- 春
- 調理教室で春みその仕込み
- 5月
- 「商品化の基礎講座」サントリーによる講義
「みそづくり」の商品実習 - 6月
- 商品の試作
- 7月
- ポスター作り・販売方法の戦略会
- 9月
- 「商品展示」準備
「商品化のポスター展示」投票
手作りみそ『みそらひばり』校内予約販売開始 - 10月
- 『みそらひばり』販売準備
阪急百貨店の担当者来校、生徒によるプレゼン
『みそらひばり』商品引き換え
「みそゼミ」学びのまとめ
“掛け算”のエネルギーが探究の源に
情報科・家庭科教諭/「みそゼミ」担当
Q.数ある「探究ゼミ」の中に「みそゼミ」が加わった経緯を教えてください。
和田先生
食に関する勉強のために、私が個人的に大阪ガス主催の講習会に参加したことがきっかけでした。そこに大正15年創業の井戸糀店(*1)の代表者がお越しになられていて、昔ながらの製法で手作りされている生糀の話をお聞きし、その素晴らしさに心を動かされました。
同時に、後継者がいないという現実的な問題があることも知りました。このままでは日本の食文化は失われていく…。そんな危機感を抱き、自分に何ができるのかを考えた時に教育が貢献できるかもしれないと思いました。守らなければならない食文化のことを生徒に伝え、若い世代にその伝統を受け継ぐバトンを渡すべきだと感じたのです。
Q.「みそゼミ」では、生徒が自らみそを仕込むことから始めるのでしょうか。
和田先生
その通りです。使用するのは井戸糀店の生糀で、そこに大豆と塩を混ぜ合わせて春に仕込みます。添加物を一切加えず、生糀を使って手作りしたみそは、市販のものと比べると旨みも香りのよさも格段に違います。まずその“本物”を生徒に知ってほしいと思いました。
また、近年の健康ブームで発酵食品が注目されていますが、みそは日本が誇る発酵食の代表です。“手前みそ”という言葉があるように、かつては多くの家庭で当たり前のようにみそを手作りしていました。そうした食の文化を知り、日本の食料自給率の問題などにも目を向けながら多くのことを「みそゼミ」で学びます。
(*1)井戸糀店 兵庫県たつの市にある大正15年から続く老舗糀店。手作りにこだわる昔ながらの製法を100年以上守り続けて糀を製造。生糀を使った自家製みそや甘酒なども販売している。
<参考/兵庫県たつの市観光サイト>
https://tatsuno-tourism.jp/groumet_contents/%E4%BA%95%E6%88%B8%E7%B3%80%E5%BA%97/
Q.「みそゼミ」で学ぶ生徒たちについて教えてください。
和田先生 「みそゼミ」は高1・高2生を対象にした希望参加型のゼミで、昨年度からスタートしました。定員は調理教室のキャパシティに合わせて40名ほどに設定していますが、今年度は希望者がとても多かったため、探究学習の最終学年となる高2生を優先し、32名の生徒たちが講座に参加しています。
Q.今年度で2回目の実施ですが、昨年から進化した点はありますか。
和田先生
昨年は「みそを作る → 商品化する → 校内で販売する」という流れでゼミを進めました。手作りみそのネーミングは文化祭の時に校内で募集し、雲雀丘の校名に因んだ『みそらひばり』に決まりました。
一連の取り組みは、生徒、教員、保護者の間で大きな反響があり、本校を訪れてくださる外部の方々からも「えっ? 生徒がみそを手作りしているのですか!?」「面白い探究学習ですね!」といった声をたくさんいただきました。
その成功体験から今年は「みそゼミ」をより進化させたいと思い、新たなチャレンジとして手作りみそを使った商品開発を行い、阪急百貨店のバイヤーにプレゼンをする企画を立てました。
Q.「みそゼミ」の学びを通じて、先生が実感される生徒たちの成長とは?
