晃華学園中学校高等学校

生徒主体で進めるSDGs課外活動が大充実! 一歩先行く、国際理解教育

発見!私学力
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晃華学園中学校高等学校 生徒主体で進めるSDGs課外活動が大充実!一歩先行く、国際理解教育
カトリック校として、またユネスコスクールとして国際理解教育に力を入れている晃華学園中学校高等学校。語学習得はもちろん、異文化・他者理解を通じて、国際社会で必要とされる能力を身につけることを目指しています。
同校では、10年以上前からユニセフや難民・途上国支援を行う外部団体を招いた講演会を継続的に行うほか、2017年からは授業で模擬国連を取り入れるなど、国際的な視野から世界や社会を見るさまざまな教育活動を行ってきました。それは、生徒たちの国際理解への高い意識の醸成や、「こんなことを学びたい」「人のために役に立ちたい」という意欲へと結びつき、福島の持続可能な環境や未来に貢献することを目的とする学校協働プロジェクト「GOALs~学校協働SDGsチャレンジ~」への参加や、「SDGsポップアップストア」の立ち上げに繋がっています。GOALs、SDGsポップアップストアの活動を推進する、高2の生徒3名と国際理解教育担当の佐藤駿介先生に、活動内容やそこから得た学びや成長について取材しました。

企業や他校と協働推進!GOALs&SDGsポップアップストアの活動

GOALsとは

GOALs販売ブース
福島を訪れるツアーで中間貯蔵施設を訪れた
GOALs販売ブース
福島を訪れるツアーで中間貯蔵施設を訪れた

東日本大震災の記憶が薄れていることに問題意識を持つ生徒たちが2022年から始めた活動。テーマは、「東日本大震災を教科書の出来事にしない」。現在は約10人の生徒が活動に参加しており、他校3校とも連携。月に1~2回、都内で集まり、活動内容や福島の支援方法について話し合っている。「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジ・アワード2023」で環境大臣賞を受賞。2024年11月には、他校の中高生と一緒に福島を訪れるツアーを実施。

SDGsポップアップストアとは

SDGsポップアップストアの看板
キッズフェスタ ワークショップ
井の頭公園 出展
TBS赤坂サカス「地球を元気にするWeek」出店
SDGsポップアップストアの看板
キッズフェスタ ワークショップ
井の頭公園 出展
TBS赤坂サカス「地球を元気にするWeek」出店

晃華学園で行っているSDGsプロジェクトの知名度を上げ、より広く展開していくために生徒たちが立ち上げた。外部企業・団体・大学などと協働し、いろいろな場所に出展することで、より多くの人々に知ってもらうことを目指している。全国ユース環境活動発表大会(関東地方大会)優秀賞、三鷹市環境活動奨励表彰を受賞。2024年度の出展・活動例として、「三鷹の森フェスティバル」(10月)、TBS赤坂サカス「地球を元気にするWeek」など。

Students Interview

“自分ごと化”し、主体性と熱量を持って行動
それができれば必ず相手に伝わる

Y.Mさん(高校2年)S.Mさん(高校2年)Y.Cさん(高校2年)
Y.Mさん(高校2年)左
SDGsポップアップストア運営メンバー。中3時にGOALsに参加。部活は居合道同好会で会長を務める。
S.Mさん(高校2年)中央
SDGsポップアップストア運営メンバー。中3と高2(現在)時にGOALsに参加。部活はソフトテニス部。生徒会活動では書記を務める。
Y.Cさん(高校2年)右
SDGsポップアップストア運営メンバー。部活は体操部。福祉委員会の委員長を務める。

― GOALsの活動へ参加したきっかけを教えてください。

S.MさんGOALsには、中3と現在(高2)で参加しました。中3時は友人に誘われたことがきっかけでした。また、私の家では、東日本大震災以降、宮城産や福島産の野菜を購入していなかったのですが、本当にそうすべきなのか、答え合わせをしたいとも思いました。高2で再度GOALsに参加したのは、中3時の活動経験や高1時のSDGsポップアップストアの活動で得た発見や学びを活かせるのでは、と思ったからです。

