田園調布学園中等部・高等部 自由な発想と行動で課題解決達成感が自己肯定感になる探究学習
田園調布学園中等部・高等部 自由な発想と行動で課題解決達成感が自己肯定感になる探究学習
田園調布学園では、中等部1年生から高等部2年生までの5年間をかけて、探究学習に取り組みます。中等部では基礎となるデザイン思考を学び、そのステップを様々な課題解決で実践。高等部では自ら課題を発見し、外部の企業や大学の協力を得ながらより深い課題解決を目指して探究を進めます。ココロコミュでは、年度末に行われる1年間の探究学習の集大成『探究発表会』を取材。試行錯誤した探究内容を発表した生徒たちの声、中等部1年から段階を追ってていねいに探究を指導し続ける探究係の先生の言葉から、田園調布学園だけの「探究」をご紹介します。

田園調布学園探究学習

中等部デザイン思考の基礎を学びながら課題解決スキルを身につける

デザイン思考のステップ
中等部1年生
自分やクラスメイトを知る
デザイン思考(入門)
中等部2年生
デザイン思考(基礎)
中等部3年生
デザイン思考(実践)

高等部世界に目を向けながら自ら課題を発見・設定して広く深く探究

高等部1年生
自分の好き/得意を掘り下げながらBOTTOを探る(各種ワークショップ/海外ゲストによる海外オンライン研修/「極めて見た」活動/「極めてみた」記事作成)
高等部2年生
自分の好き/得意で人に貢献しながらBOTTOを探る(GIVEワークショップ/GIVEの方法探究/「GIVEの祭典」準備・参加/振り返り)

参考:田園調布学園

探究発表会REPORT

1年間の探究学習を総括!活気に満ちた『探究発表会』

アートを身近に感じられる展示会を企画しよう (中2)

アートを身近に感じられる展示会を企画しよう (中2)

じゃがりこを用いたコミュニケーションアイデアプロジェクト(中3)

じゃがりこを用いたコミュニケーションアイデアプロジェクト(中3)

中等部2年生以上の生徒たちが1年間の探究学習の取り組みを発表する『探究発表会』。多くの刺激を受け、自分も何かしてみたいという意欲にあふれるせいでしょうか。校内は活気に満ちていました。
中等部2年生が取り組んだ『アートを身近に感じられる展示会を企画しよう』は、田園調布のみぞえ画廊東京店とのコラボ企画。アートに触れる際にギャラリーに足を運ぶ人が少ないことから設定された課題を解決するために、各クラス内でチームに分かれて探究。代表5チームが発表を行いました。中学生らしい自由さにあふれながらも、ギャラリーという場所の魅力を理解したうえでの一歩踏み込んだ提案には、聴講者も感心しながら聞き入ります。
中等部3年生は3学期に取り組んだ「じゃがりこを用いたコミュニケーションアイデアプロジェクト」を各クラスで10チーム、計50チームが発表。「じゃがみくじ~じゃがりこ全部まぜてみた~」「減量じゃがりこ」「動物とシェアハピ!」「しゃべりこ」などアイデアに富んだ提案を、動画やスライドを使って4分間プレゼンテーション。内容の楽しさに思わず歓声があがる場面もありました。

ポスター発表「ルワンダの皆が描いた絵 美術館」(高2)

ポスター発表「外国人観光客を助けたい」(高2)

プレゼン「大切な人に感謝を伝える」(高2)

プレゼン「CODA~聞こえない親を持つ聞こえない子ども~」(高2)

ダンスワークショップ(高2生)

インターナショナルスクール(ASIJ)との交流企画・クッキー販売(高2生)

高等部1・2年生は、体育館でのポスター発表や大スクリーン・教室・講堂でのプレゼンテーションなど、さまざまな形式で発表に臨みます。プレゼンテーション後の質疑応答も積極的で、普段とは違う一面を見せる生徒たちに、発表を見守る保護者や先生方も嬉しそうでした。
ラウンジでは、「小児がんの子供たちへの寄付活動を目的としたレモネード販売」や「インターナショナルスクール(ASIJ)との交流企画・クッキー販売」など、生徒が購入代金の寄付で参加のできる発表も。クッキーは経済的な格差により教育へのアクセスが閉ざされた子どもたち支援を目的とした販売で、その隣では交流先のASIJから提供された英語本も無料販売されていました。
幅広いテーマだけでなく発表方法の多様さにも驚かされた『探究発表会』。テーマを掘り下げ、誰かに共有してもらうことまで視野に入れた田園調布学園の探究学習は、生徒の将来に直結する可能性を持つ大切なものだと理解できました。

