01
ベトナム探究研修
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対象
高1・高2生
(希望者) - 定員 約45名
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期間
3月
6日間滞在
概要
ベトナムのインターナショナルスクールに通う現地の高校生と共にPBL(問題解決型学習)に取り組む。
02
UCB夏期アメリカセミナー
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対象
高2・高3生
(希望者) - 定員 約30名
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期間
7月下旬~8月上旬
8日間滞在
※定員次第で高1生の参加も可
概要
カリフォルニア大学バークレー校の学生寮に滞在。現地の大学生と交流しながらビジネス的思考法や表現法を学び、協働に必要なコミュニケーション力を養う。
03
NZ夏期語学研修
*六年一貫コースのみ
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対象
高1生
(希望者) - 定員 約40名
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期間
7月下旬~8月上旬
約2週間滞在
概要
ホームステイをしながら現地の学校に通学。SDGsテーマについての事前学習をふまえ、現地でのプレゼンテーションを行う。
04
NEWバリ島グリーン研修
*2025年3月実施予定
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対象
高1・高2生
(希望者) - 定員 約30名
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期間
3月下旬~4月上旬
約1週間
概要
“観光地ゆえ”に生じるバリ島の環境問題に目を向け、自分事として捉えながら現地の人たちと共に解決策を考える。植林体験なども実施予定。
“形ありき”の探究学習を省みることから始まった
― 「探究型海外研修」を実施するに至った経緯を教えてください。
吉田先生
「探究型海外研修」は、昨年度新たに設置された本校の国際・探究室が企画を担当し、学びの内容を吟味しています。次代を担う生徒のためになる教育について議論する中で、探究学習のあり方を今一度見直す時期に来ていると感じました。いわゆる「グループワークをする」「意見を出し合う」「プレゼンテーションをする」という形ありきの学びになりつつあることへの批判と反省を込め、将来生徒たちが社会に出た時に本当に必要な力を身につけられるように「探究型海外研修」を実施するに至りました。
― 「生徒たちが社会に出た時に必要な力」とは、どのようなものでしょう?
吉田先生
すぐに解決策が見つからない社会問題が山積する時代にすでに突入しています。それらの諸問題は探究テーマになり得るわけですが、生徒たちが社会に出て必要なのは、単に形式的に意見を出し合って上手にプレゼンをするといったスキルではないはずです。話し合い、自ら考え、議論や対話を通して「どうすればいいのか」と悩み、異なる立場の人の意見にも耳を傾ける。そうした姿勢が社会で協働する時に求められます。解を導く課程で“モヤモヤ”することもありますが、それを厭わず、自分なりの考えを導き出せる力を生徒たちに培ってほしいと思っています。
― 探究学習と海外研修を組み合わせることで、どのような学びの効果が期待できますか。
吉田先生
校内で実施する探究学習や課題解決型の授業でも学びを深めることはできますが、そこに海外研修が組み合わされれば、肌で異文化を感じることができ、異なる背景をもった人の価値観にも直に触れられます。そうした体験がグローバルな視点や国際的視野を広げるきっかけになりますから、その機会を一つでも多く提供できればと思い、計4つの「探究型海外研修」のプログラムを設けました。
思うように英語を話せず、打ちのめされるのも経験
― 今年から始まった「ベトナム探究研修」と「UCB夏期アメリカセミナー」の特徴を教えてください。
吉田先生
「ベトナム探究研修」は、3学期を終えた春休みに行われ、現地の私立校(インターナショナルスクール)に通う高校生たちと一緒にPBL<*1>を実践します。今回は44名の生徒が参加し、「良い教育とは何か」をテーマに教育格差についてディスカッションをしました。
一方、夏休みに実施する「UCB夏期アメリカセミナー」は、米国の名門大学のカリフォルニア大学バークレー校を訪ね、大学の寮に8日間滞在します。ここでは、近年ビジネスで重視されている「デザインシンキング」「ストーリーテリング」「ビジュアルシンキング」といった思考法や表現法を現地の学生と一緒に学びます。
<*1>PBL(Project Based Learning/問題解決型学習)
知識のインプットという受動のスタイルではなく、ディスカッションなどを通じて能動的に考えることを実践する学習方法。テーマに基づき生徒自ら問題や課題を見つけ出し、他の人の意見も聞きながら答えを導いていく。
― 吉田先生は「ベトナム探究研修」に同行されたと聞きました。生徒たちの様子はいかがでしたか。
吉田先生
ベトナムのインターナショナルスクールでPBLを行った時は、本校の生徒たちはまったくと言っていいほど話せませんでした。発表すること、意見を述べることに対する価値観の違いが日本とベトナムで大きくあり、現地の生徒たちは誰よりも先に手を挙げ、自分の意見を滔々と誇らしげに話し続けるのです。1日目は終始その姿に圧倒された様子でした。
― そんな生徒たちに、先生はどのようなアドバイスをされたのでしょうか。
吉田先生
ホテルに戻り、夜のリフレクション(振り返り)の場で、自分たちが受けてきた教育や考え方がそもそも違うから、そこは気持ちを切り替えて「明日どうするかを考えよう」と前向きに励ましました。生徒たちはリセットできたようで、すぐさま翌日のディスカッションに向けた対策をグループごとで話し始めました。翌朝バスに乗った生徒たちの表情を見ると、昨日と打って変わり、「今日にすべてをかける!」という意気込みがギラギラした目から伝わってきました。本当に頼もしく、そうしてスイッチを入れる経験をできただけでも生徒たちは一つ成長できたと感じました。
― 「UCB夏期アメリカセミナー」に参加した生徒たちは、どのように成長しましたか。
吉田先生
帰国後のアンケートを見ると、語学の面にとどまらず、ビジネスで用いられる思考法や表現法を学べたことが良かったという声がありました。アメリカは“自分を表現する”ことが重んじられる国で、どのように個性を出すか、どのように自分の考えを相手に使えるかについて「ストーリーテリング」という視点で学ぶことができたようです。
― 「探究型海外研修」は、単に語学を学ぶものではないということですね。
吉田先生
その通りです。特にアメリカとニュージーランドの研修に参加した生徒は、欧米スタイルの“自由”について考えさせられることが多々あったようです。授業中に歩き回ったり、飲食ができたりする“自由”を目の当たりにして、「授業に集中できない」と感じた生徒もいましたし、「気分転換になる」「自分のペースでできる」と捉えた生徒もいました。日本で授業を受けているだけでは「自由によって何がもたらされるのか」ということを考えるまでに至らないと思います。実際に海を渡り、異国・異文化の中にある“日本との違い”を感じることで新たに気づくことは必ずあり、そこで“モヤモヤ”することも経験します。「探究型海外研修」ではそのモヤモヤ感を含め、人間的な成長につながる経験を積める場です。
一度チャレンジすれば、「次」を求めるようになる
― 来春から始まる「バリ島グリーン研修」では、どのような学びを得られるのでしょう?