Y.Mさん私もS.Mさんと同じで、中3の時に友人に誘われたことがきっかけでGOALsに参加しました。当時、福島については、東日本大震災の被災地であること、果物の名産地であることしか知識を持っていなかったのですが、GOALsの活動に参加することで福島の現状についてもっと深く知り、自分ができることを行いたいと思ったんです。

― GOALsの活動ではどんなことを感じ、学びましたか。

Y.Mさん一番印象に残っているのは、フィールドワークの一環で「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪れたことです。テレビや教科書で見聞きする内容とは違った、リアルな内容を目の当たりにすることができました。福島をより一層深く理解することに繋がり、自分ごとのように捉えられるようになりました。

S.Mさん私も福島へのフィールドワークがとても印象深く残っています。福島のコットン生産者である株式会社「起点」が栽培する綿花の畑(※)や、中間貯蔵施設などへ行きました。福島には、放射能の影響でもう使えなくなってしまった土地があるのですが、もとはそこに人々の生活があったのだと思うと言葉では言い表せない、苦しい気持ちにもなりました。※GOALsでは、のちに(株)起点と「福島オーガニックコットンタオル」を協働制作し、ポップアップストアで販売。2023年度環境省主催の「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジ・アワード2023」で環境大臣賞(高校生部門最優秀賞)を受賞。

― そうした体験を、GOALsの活動にどう生かしたのですか。

Y.Mさんこれまでの活動ではニュースの記事から得た知識を伝えることが多かったのですが、フィールドワークを体験した後は、実感を持ちながら自分の言葉で伝えたり、語ったりできるようになりました。

S.Mさん私は、中3時と今年の二度、福島を訪れています。そのため、2年前と今年の福島の街の変化、違いを自分の言葉で伝えるように意識しています。また福島だけでなく、日本の他地域の被災地についても同じように考えてほしいと伝えるようにしています。

― GOALsの活動は、その後SDGsの啓発や活動を推進する取り組み「SDGsポップアップストア」に繋がっていきました。Y.Cさんは、SDGsポップアップストアでどのような活動を行っていますか。

Y.Cさん私はもともと社会福祉に強い興味があり、この活動に参加しています。これまでは、校内で文房具回収を行い、ひとり親家庭に無償で提供する活動や、フェアトレードボールのポップアップストアを実施してきました。フェアトレードというと、紅茶やコーヒーに目が行きがちですが、実は競技用のボールもあるのを知り、私自身も運動がとても好きなこともあって、生活にフェアトレードボールを取り入れて社会貢献や啓発活動につなげて行けたら、と考えました。また、フェアトレードを扱う会社とのやり取りがきっかけで、アウトドアメーカーのパタゴニアとの取り組みも行いました。パタゴニア二子玉川店の一角で出展を行い、たくさんの方に取り組みを知っていただくことができました。

パタゴニア二子玉川店 出展の様子パタゴニア二子玉川店 出展の様子
TBS赤坂サカス「地球を元気にするWeek」 出展の様子TBS赤坂サカス「地球を元気にするWeek」 出展の様子

― 皆さんは外部企業や団体、他校や他大学とも協働していますが、協働する上で大切なことは何でしょうか。

Y.Mさんきちんと“自分ごと化”し、主体性を持って行動することです。それができないと協働する相手にもお客様にもうまく伝わらないと思います。それは熱量とも言えます。一人ひとり、全員が熱量を持って活動に参加することが大事だと思います。

Y.Cさん外部企業や団体=「自分より年齢が上」の社会人の方々との協働は、常に緊張や不安が伴います。活動の中では、「相手にしてもらえるのか」、「実際に自分が思っているような形にならなかったらどうしよう」とも思います。ですが、臆せず、チャレンジを重ねていくことが大事だと思い、積極的に取り組んでいます。