Teacher Interview

田園調布学園 探究係主任 長岡敬佑先生

自己肯定感が課題解決のアイデアを生み
フィードバックがやる気を支える

中3までに複数の探究プロジェクトを実践
高校では没頭できることを発見するBOTTOプロジェクトへ

― とても多彩な探究活動が行われていて、それぞれが主体的に深掘りしていることが印象的な活気にあふれた『探究発表会』でした。探究係主任の長岡先生から2023年度『探究発表会』の特徴・総括をお願いします。

長岡先生 昨年の第1回目の『探究発表会』は、高等部1年生のBOTTOプロジェクトの発表は統一で、自分の探究活動を動画に収めたものを使ってプレゼンするという形でした。今年は、その生徒たちが高等部2年生になり、昨年取り組んだことを周りの人や地域社会、もっと広く世界へと貢献できる活動に昇華することをテーマにしたので発表の形態が分かれ、活気にあふれた要因になりました。昨年はなかったポスター発表形式、スイーツなどの販売、ダンスのワークショップ、料理教室、募金活動などかなりの広がりがあった中で、大きな混乱がなく終われたことに安堵しています。

― 発表の形態が分かれるテーマ設定にされ、自由度が増した理由は?

長岡先生もともと中学生は、探究の授業で「デザイン思考」の基礎を学び、課題解決スキルを身につけていきますので、それを使って解決に導くためのテーマ設定だけを教員が与えます。生徒はその中でグループごとに自分たちなりの問いを自由に立てます。高校生は好きや得意を自分で掘り下げていくことが一貫したテーマで、さらに自由です。
その意味では昨年と今年で高校生も中学生も自由度は一切変わっていません。ただ、高等部2年生の場合、何を貢献(GIVE)できるかを考える必要がありますので形態がバラバラになり、昨年のように動画にして投票してもらうといったシンプルなことが出来なくなったというのが実状です。

― 中学生で鍛えてきた課題設定や広く深く探究する力を、高校生になって発揮するわけですね。

長岡先生 例えば、中等部3年生になると、年間を通して3つのプロジェクトに取り組みます。1学期は突っ張り棒の国内シェアトップの平安伸銅工業さんの商品を駆使して、学校空間の中に非日常的な空間や便利な空間をどうやって作り出すかを考えます。2学期は会社運営の基本を座学形式で教わった後に、自分たちならどういう課題解決を目指した企業を作るかを考える『株式会社プロジェクト』。3学期は「じゃがりこを用いた新しいコミュニケーションアイデアプロジェクト」(カルビー株式会社協賛)と、学期ごとにそういったテーマ設定のプロジェクトが与えられます。中等部3年の段階で、7〜8個目のプロジェクトを終えますから、デザイン思考を学び始めた最初の頃はアイデアを出す迷いもあったでしょうが、取り組むたびに抵抗もなくなり、アイデアを出しやすい精神状態になって高校での「BOTTO」プロジェクト<*1>に取り組んでいくのだと思います。 <*1>「BOTTO」プロジェクト 自分の強みや興味関心から没頭できることを発見する高等部での探究学習

生徒のやる気を維持する
探究学習ならではのフィードバック

― だからこそ、2学期に取り組んだ『株式会社プロジェクト』を3学期も継続して探究したいという生徒が出てきたのでしょうか。

長岡先生『株式会社プロジェクト』は、「本気コース」と「マイルドコース」を選べました。「本気コース」を選んだ生徒たちは、本校でデザイン思考導入の時から支援していただいているCURIO SCHOOLという会社にプレゼンテーションして、起業するに耐えうるプラン内容かを何回も審査してもらいます。そんな「本気コース」に何組がエントリーするのかと思っていたところ10組以上のエントリーがあり、探究よりも勉強に集中したいのではないかと勝手に思っていた私には意外でした。
結果的に「これなら起業していい」というチームはゼロだったのですが、まだやりたければ延長戦という形で続けて良いと伝えたところ、2組が継続しました。そのうちの1組が「SCHOOL BAZAAR」の2人です。取り組めばどんどん楽しくなって止まらなくなったんでしょうね。外部の方の適切なフィードバックが然るべきタイミングであったことも、生徒たちがやる気を維持してやり続けてくれたことに繋がっていると思います。

