文化部もチャレンジがとまらない!探究心旺盛な報徳学園「理科研究部」 報徳学園中学校・高等学校
クラブ活動は「運動部が活発」とイメージされがちな報徳学園中学校・高等学校。しかし実のところ、11ある文化部も負けず劣らず、とてもアクティブに活動しています。その一つが、生物や化学で毎年研究発表を重ねる理科研究部。週に2回の活動ながら、好きなことや興味をもった分野を究めようと、部員たちは放課後になると我先にと実験室に集合。主に生物班と化学班に分かれて“やりたいこと”にチャレンジする理科研究部の様子を紹介します。

理科研究部プロフィール

部員数 17名※中高生を合わせた実働人数
活動日 週2回(月曜日、木曜日)
時間 中学生 ⇒ 放課後~18:00/高校生 ⇒ 放課後~19:00

\理科研究部の特徴!/

現在は「生物班」「化学班」に分かれて、部員の“やりたいこと”にチャレンジ!

先生だけでなく部員も予算を把握し、取り組む実験・研究を計画!

兼部する部員が多いが、週1回の参加が基本!

理科研究部

謎多きチンアナゴの生態を研究

チンアナゴを飼育するには、海水魚用の水槽環境を整備することがマスト。淡水魚よりも難しく、塩分濃度の調整はもちろん、水槽用クーラーで水温を一定に保ち、外部フィルターで水質管理を徹底しないと魚に有害なアンモニアが発生しやすくなる。協力企業<*>のサポートやアドバイスを得て、生物班は昨年からチンアナゴの飼育をスタート。

海に生息するチンアナゴの主食は海水に浮遊する動物プランクトンだが、飼育下においては冷凍のブラインシュリンプをエサにするのが一般的。スポイトで与えると、砂に潜んでいたチンアナゴが「ごちそうだ!」と言わんばかりにニョキニョキと現れる。その愛らしい姿に癒される部員も。

* <協力会社>
株式会社イノカ
株式会社ひごペットフレンドリー

生態に関してまだまだ謎の多いチンアナゴ。その中で生物班が興味関心を抱いたのが、各個体の“引っ越し”。水槽の砂を15cm・8cm・2cmで高低差をつけ、どの層に身を潜めるかを調べたところ、砂の深さが低すぎる層には身を潜めないとわかった。

『イノベート・アクアリウム EGG』でプレゼンテーション!

チンアナゴの引っ越しに関する研究の考察は、『イノベート・アクアリウム EGG <ジュニア部門>』で発表。日々の観察でリーダー役を務めた上級生の高校生とともに、中学生も一緒にプレゼンテーションに参加。そこで得られた達成感は、今後新しい生物の研究に取り組む上において大きな自信に。

理科研究部

固体触媒を用いたエステル化に挑戦

安息香酸は、過去に実験で用いたサリチル酸と化学式の構造が似ている――。その“気づき”から新たな実験をスタートさせた化学班。サリチル酸+メタノールでエステル化反応が起こりサリチル酸メチルを生成した経験をもとに、安息香酸でも同様の反応が起きると仮定して調べることに。
エステル化は本来、濃硫酸を触媒として用いる。しかし、理科研究部では濃硫酸い代わる固体触媒を発見。今回はその固体触媒を用いて、安息香酸とメタノールのエステル化に取り組んだ。

薬品の取り扱いは、慎重に慎重を重ねる。薬包紙を丁寧に折って正確に安息香酸1.0mg、メタノール2.0mlの量を計り、固体触媒を加えて加熱。火を扱う時は決して目を離さず、僅かな変化も見落とさないように集中。

生成したかどうか、まずは匂いで確認。理科実験用のゴーグルを付け、直接鼻を近づけず、教科書通りに手で仰ぎながら匂いを嗅ぐのが原則。実験は、成功する時もあれば、失敗することも。たとえ自分たちが立てた仮説通りにいかなくても、“失敗は成功の母”の格言を胸に、化学班のチャレンジは今日も続く。

サイエンスキャッスル2023 関西大会で受賞 !

「世の中のためになるものを!」との思いでチャレンジしたのは、サリチル酸オクチルを合成して日焼け止めを作ること。市販の解熱鎮痛剤に含まれる成分を用いても合成できる可能性があることを知り、いざ実験。研究成果は『サイエンスキャッスル2023 関西大会』で発表し、見事優秀ポスター賞を受賞。

Students Interview

理科研究部員インタビュー

“理科好き”が集まる
放課後の居場所、ここにあり!

Yくん(高2/高校部長)
Sくん(中3/中学部長)
Dくん(高3)
Uくん(中2)

週に2回だからこそ、活動日が来るのが待ち遠しい

数あるクラブの中で理科研究部に入ろうと思った理由を教えてください。

Yくん
もともと数学と理科が好きでしたが、顧問の木下先生に誘われたことが後押しになって入部を決めました。中1からテニス部に入っていたので中2から兼部し、今は理科研究部だけで活動しています。

Sくん
僕は小学校の頃から理科が好きでした。報徳学園に理科研究部があることを知って「楽しそう!」と思い、入学してすぐに入りました。

Uくん
小学6年の時、学校説明会のイベントで活動を見学したことが、理科研究部に興味をもつきっかけになりました。入学前から「クラブに入るなら、絶対に理科研究部」と決めていました。

Dくん
僕は高校入学生で、中3で学校見学に来た時から理科室にあった水槽に着目していました。その時は武庫川で捕った淡水魚が飼われていましたが、理科研究部に入ったら新しい生き物を飼って、いろいろ調べたいと思っていました。

