
「科学探究」では4ゼミが開講。今回は「水圏環境探究ゼミ」で活動する中学2年生の2人にインタビューし、ゼミを指導する花本先生(理科教諭)の解説付きで、科学探究での活動内容を紹介します。

Students
Interview
スーパーJコース[中学2年生]
Uさん / Nさん
城北ワンド群が学びのフィールド!
水圏環境探究ゼミの活動
二人が水圏環境探究ゼミに入った理由を教えてください。
Nさん
1年生の3学期に探究アウトプットの説明会がありスーパーJコースの先輩から、科学探究での活動について話を聞く機会がありました。4ゼミそれぞれの内容を聞いたのですが、私は昔から生き物に関心があったこともあり、このゼミを選びました。常翔学園の近くには城北ワンドという淀川の水が陸地に入り込んで池のようになっている場所があり、そこで釣りをするということにも心惹かれました。
Uさん
私も昔から昆虫や動物などの生き物に興味がありました。ですが家の近くにはワンドのような自然豊かな場所がなく、生き物を捕ったり釣りをしたりするような経験もありません。だからこそゼミの活動にとても魅力を感じました。
Nさん
入り口は釣りへの興味だったのですが、先輩方が取り組む探究内容について話を聞くうち、生態系や外来種・在来種の問題について深く学べるのだと知り、さらに興味が湧きました。今はこうした課題について楽しみながら学べるのが、水圏環境探究ゼミの魅力だと感じています。
Uさん
水圏環境探究ゼミでは、1学期に城北ワンドでの生き物採集・観察を行います。釣りによる採集だけでなく水辺にも目を向けて、どんな生き物が生息しているのかを調べるのは楽しい経験でした。岸辺の草に蛍光色の卵が産み付けられているのを発見し、それがジャンボタニシの卵だとわかったときは本当にびっくりしました!
Nさん
私は釣りに夢中だったのですが、最初はミミズが嫌いすぎて、釣針に餌をつけるのも大騒ぎでした!
Uさん
私も同じです。でも餌をつけたり魚を触るのが平気になったりするうちに、ブルーギルやブラックバスなどの外来種しか釣れないのが不思議になってきました。
Nさん
外来種の問題は以前から知っていましたが、自分で体験したからこそ調べてみたいと思うようになったのだと思います。
Uさん
2学期に入ってからは、城北ワンドでの採集体験をもとに、自分たちが気になることを調べ学習する活動がメインになりました。そこから外来種と在来種の共生について自分たちなりに考えるようになりました。
TEACHER’S POINT

水圏環境探究ゼミでは、まず2年生の1学期に城北ワンドでの生物採集・観察を行い、2学期にはその体験をもとに「共生」をテーマに、生徒一人ひとりに考えを深めてもらうことに取り組みます。
スタート時点では、採集する技術も魚の種類を見分ける知識もない生徒たちですが、ワンドでの活動を通じ、自然保護では避けて通れない外来種の問題に行き当たります。そもそも外来種の多くは、人間が良かれと思って持ち込んだもの。「単なる駆除で良いのだろうか。本当の共生ってなんだろう?」と問うと、生徒たちは調べ学習をしながら柔軟な発想で考えを深めてくれます。
そこからさらに自分なりの解決方法とその実現に向けた実験や調査を考え、3学期の終わりに開催する「探究アウトプットタイム成果報告会」にて発表してもらうまでが2年生の取り組みです。さらに3年生では自分たちが考えた実験・調査を実践してもらい、その成果を発表してもらうという流れとなっています。
魚には、餌や棲む場所の好みがある?
2学期からは「在来種と外来種の魚の共生」をテーマに考えを深めたそうですが、二人はどんな着眼点を持ったのでしょう?
Uさん
私は環境による棲み分けを考えました。在来種と外来種、それぞれが生息しやすい環境を整えれば、自然と棲み分けができるのではないかと思ったんです。
Nさん
私は餌に着目しました。魚はプランクトンを食べますが、魚によってプランクトンの好き嫌いがあるのではないかと考えたんです。このアイデアが正しければ、プランクトンを通じて在来種が生息しやすい環境を整えることができると思ったら、花本先生が「プランクトンは、場所や季節…つまりは水深や気温、水質などによって、分布している種類が違う」と教えてくださいました。
Uさん
「場所とプランクトンの種類には、つながりあるのではないかな。二人の研究を合体させてみたら面白いことになりそうだよ」とアドバイスをいただいたので、一緒に考えてみることにしました。
Nさん
私たちの発想は、似ている部分もありますが違うところもあります。そこでまず共通する部分と違う部分を徹底的に洗い出し、実験方法を考えていきました。
Uさん
5回ぐらい相談して、花本先生と何度も議論を繰り返し…。iPadの共有ノートにはその痕跡が残っています。最後にようやくまとまった調査方法をポスターにまとめ、3月の「探究アウトプットタイム成果報告会」で発表。それが「プランクトンの種類と在来魚、外来魚への影響」です。
調査方法を説明すると、
1_ワンドで採集する地点を複数決め、魚とプランクトンを採集する
2_各地点にいる魚が在来種か外来種かを調べる。またプランクトンの種類も調べる
3_採集したプランクトンが発生する環境の条件と魚の関係を調べる
4_在来種が多く、そのプランクトンがよく発生する環境の条件をまとめる
という流れです。