― きっちり評価されることが、生徒の皆さんを本気にさせ、勉強とは違うモードで頑張れるのかもしれませんね。

長岡先生今、私は中等部1年生の探究の授業を全クラス受け持っていて、2、3学期はデザイン思考を使ったプロジェクト型の課題解決型学習をしています。このプロジェクトでは私が中間と最後にフィードバックをするのですが、生徒はとても喜んでくれます。私も普段の定期試験時のフィードバックとは少し変わってきます。
フィードバックは決してダメ出しではなく、どういう過程でこうなったのか、これは試してみたのか、こうしてみたらいいかもといったフィードバックで、時には褒めることもあります。それが普段の教科授業の先生方が言われることとは少し違うので、やる気を出すのかもしれません。外部の方のフィードバックも、内部の教員のフィードバックも、生徒にとってはやる気になるものなんだと私自身も感じているところです。

― 田園調布学園では探究のキーワードを「自己肯定感」とされていますが、そこかもしれないですね。

長岡先生 それですね。中学受験全体の構造的な問題かもしれませんが、自己肯定感がかなり低い状態で入学してくる生徒が多いので、「自分がダメだと思っているところは本当にダメなのか」からまず洗い出していきます。中等部1年の1学期はそういう思想の教育的なことしかやりません。初めにそれをやって中等部2年・3年で課題解決型学習に移っていくと、アイデアが出やすくなっていきます。
生徒たちを見ていると、普段は周りの目を見て歩調を合わせていますが、場を与えれば話したいし、知ってもらいたいという欲求を潜在的に持っているんだなと強く感じます。何かやりたいと思っている生徒が多いということだと思っています。

― それができる場が探究の授業ということですね。

長岡先生 そうですね。今までは生徒の学校の中での生きる道は、勉強と部活動の2つではないかと思っていました。この2つのどちらかで他者に認められるアイデンティティを確立する必要があって、それ以外の逃げ道はないという印象だったんです。その選択肢が探究によって増えていて、生徒にとってはやりやすく楽しめる道になっているように思います。

― 『高校生ビジネスプラン・グランプリ』のグランプリを受賞された高等部1年生のように、学外での積極的な活動も増えていきそうですか。

長岡先生 そういうことをしていいんだという雰囲気づくりは、ある程度できてきました。『トビタテ!留学JAPAN』のようなプログラムに参加したいという生徒も近年増えていますし、外部の探究コンテストに毎回エントリーする生徒が一定数います。そういったことは2〜3年前は考えられないことだったので、外部に発信するといった具体的な活動をする生徒はとても増えましたし、実行に移していく生徒はもっと増えて欲しいと思います。

― 探究学習に関して、学校としての今後の目標も見えてきましたか。

長岡先生 来年度からは企業とコラボレーションする部分では今ご支援いただいているような会社に協力を仰ぎますが、基本はすべて教員が行います。例えば課題設定やフィードバックなど、多岐にわたる生徒の表現方法に教員がどうアプローチして外とつなげていくかは、すべて学校に委ねられます。
ですから、個人的には来年が大きな勝負だと思っています。それができると、日常的に生徒たちの良さやプロセスの評価を生徒・教員間でやりとりができ、生徒の個性を教員側が汲み取れる環境になります。

― 先生方が担う発想になったのは、何か理由があるのですか。

長岡先生 中1の全クラスの探究授業を担当していて思うのですが、普段から生徒と身近に接している教員からの発信の方が生徒に浸透しやすく、連携も取りやすいんです。そういう意味でも、学校として自立するという意味でも、外部の方に講師として探究を進めてもらう形から卒業することは最初から考えていました。
3年目あたりから完全に教員主導でやっていく予定でいましたが、来年がその3年目。教員の労力は高まりますが、自由度は高く、取り組みやすさは大きくなります。ありがたいことに本校では探究のことを理解しようと努めてくださる先生が多く、校内が良い雰囲気になっているからこそ挑戦していきたいと思います。

Students Interview

探究テーマSCHOOL BAZAAR

課題の多い学校指定品の
中古品売買を解決したい!
SCHOOL BAZAAR

探究テーマ「SCHOOL BAZAAR」…中等部3年2学期の『株式会社プロジェクト』で「起業」を目指して「本気コース」で取り組んだ。制服などの学校指定品の中古売買ができないかと考え、学校の生徒や保護者のみ使用可能な学校に特化した安全なアプリ開発を3学期以降も継続中。

Hさん(中等部3年)

これまでにない経験で行動力が身についた

中3の2学期の『株式会社プロジェクト』で、自分たちにはない「起業」という発想がとても面白かったので「本気コース」を選び、「学校指定品の中古品売買のためのアプリ」を考えました。2人で深いところまで話し合い、しっかり考えて、提案できたので、3学期も引き続き”延長戦”としてアプリ完成を目指して取り組んでいます。
中3全員が3学期に取り組んだ「じゃがりこを用いた新しいコミュニケーションアイデア探究プロジェクト」は6人のチームで、じゃがりこの蓋に卒業まであと何日かを記入できる「カウントダウンじゃがりこ」を考えました。こちらのプロジェクトは人数が多いだけにいろいろな意見が出て、『株式会社プロジェクト』とは違う楽しさがありました。
『株式会社プロジェクト』は、自分から考え、計画を立て、進行し、先生に相談しながら問題を解決していくというこれまでなかった経験ができ、行動力が身についたという実感があります。4月から行くニュージーランド・ターム留学でも、身につけた行動力を生かして頑張りたいと思います。

Nさん(中等部3年)

アイデアを絞り出す過程が楽しい!