吉田先生
「バリ島グリーン研修」は、他の3つの海外研修とは少し趣を変えて企画しています。大きなテーマとしてはSDGsを考える研修で、バリ島が観光地であるがゆえに抱えているゴミ問題などに生徒自ら現地で対峙し、地元の人たちと一緒に解決策を考えます。他にも持続可能な農業のあり方を学ぶために、現地の棚田やカカオ農園を訪ねたり、植林体験なども実施したりすることを計画中です。
― 「探究型海外研修」を実施し、どのような手応えを感じられていますか。
吉田先生
例えば、「NZ夏期語学研修」には今年39名が参加しましたが、そのうちの13名が来年の「バリ島グリーン研修」や「ベトナム探究研修」の説明会に参加し、少なからず関心を抱き始めているようです。まずは海外研修を一つ経験したことで生徒たちの視野が広がり、「次」を求める積極性が育まれたのだと実感しています。そのように“つながっていく”ことの芽が備わり始めていることに確かな手応えを感じています。
― 手応えを感じると同時に、今後の課題や進化させるべき点も見えているのでしょうか。
吉田先生
「探究型海外研修」には生徒の自主性・主体性を育む目的もあるので、自ら挙手する希望制をとっています。本校の生徒全員が参加するものではないため、行かない生徒も、海を渡った者の体験を共有できるようにするのが今後の課題だと感じています。
今年の11月に「探究型海外研修」に参加した生徒たちによる報告会を実施しましたが、こうした取り組みは今後も継続・充実させていくつもりです。また、CLIL<*2>を実施する総合的な探究の時間など全員対象の取り組みも今以上にクオリティを高め、生徒たちをどんどん“モヤモヤ”させながら、常に自分の考えを訂正していけるように導きたいです。
<*2> CLIL(Content and Language Integrated Learning/内容言語統合型学習)
学んだ言語を使い、様々な教科・科目を組み合わせて社会問題や時事問題を深掘りしていく統合型学習。英語の効果的な学習法の一つとして近年注目されている。
\関西大倉がCLILで扱ったテーマの一例/
バナナ農家の貧困問題をテーマに、フェアトレードについて英語で学習。日本のスーパーマーケットでバナナが売られる際、一房の価格は200円前後が一般的。しかし、その価格の背景には、生活できるぎりぎりの賃金報酬しか得られない東南アジアの農家や労働者がいる。生徒たちは「安いバナナはダメだ!」という思いになるが、一方で「じゃあ、今の3倍・4倍の値段になっても買いますか?」と問われると、「うーん……」と黙ることも。これが“モヤモヤ”するということで、世の中にはこうした問題が多々あることを認識しながら社会問題に向き合う力を身につけていく。
―― 最後にメッセージをお願いします。教員の立場で感じる関西大倉の良さを教えてください。
吉田先生
今回お話しした「探究型海外研修」でいえば、もし生徒が「海外に興味はあるものの、実際に海を渡るのは不安」と感じているなら、勇気を出してチャレンジできるように、教員は親身になって寄り添い背中を押します。そして、海外研修に参加しない生徒も、CLILなどの授業を通じて国際的な問題を学び、まさに今世界と関わりをもって生活していることを認識できるように導きます。強制も放任もせず、常に生徒と教員が一緒になって様々なテーマの学びに取り組めるのが関西大倉。ぜひ本校で、よりよい社会をつくっていく力と素養を共に身につけていきましょう。
体験「探究型海外研修」
「NZ夏期語学研修」は、人生初の海外体験でした。行く前は、とてもドキドキして、ホストファミリーとうまくコミュニケーションを取れるか心配でしたが、お世話になるご夫婦が優しい笑顔で迎え入れてくださったので、感じていた不安は瞬時に消え去りました。
現地の高校でネイティブの生徒と一緒に授業を受けた時に一番驚いたのは、学校の制度の違いでした。ニュージーランドの高校では、大学のように自分で受けたい科目を選び、自ら時間割を組みます。そのため、生徒たちはどの授業も楽しそうに前向きな気持ちで受けているように感じました。そんな自由な面に魅力を感じた一方で、自由であるがために授業中であっても生徒が好き勝手に言動することもあり驚きました。それは自由の良さとは思えず、日本の学校の授業のほうが勉強に集中できると思いました。違いを知り、何が自分に合っているかを知れたことは大きな収穫でした。
ニュージーランドでの2週間の滞在では、英語面の特にリスニング力が向上しました。それに加えて、日本と他国の文化の違いを自分自身で体感することができたので、「NZ夏期語学研修」に参加してよかったとあらためて実感しています。