報徳学園中学校・高等学校】多様な選択肢から自分に合った夢の実現へ
多様な進路実現を支える報徳学園中学校・高等学校では、生徒が中学時から将来を考えられるよう、豊富な選択肢を用意しています。夢への第一歩となる進路選択は、経験の少ない中高生にとって悩みと不安の種。今回は、進路指導における学校の方針や、新たに始まった「海外進学ガイダンス」についてお話をうかがい、手厚いフォロー体制を探りました。

Teacher Interview

国際教育室長 進路指導部タスクマネージャー
八田哲郎先生

自分に合ったやりたいことができる進路選択を

― 報徳学園の進路指導方針を教えてください。

八田先生
最も重視しているのは、生徒にさまざまな選択肢を提示し、自分に合った進路を選んでもらうことです。そのため、国公立大学や私立大学を問わず、さまざまな大学を見学してもらう大学見学ツアーを提供しています。関東地方や九州・中国地方にも行き、実際に大学の雰囲気を感じてもらいます。大学名だけにとらわれず、「どんなことを学びたいか」という学問レベルまで掘り下げて、興味のある分野を深める選択をしてほしいと考えています。
ただ、実際には手がかりを見つけるのは難しいものです。そこで卒業して社会人として活躍するOBを招き、経験を話してもらう機会を設けています。「そんな世界があるのか」「そんな職業もあるのか」という発見は、生徒たちに響くようです。
また、『合格体験記』も生徒のリアルな声を反映していますから説得力があります。面白いのは『合格体験記』だけではなく、『不合格体験記』もあること。「こんなことをしていたら不合格になった」とOBが教えてくれると、生徒も素直に自分の状況を振り返ることができるようです。

― OBの話は具体的で魅力的ですね。

八田先生
やはり教員が言っても、生徒は「耳が痛いな」「うるさいな」といった反応ですが、卒業生の話となると、「この方法を試してみよう」「これはやめておこう」と素直に受け止めるようです。たとえば、「スマホのせいで勉強との切り替えがうまくできず、集中できなかったのが失敗の原因だった」といった声を聞くと、自分自身を振り返る生徒もいます。多くの卒業生が、「何か大切なものを一つ手放さないと、本当に欲しい結果は得られない」と語ってくれ、生徒も納得するようです。

― 全国に及ぶ大学ツアーの影響も大きいですか。

八田先生
生徒たちは、大学そのものの知名度や偏差値よりも、実際に訪れた大学の雰囲気や、そこで学ぶ学生の様子、大学がある街の空気感などを重視しているようです。実際に大学生に相談したり、アドバイスをもらったりする機会も設けているため、学生との交流を通じて影響を受ける生徒も少なくありません。
特に遠方の大学に進学する場合は、不安を解消し、安心して学び始めるためのきっかけづくりがとても重要です。そうした機会を通して、進学先への理解を深め、自分に合った環境を見極められるようサポートしています。

京都大学ツアー

学校からの情報提供やきっかけを
実際に進路に生かせる場ができた

― 昨年からは「海外進学ガイダンス」もスタートしましたが、報徳学園にたくさんある国際教育の取り組みも、進路に影響しているのでしょうか。

八田先生
それは大いにあると思います。例えば、2週間の『フィリピン語学研修』では、マンツーマンで英語を学びながら、大きな経験を積みます。学校ではおとなしい生徒が、現地語を覚えて現地の人と笑顔で会話を弾ませる姿を見て、学校とは違う一面に驚きました。海外だからこそ積極的になれる生徒もいますし、「もっといろんな国に行きたい」「この体験を生かして進路を考えてみたい」といった意欲にもつながります。また、日本とは異なる文化に触れ、日本の良さの再発見にもなるでしょう。英語力を高めることが目的ですが、進路にもつながる様々な要素も得られることは、国際教育の魅力だと感じます。
他にもオーストラリアのパースとアメリカのアルバカーキにある2校の提携校と交換留学を行っていて相互で行き来しています。現地では報徳の生徒がホームステイをさせてもらい、日本では本校の家庭が受け入れます。その交流は生徒たちにとって大きなメリットになっているようです。昨年もオーストラリアからの留学生が20人ほど報徳に来て、楽しく過ごしました。その中で海外が身近になり、興味を持てば海外大学への進学も考えられるというのが本校の現状です。ここ数年は、留学に興味を持ち、国内の外国語大学への進学を検討する生徒も増えています。