『株式会社プロジェクト』で最初に困りごとを整理した時に、中古品の売買に課題点が多いと気づき、Hさんと探究しようと決めました。中古品売買で思いついたのが、私たちに身近な学校指定品の中古品です。苦労したのは学校の規則上、プロトタイプ(試作モデル)で金銭を使っての販売が難しかったこと。また、学校の「母の会」がなでしこ祭のバザーで制服を販売されていて被ってしまうためZoom会議をしてご説明し、協力していただけることも印象的でした。
『株式会社プロジェクト』には外部企業の審査が3回あり、起業が可能かどうかを判断されます。利益を出せるのか、自分たちならではのものになっているのかを考えるのはとても難しく、結果は不合格でしたが、審査結果のアドバイスを見て「まだ自分たちで考えられる余地はある」と思え3学期もプロジェクトを継続しています。2人でアイデアを絞り出す過程はとても楽しく、『探究発表会』では特別に発表の機会をいただくことができました。
探究学習を通して身についたのはチャレンジ精神。自分がやりたいと思えばやればいいし、自分の中に芯を持って最後までやりきろうと思えばやりきれます。私もニュージーランド・ターム留学に行くので、自分から発信することや行動することを留学先でも意識したいと思います。

探究テーママイノリティに向けたスイーツ料理教室

ビィーガン、グルテンフリー、ハラール…皆で美味しいスイーツを作って食べるためには?
マイノリティに向けたスイーツ料理教室

探究テーマ「マイノリティに向けたスイーツ料理教室」…ビィーガン、グルテンフリー、ハラールなどに対応した食材や料理の大変さを理解し、誰もが共に美味しく食べられるスイーツ作りを目指した料理教室。ワークショップ形式はめずらしく、中学生も高校生も参加してその目的を共有した。

Yさん(高等部2年)

強く感じた“みんなで同じ食べ物を楽しむ”難しさ

私たち4人は共通して「食べることが好き。美味しいものが好き。スイーツが好き」で、それをみんなで楽しみたいと思ったのですが、障壁がある人がいると気づきました。そこでビィーガンやハラールに対応するスイーツを作ることにしましたが、最終的には特定の誰かのためというよりも「障壁を越えてみんなで同じ美味しいものを楽しめたらいいね」を目的にしました。ただ、ビィーガンの方は動物性の食品が使えないので、今まで意識したことがなかった“みんなで同じ食べ物を楽しむ”難しさを強く感じることになりました。
『探究発表会』当日は、みんなで作って食べて「美味しかった」という体験ができたことによって、マイノリティの方たちの食に興味を持ち、隔たりなくみんなで一緒に美味しいものを食べる楽しさを感じてもらえたのではないかと思います。
探究は普段の授業ではあまりない「自分で問いを立てることからスタートする」のが面白さ。自分で立てた問いだから解決したいと思え、その過程はとても手応えがあります。今後、大人になって社会に出たときに、探究はきっと役立つだろうと思います。

Oさん(高等部2年)

主体的に興味を持ってもらえる参加型の発表形式

最初は「美味しいスイーツを作って楽しみたい」といった軽い気持ちでしたが、「好きなもので何を貢献(GIVE)できるか」を考え、食材に制限がある人もない人も全員が楽しめるスイーツを作ることを目標に掲げました。
ビィーガンの方は動物性の食品を食べないだけでなく、甘さをつけるときも製造過程の問題から砂糖ではなく、今回の料理教室で使ったアガべシロップ(アガベという植物から採取する甘味料)を使われます。そういった私たちが全く知らない食材を探す難しさや一般的な作り方より時間がかかる工程面での大変さから、マイノリティの方の食生活が浸透していないことに気づかされました。
料理教室では、中等部1年生から高等部2年生まで32人を募集したところ、調理実習を経験したことがない学年の人がいたりして、思っていた以上に大変でした。ただ、参加型の発表にしたことで、主体的に興味を持って参加してもらえたことは良かったと思っています。
探究を通して、今後進路を考えるときも、「自分はなぜこの大学に興味があるのか?」「その理由では弱いのではないか?」と思考できます。将来を見据えて自分がどのようなアクションを起こすかが大事だということを、高等部2年生で経験できたのは大きいです。