和田先生
スタート時の5月にサントリーの方による講義を受け、そこで商品化の手順、ネーミングの考え方、市場調査、さらには損益分岐点といったビジネスに関することもしっかり勉強します。
その中で、生徒自身に「自分から学ぶ・考える」という意識が芽生え、班に分かれてオリジナル商品を開発していく過程に入ると個々の「発想力」も鍛えられていきます。「みそゼミ」を通してまさに“知の循環”が促されるといえます。
Q.探究型の学びは他校でも行われていますが、雲雀丘学園ならではの強みとは?
和田先生
私が担当する「みそゼミ」だけでなく、他のゼミも「生徒の知的好奇心 × 教員の熱意」という掛け算の相乗効果があり、そこがチャレンジ精神を尊ぶ雲雀丘学園ならではの強みだと感じます。
本校の「探究ゼミ」は学校が課題を設定していませんから、「これは生徒のためになる!」と感じた教員が自らの専門性を活かして企画し、生徒のアイデアも取り入れてゼミが行われます。だからこそ型にはまらない自由な学びを実践できるのです。
Q.来年以降、「みそゼミ」はどのように進化していきますか。
和田先生
目指すのは“つなぐ進化”です。「みそゼミ」を始めるきっかけになったのは井戸糀店との出会いで、そこから講義を担当してくださったサントリーとつながり、今年度は阪急百貨店とつながることができました。そして、生徒たちもゼミの活動を通じて、将来につながる学びを体得しています。
そのような形で年々新たな“つながり”を築いていけるように、私も生徒と一緒に楽しみながら頑張ります。
手作りみそ『みそらひばり』を使って商品開発にチャレンジした生徒たち。3~4人が1つのグループになり、8つの班に分かれて阪急百貨店にプレゼンテーションを行いました。何度も試作を重ねて出来上がったオリジナル商品は、来校したバイヤーが「その発想があったとは!」と思わず感心してしまう意欲作ばかりでした。
「おやき」は知る人ぞ知る長野県の郷土料理。具材に豚肉を選び、ネギと生姜の薬味でアクセントをつけ、手作りみそのコクをしっかり活かして仕上げたところが美味しさのポイント。十分に食べ応えがあるので、夕食のおかずやお弁当の一品になり、おやつや夜食としても小腹が満たされます。メインターゲットは主婦。育ち盛り、食べ盛りの子どもがいるご家庭にぜひ!
「ラスク=砂糖メインの味」という従来の発想を変え、手作りみその味わいを活かした一品にアレンジ。みそ、バター、ハチミツ、砂糖をブレンドするペースト作りは、みその濃さが主張しすぎないように何度も試作を重ねたとのこと。「働く人々に、ちょっとした幸せを感じてもらう」という商品コンセプトの通り、ターゲットとなる30代に癒しをもたらします。
幅広い年齢層に食べてもらえる商品を目指し、また、贈り物にもなるようにパッケージは高級感を意識。親しみをもてる“田作(でんさく)さん”のネーミングは、田作りを音読みにして考案。みそ、カタクチイワシ、砂糖、しょうゆ、ごま油でベースを作り、さらにピーナッツ、くるみ、七味を加えた味のバリエーションも展開。アツアツご飯に! お酒のおつまみにも!
みその旨みをシンプルに活かした万能ダレと丸いお餅の組み合わせが絶妙。お酒のおつまみとして楽しめる一品を生み出すために、万能ダレは手作りみそにケチャップやマヨネーズを加えて一工夫。米麹のツブツブをそのまま残した食感としっとりしたお餅のモチモチ感が奏でるハーモニーに思わず舌鼓。生徒からは「回転ずしのレーンに置ける一皿にもなる」という斬新な提案も!
商品コンセプトは「食卓を彩る一品」。デパ地下で手軽に買って帰り、電子レンジでチンしてすぐに食べられる商品を目指し、同時に栄養も摂れる“一石二鳥”の付加価値を追求しました。彩りのよい夏野菜と鶏肉の組み合わせが一目でわかるようにネーミングの考案はアイデアを凝らし、『いろとり鶏』に決定。空腹時に目にすれば食欲がそそられること間違いなし!
