです。
また、自分で経験して学ばないと理解できないことはたくさんあります。たとえば、実験中や片付けの際に生徒が試験管を割ることも起こります。「こうやったら割れるんだ」「ガラスはこんなに危ないんだ」と自分で経験して学ぶことも大切です。実験は危険と隣り合わせであることや、教員の指示をしっかりと聞いて、指示通りに行うよう最初に厳しく伝え、安全面に充分に気をつけた上で、経験を通して学ぶ場をしっかり提供していきたいと思っています。
― サイエンス・ラボではどのような実験をどれくらいの頻度で行う予定ですか。
佐賀先生
コロナ禍に入る前は、中1では植物の観察や地学の岩石スケッチ、化学分野では実際に水を沸騰させたり、凍らせたりして状態変化を見る実験。また物理分野では物質の密度を求める実験。中2では色々なものを燃やす燃焼実験やそれにまつわる酸化の実験や食物の消化の観察。中3では酸性・アルカリ性を示すもとになる成分を調べる実験(上写真)のほか、遺伝について学ぶ際に細胞の核を染色し、細胞分裂を観察する実験をしていました。
サイエンス・ラボが竣工し、1つしかなかった実験室が2つになりました。両方を同時に稼働できるので、単純に考えれば今までの2倍の実験ができます。コロナ禍でなかなか附属中生は実験ができませんでしたが、今後は中学でも全学年で実験を再開していきます。本校は中3で外部進学する生徒もいるため、時間的にもカリキュラム的にも余裕がある中1・2生では特に力を入れて実験を行っていきたいと考えています。早い段階で実験室のどこに何が置いてあるかを覚えてもらえれば、準備や後片付けも自分たちでできるようになります。
― サイエンス・ラボを通して、どのような力を育みたいと考えられていますか。
佐賀先生
まずは、とにかく自分で考えて追求する力ですね。そして、自分の経験と知識を生かして、正しい答えでなくても良いので答えをきちんと出せる力を育むことを大きな目標としています。
授業で生徒自身が実験を行っている学校は、そんなに多くありません。設備や時間的な都合などによって、一人一人の生徒が実際に実験を行うことは難しいのが現状です。本校では、サイエンス・ラボの竣工によって様々な分野の実験を行うことが可能になりました。生徒自身が実際にいろいろな分野の実験を経験することにより、自身の興味や可能性を認識し、将来の進路選択の助けになることを期待しています。
本校では、英語や様々なスポーツを頑張りたい生徒も多く、附属中から理系に進む生徒は多くありません。しかし理系に進まなくても、実験を通して理科は面白いと感じることや、実験にまつわる大変な部分も知ることは無駄にはなりません。文系に進む生徒も理科の授業は楽しかったと記憶してほしいですし、中学を卒業した後の高校での理科の授業や興味につながるような授業・実験をしていきたいと思っています。実験を通して、理科は楽しいと思ってくれる生徒が一人でも増えてくれたら嬉しいです。