Hさん(高等部2年)

誰もが安心安全に食べられる料理を作る難しさを理解

料理教室で作ったキャロットケーキは私が提案したのですが、卵、牛乳、バターを使わずにどうやって美味しいケーキを作るかに悩みました。また、ベーキングパウダーに小麦粉が入っているといった今まで全く気づかなかったこともたくさん知れました。それだけに、誰もが安心安全に食べられる料理を作る難しさを理解できたと思います。自宅でも学校でも試作を繰り返して当日を迎えましたが、人数が増え、初めての人もいる中ではていねいな説明が必要で、事前の準備も大事なことがわかりました。
高1から探究をしてきましたが、高2の探究で自分の好きをどのように貢献(GIVE)するかを考えるときに、私はとても悩みました。自分が何を提供できるのか、GIVEできるのか、その先にどう繋げていくかは難しくて、そこを調べていったところから今回の料理教室につながっています。これまでの認識違いを改め、たくさんのことを学ぶことができたので、この経験を生かして先入観にとらわれずにいろんな人と向き合えたらと思います。

Yさん(高等部2年)

試行錯誤して新たな発見をしていくことが大きな学び

『探究発表会』で料理教室を行うにあたり、一番難しさを感じたのは食材集めです。今回、春巻の皮を使ったのですが、試作途中で小麦が入っていることに気づき、一般的なスーパーには売っていない米粉の春巻の皮を苦労して探すことになりました。そこで一般的でない食材を手に入れることの難しさを実感しました。
当日は、自分たちでの試作と、初めての人たちが集まって作る料理は全く違いました。素材にこだわっても、弱火・中火など細かいところまで決めておかなければ目指すものができず、誰が参加しても不安がないようにしておくべきだとわかりました。そういった自分たちが行動して気づけることもあると思うので、大変ではありましたが参加型にしてよかったと思います。
探究では、自分たちで試行錯誤して新たな発見をしていくことが大きな学びでした。私たちがまだ出会っていないだけでおそらく身近にビィーガンなどマイノリティの方がいるはずです。探究の学びからそういう方に出会ったときも別の視点で物事を捉えられるようになったと思います。

探究テーマ夢中になれる授業とは

集中できる授業はどんな授業?
夢中になれる授業とは

探究テーマ「夢中になれる授業とは」…生徒が夢中になれる授業、集中できる授業とはどんな授業なのかを、東京都市大学で脳波を測定したうえで考察。生徒が思う楽しい授業と、脳波による集中できている授業の違いなど測定値を使った検証が説得力をもたせた。

Dさん(高等部1年)

東京都市大の協力のもと
集中力の増減を脳波で測定

高1の前期に外部の講師によるワークショップがあり、高1の後期から自分の好きや得意を極めていきます。ただ、自分の好きなことを書き出してみようとなった時に、私自身には特に好きなものがありませんでした。一つ思い浮かんだものが「勉強」。もともと勉強やテストが好きで、将来は教育関係の仕事に就きたいという思いもあったので、それらに結び付けて「勉強」「教育」に関連したことを探究してみようと思いました。
最初は私の中に、「こういう授業が素晴らしい」と思い描いていた授業があったのですが、探究していく中で「まだ自分は学生の立場でしか授業を見られていない」と気づき、できるだけ学生の立場以外から物事を見られるように注意しながら進めたいと考え、東京都市大学に協力していただいて夢中になれる授業を知るために脳波を測りました。
脳波を測るという発想にたどり着いたのは、東京都市大学でいろいろな体験ができるプログラムがあると学校から案内があり、そこで脳波について学んだことがきっかけです。脳波で集中力を測れると知り、「授業と結びつけて集中力の増減を測ったら面白いかもしれない」と思いました。大学でのプログラムは一つの分野を突き詰めて考えることができる場であることが感じられて、大学に行くことを楽しみにさせてくれました。
探究の結果としては、自分の予測とは異なりました。学生の立場では面白い話題が入っている楽しい授業のほうが夢中になれると思っていたのですが、脳波で集中力の増減を調べると手を動かしているときは集中しているとわかり、授業や教育を考えるうえでは学生の勝手な視点や憶測は捨てなければいけないと思いました。今後はそういった新たな視点、広い視野を自分のものにするために、ボランティア活動などいろんなことに自分からチャレンジしていく必要があると思っています。