生物班

理科研究部の雰囲気を教えてください。

Yくん
かつて所属していたテニス部に比べると部員数は少ないですが、小人数だからこそ中学生と高校生が一体感をもって活動できると感じています。アットホームな雰囲気で居心地がよく、間違いなく放課後のみんなの居場所になっています(笑)。

Uくん
同級生だけなく先輩とも親しく接することができ、部員全員と仲を深められるところに良さを感じます。週に2回の活動なので、だからこそ月曜日と木曜日の活動日が早く来ないかと毎週楽しみにしています。

Sくん
僕も週に2回という少ない活動が気に入っています。もし毎日だったら、忙しすぎて大変に感じるかもしれません。放課後は気楽に好きなことがしたいので、僕にぴったり合っています。

Dくん
僕は、みんなが集まる理科研究部の空気が「うまい!」と感じます。先輩後輩の上下関係を気にせず、理科に興味をもった者ばかりが集まって和気藹々と時間を過ごせるのが良いところです。

先輩の研究を引き継ぎつつ、今後は新たな挑戦も!

生物班は昨年から海水魚の飼育にチャレンジしています。

Dくん
やはり淡水魚より難しいと感じます。水槽の管理が特に大変ですが、それでもチャレンジしようと思ったのは、趣味で培った海水魚飼育のノウハウを生物班で共有したい気持ちが強かったからです。チンアナゴというこれまで関わったことがなかった生き物の研究に携わりたい気持ちもありました。

Uくん
D先輩の熱意とアドバイスがなかったら、海水魚の研究はもしかすると途中であきらめていたかもしれません。僕を含め、生物班全員で水槽管理のイロハを教わりながら日々チンアナゴの生態を観察することができました。

Dくん
もちろん、僕一人の力だけではできないことはたくさんありました。後輩の熱心さにも支えられましたし、“理科を研究する”クラブとしてしっかり活動できるように、海水用の水槽設備や飼育の面で協力してくださったイノカさんや、ひごペットフレンドリーさんにもいろいろ助けていただきました。

Uくん
昨年、先輩たちと一緒に「チンアナゴの生息と砂の高さの関係性」というテーマで『イノベート・アクアリウム EGG <ジュニア部門>』の発表に参加しました。これが大きな自信になり、先輩が引退されてもチンアナゴを大切に飼育しながら、新たにタツノオトシゴなどの海洋生物の研究にもチャレンジしたいと思っています。

化学班が手掛ける実験の面白さ、大変さを教えてください。

Yくん
先輩がサリチル酸の研究をしている様子を面白そうだなと思いながら見ていました。その時、僕は一人で「竹とんぼの飛び方」を物理の観点から研究していましたが、文化祭で発表して一段落ついたので、化学班の研究を受け継ぎ、さらに発展的な実験をしたいと思いました。

Sくん
化学の実験で特別苦労を感じたことはありませんが、高校生の先輩が行う実験をサポートしていていると、僕はまだ中学生なので知識が追い付かないと感じることがたびたびあります。でも、その都度、先輩や先生に教わるうちに僕自身も興味がわいてきて、自分からもいろいろ調べるようになりました。

Yくん
「よくわからない液体や白い粉で何かをする」というのが化学の実験のイメージだと思います。しかし、目には見えない化学変化を実験前にイメージし、予測して仮説を立てることが面白く、思った通りの結果が得られなくても、「次はここを改良してみよう!」と再トライできるところが楽しいです。

化学班

今後、どのようなことにチャレンジしたいですか。

Yくん
将来大学で何を学ぶかは具体的に決めていませんが、データを扱うことに興味があるので、今はコンピュータ系を学ぶ進路に興味をもっています。その時に理科研究部で得たことを何か一つでも活かせればいいなと思っています。

Sくん
中学部長の立場になりましたので、まずは理科研究部の化学班の一員としてY先輩が取り組んでいることを引き継ぎ、さらに自分からも興味をもったことにどんどんチャレンジしたいと思っています。

Uくん
僕は、勉強も理科研究部の活動も、文武両道で頑張りたいです。先輩と一緒に活動することで、まだ知らない実験や研究のノウハウをたくさん吸収したいです。

Dくん
僕は今、サンゴに興味をもっています。その分野の研究ができる学部に進学したいと思っていて、それができるのであれば正直どこの大学でもいいかなと。報徳で理科研究部に入り、環境移送で社会貢献をしている企業の存在なども知ることができたので、その経験をプラスにして今後も生物の研究に携わっていきたいです。

Teacher's Comment

理科研究部顧問コメント

自分の考えを表現できる
一人前の科学者を育てたい

理科教諭/理科研究部顧問
木下 和生 先生

理科研究部の雰囲気を一言でいえば“アットホーム”。上下関係の厳しさもなく、部員一人ひとりが自由に研究に取り組めるので、みんなのびのびと活動しています。一方で、いざ「これをやる!」と決めれば一気に探究心のスイッチが入るので、そこはさすが報徳生だといつも感心させられます。
自主性を重んじ、安全面を考慮しながら日々彼らを見守っています。顧問として大切にしているのは、自分の考えを表現できる一人前の科学者を育てることです。そのため、理科研究部では一人、一回は学会に参加して、自分の研究を発表してもらうようにしています。また、卒業後も自分に合った研究、進路を見つけてもらうために、大学の学園祭などに参加し、大学の研究を体験する機会を設けています。また、全員が楽しく研究をできるようにグループで協働して研究を行っています。高校生が中学生に実験方法を教えることも多く、その中で社会性を学ぶことができるのも、この部活の魅力ではないかと思います。これからも、世の中を豊かにする発見を、日本にそして世界に発信していけるように部員とともに頑張っていきたいです。