Nさん
大まかにいうと、ワンドで在来種が多い地点を探して調査していくという方法です。採集する地点について、3年生から探していく予定ですが、プランクトンの分布と条件(水温、水深、水草などの様子)、在来種、外来種の分布を調べ、何か関連性がないかを探します。在来種と外来種が住み分けられる条件が見つかれば、ワンド内の生態系が改善されていくと考えています。
TEACHER’S POINT

大人は駆除を発想しがちですが、生徒たちは「餌による棲み分けで、在来種と外来種が仲良く共生する環境づくり」という発想に辿り着きました。「魚にはプランクトンの好き嫌いがある」という前提条件が正しいかは別として、このように新しい視点を生み出してもらうことが、この科学探究の目標でもあります。生徒たちのアイデアはデータが揃わないと結果が見えてきませんが、例え仮説が正しくなかったとしても、新しい気づきにつながることでしょう。
ひとつのことを、考え続けた自信
科学探究、水圏環境ゼミでの活動を通じて、自分が成長したと思うことはありますか。
Nさん
まず、ここまで内容の深い調査をするということや、そもそも答えを知らないことに取り組むことについては不安があります。ですが「自分がこれだけ考え抜いて調査方法を決めることができた」ということには強い自信を感じています。やれるところまで頑張っていきたいです。
Uさん
ここまで何かをひたすら続けた経験がなく、「こんなにも考えることって難しいんだ!」と科学探究を通じて気付かされました。これからも深く考えることを続けて、物事に対する自分の意見を持てるようになりたいと考えています。
また私は昔から生物の構造に興味があり、将来は生物の構造を人の生活に役立てるような研究をしたいと思っています。高校ではもっと本格的な研究に取り組めると聞いているので、科学探究での取り組みをつなげていきたいです。
Nさん
私の将来の目標は弁護士です。生物とは全く関係ありませんが、プランクトンや在来種・外来種について考え続けたことは、どこかでつながると思っています。少なくとも視野は広がるはずです。もともと気になることがあると調べずにはいられないタイプなので、これからも学校の中でさまざまな知識を吸収したいなと考えています。
TEACHER’S POINT

スーパーJコースの生徒は、高校では科学探究の発展系の「ガリレオプラン探究」に取り組みます。隣接する大阪工業大学をはじめ同一法人大学の研究室と連携しながら、より高度な課題探究に取り組むことができるのが特色。昆虫にも興味があるUさんには「摂南大学の昆虫博士を紹介するよ」という話もしています。
中学の間は「どうしてだろう?」と思い続けるだけでも十分な経験ですが、科学探究で見出した課題や仮説が、高校で大学レベルの研究に発展していくことを期待しています。またその経験が、大学進学後の研究活動につながることも我々教員の願いです。
今回は2つの視点を併せたという面白さから彼女たちに登場してもらいましたが、「魚の動きを音でコントロールしたい」など、他にもユニークな探究に取り組む生徒はたくさんいます。科学探究を始めて2年目ですが、今後は科学コンテストに生徒を挑戦させたいと考えています。他校との研究交流などを通じて、生徒の視野や意欲がより高まることを期待しています。