S.Mさんますますこの活動を拡大、発展させていくことが必要だと思います。例えば、他校の友達にこの活動のことを話すと、「すごく意識が高いね」と言われることもあります。そういう声を聞くとまだまだ社会課題への意識は当たり前ではないのだと感じます。だから、もっと活動を広げていき、より多くの人に社会課題について知ってもらいたいと考えています。

― 今後の目標、将来の夢を教えてください。

Y.Cさん私の従妹がアフリカで小学校を建てて、そこで子どもたちに勉強を教えるという仕事をしていることもあり、私は小学生のときから福祉に興味があります。将来、大学では社会福祉系の学部で学び、在学中に自分のやりたいことを見つけたいです。今興味があるのは、北欧の子育てに関する制度。日本の少子化問題にどういう対策ができるのかを学びたいです。

Y.Mさん私はこの活動で、外部のさまざまな人と関わってきました。そこで感じているのは、人と人とを繋げるのはとても素敵な活動だということ。たくさん学ぶことがあり、相手から感謝されることが多いからです。将来は人と人とを繋ぎ、社会貢献や社会課題解決を行う仕事に就きたいです。

S.Mさんいまはこうした課外活動を経験したことで、社会科学に興味が出てきました。社会科学を学べる大学に進み、将来は教員として関わることも視野に入れています。現在は、晃華学園に機会やチャンスを与えてもらっている立場ですが、今度は自分が次世代にそれを与えられる立場になりたいです。

Teacher interview
社会科教諭 国際理解教育担当 佐藤駿介先生
社会科教諭 国際理解教育担当佐藤駿介先生

プロデューサー的立場で活動をファシリテート
重視するのは生徒一人ひとりの「課題設定力」

― 佐藤先生は、彼女たちの活動を見てどのようにお感じですか。

佐藤先生SDGsポップアップストアでは、販売活動と啓発活動の両方を行い、シナジー効果を生み出せていると感じています。活動の中では、生徒それぞれの成長、覚醒していく様子を感じますね。全力で取り組んでいるし、各チーム(プロジェクト)が自走していると思います。ただ、うまくいかなかったケースもたくさんあって、成功している数の3倍くらい失敗しています。「ここがダメだった」「これはうまくいった」と反省点や後悔もたくさんあり、彼女たちの満足度としてはまだまだではないでしょうか。

― 活動の中で先生が重んじていることは?

佐藤先生これまで社会では「課題解決力」が求められてきましたが、いまは「課題設定力」が求められるようになってきています。その意味において、現在の高3の代までは、広く社会に認知されている課題をどう解決していくかが大事なテーマでした。しかし、現高2以下の学年については、まだ課題として浮かび上がっていないことを課題として設定する力が重要だと捉え、教育活動に落とし込んでいます。これからは、まだ広く認知されていないアジェンダに対して「これが問題だ」と言える子が強いと思いますね。

― 「課題設定力」を養うためにどういったことが必要だとお考えですか。

佐藤先生まずは、晃華学園のこうした課外活動の文化を今後も継続的に行っていくことです。カトリック校だからこそ成せるわざ、という側面もあります。要するに、自分たちだけではなく、他校にも声をかけ一緒にやっていこうという発想そのものが、とてもカトリック的であると私自身は思っています。活動の進め方において、言わば私はプロデューサー、彼女たちはディレクター的な立場。彼女たちが「どう“自分ごと”としてテーマに落とし込んでいけるか」が重要なので、「この子にはどういうアジェンダ設定だったら響くのか」を私が考え、「こういう風にしたらいいんじゃないか」と提示してあげたいと考えています。

― 今後の展望について教えてください。

佐藤先生これはあくまで生徒たちの企画なので、私がこの先どうしていくかを考えることではないかなと思います。これまでも「先生が勝手に決めないでください」と言われたことが何回もあります。ですから私はあくまでプロデューサーの立場で見守ること。まずは、生徒たちが何をどうしていきたいか、それをきちんと理解する。そしてその実現のために、晃華学園らしく、カトリック的な考え方は通しつつ、アドバイスやファシリテートすることを役目としていきたいと思います。