口に入れるとほっこりした気分になり、懐かしさも感じられるみその味。その特性を活かして開発された『万能! 梅みそ』は、「自分時間をゆっくり楽しみたい」という大人がターゲット。クラッカーにのせればワインのおつまみになり、炊き立てご飯のお供にも。手作りみその風味をより引き立たせるために、隠し味にはハチミツを。ヘルシーさも推しです!
冷凍食品として長期保存できることを考えて開発した商品。手作りみそにハチミツを加え、ご飯と一緒に混ぜ合わせ、一口サイズのおにぎり型にして完成。白米だけでなく、玄米や雑穀米のバリエーションを展開すれば「健康志向のニーズにも応えられる」と生徒たちはプレゼンで熱弁。レンジで温めればすぐに食べられ、熱いお湯で溶けば“みそ雑炊”として楽しめます!
コンセプトは「応用がきく、健康にいいみそ」。ネーミングにある“みそ坊”は、みそ玉の形状に因んだもの。商品構成は甘口と辛口(しょっぱい味)の2種類で、お湯を注げばであっという間にみそ汁の出来上がり。主婦、共働きの人、親の帰りを待つ中高生、一人暮らしの若者や高齢者まで幅広い層がターゲット。小腹を満たすならカップ麺より健康的な『みそ坊』を!
ディビジョンマネージャー 莵原さん
私たち阪急百貨店の社員は、「みそゼミ」で学ぶ皆さんと同じく、いかにして生活者の心に届く商品を提供するかを考えて仕事をしています。かつての百貨店は、日本や世界各国から商品をかき集め、「さあ、好きなものを買ってください」という姿勢でお客さまに接していました。経済が潤っていた頃ならまだしも、今の時代、それでは誰も財布を開いてくれません。作り手の思いやこだわりといった“モノの背景”を私たちがきちんと伝え、理解していただいてこそ、お客さまは買う価値を見出してくれるのです。
今日、皆さんのプレゼンテーションを拝見し、頑張って商品開発に取り組まれた努力の姿勢を目の当たりにして大変よい刺激を受けることができました。私たちは作り手の方々から商品をお預かりして仕事をする立場にいます。その原点を忘れず、どういう人をターゲットに想定してモノを売るのかを考え、お客さまのニーズを満たせる商品を提供できれば、必ず購入していただけると信じています。将来、もし皆さんが販売に興味をもたれたなら、生活者を幸せにする仕事をぜひ一緒に手掛けましょう!
- 販売の仕組みも学ぶことができました Tさん/高2
- 「みそゼミ」を受講しようと思ったのは、純粋に「みそはどうやって作られるのか?」を知りたかったからです。講義では商品化のプロセスも教わり、このゼミは将来につながると実感しました。商品開発では利益を生み出せるように自分たちで原材料をもとに販売価格を設定しましたが、プレゼン後に阪急百貨店の方の話を聞いて流通や宣伝にも費用が掛かることを初めて知りました。そういう実践的な学びを得られるところも雲雀丘の「探究ゼミ」のよさだと思います。
- 授業とは違うゼミならではの達成感がある Tさん/高2
- みそが大好きな私は、「みそゼミ」の名前を聞いただけで好奇心がくすぐられました。ゼミでは商品化の知識を深められ、各過程で様々な立場の人が関わって、たくさんの苦労があることも知りました。雲雀丘にはたくさんの「探究ゼミ」がありますが、どれも普段の授業と違って、自分がやりたいことを見つけて一から学べる楽しさがあります。今回「みそゼミ」に参加したことで、仲間と話し合い、意見を出し合いながら目標に向かう大切さをあらためて実感しました。
- みんなと協力して進めるのが楽しい! Yさん/高2
- 高1で起業に関するゼミを受け、その時に得られた達成感をまた味わいたいと思い「みそゼミ」に参加しました。プレゼンに向けた商品開発ではみんなでアイデアを出し合い、家族に試作のアドバイスをもらったりして、すべてを楽しもうと心掛けました。普段の授業でも仲間と話し合うことはありますが、ゼミは自分たちで物事を決めるウエイトが大きく、積極的に意見を言わないと相手に自分の考えが伝わりません。その分、熱意も高まるので、そこが“探究”のやり甲斐だと感じました。