フィリピン語学研修

― そういった場合に具体的なアドバイスを受けられるのが「海外進学ガイダンス」ですね。

八田先生
そうです。今までは「いろんな国へ行って良かった、発見があった」で終わっていたものが、将来や進路選択につなげられるようになりました。学校でできるのは情報提供やきっかけ作りですが、それを実際に進路に生かせることは、今後の進路選択に大きな影響を与えると考えています。

― 近年、生徒たちの進路に変化はありますか。

八田先生
最近では、「より上の大学に行きたい」というよりも、「自分のやりたいこと」に焦点を当てる生徒が増えてきたと感じています。「国公立大学だから良い」という考え方ではなく、「自分のやりたいことができる学部がある、この大学に行きたい」と、自分の意思をもって進路を選ぶ生徒が、以前より多いのです。
そうした選び方をすることで、大学入学後のミスマッチも起きにくく、進学を後悔することも少なくなります。一方で、「少しでもネームバリューのある大学に」という理由だけで大学を選ぶと、入学後に自分に合わず「興味のない勉強だった」と、大学を中退してしまうケースもあると聞きます。そのため、生徒がそうした選択をしないように工夫を重ね、生徒が自分に合った進路を選ぶことを実現するためのサポートを行うのが、学校の役割です。

― 今後の進路指導で目指すところは?

八田先生
今のスタンスでいきたいと思っています。できる限りの情報と選択肢を提供し、多様な選択肢から自分に合った進路を選んでもらうことが目標です。何をすべきかわからないときは、迷いや悩みが大きいのですが、やりたいことが見つかると、水を得た魚のように勉強を始める生徒たちは、本校の強みです。

Staff Interview

カレッジカウンセラー
鈴木知美さん

夢に向かって進路選択する生徒に伴走

― カレッジカウンセラーとは、どのように生徒をサポートするのでしょうか。

鈴木さん
カレッジカウンセラーは、自分の夢に向かって進路を選択していく生徒のサポートが仕事です。最近は自分の夢を叶えるために海外進学が選択肢に入ってきますが、海外進学は選択肢が世界中に広がっており、日本にはない制度も数多く存在します。そのため、生徒の悩みや不安に耳を傾けながら、卒業時に自信を持って次の一歩を踏み出せるよう、私の専門的な知識を活かして伴走します。

― 日本と海外ではどのような違いがあるのですか。

鈴木さん
日本の教育制度では大学選びにおいて偏差値が重視されますが、海外の有名大学の入試では、学力はもちろんのこと、自分の夢やビジョン、これまでの課外活動も総合的に見られます。そのため、「やりたいことは何か」、「学びたいことはどんなことか」などを聞き取り、「海外大学になんて進学できるわけがない」と思っている生徒の思いを丁寧に紐解いていくことに時間をかけます。また、自分の学びたいことが日本では見つからないけれど、海外では見つかった、というケースも多くあります。グローバルなリソースを活用して、自分の夢をどのように実現するかに重きを置いてサポートしています。

― 夢を実現するための手段を提案するわけですね。

鈴木さん
カレッジカウンセラーは生徒の可能性を広げる、楽しい仕事です。生徒たちは頭を抱えながらも、それぞれの夢に向かって取り組んでいますが、悩みながらも前向きで楽しそうな姿がとても印象的です。

― 昨年11月にスタートした「海外進学ガイダンス」の手応えは?

鈴木さん
初年度は高校2年生が中心で「ここに行きたい」「こんな憧れをもっている」と素直に気持ちを話してくれる生徒が多く、私自身も彼らから元気をもらいました。報徳教育が根付いているのだと思いますが、とてもオープンで、そこは彼らの強みだと思います。夢がまだ具体的でなくても、憧れは大切な要素です。そこには必ず何かしらのビジョンがあります。自分の可能性に気づき、広げ、一歩ずつ進んでほしいですね。

― 具体的には、どのようなサポートをされたのですか。

鈴木さん
最初はグループで説明を行い、その後、個別にカウンセリングを実施しています。行きたい国が決まっている場合は、その国の大学入試制度を調べて丁寧に説明し、志望大学が決まれば出願や準備のための具体的なアプローチを一緒に考えていきます。大学側が公開している情報には限度があるため、生徒自身が大学に直接問い合わせる際のサポートも行いますが、基本は生徒主体です。

― 最後に、生徒をサポートするうえで大切にされていること、そして進路を考える生徒たちへのメッセージをお願いします。

鈴木さん
私は、生徒の思いや願いを叶えるために、伴走することを大切にしています。高校生は微妙な年齢ですから、話を深く掘り下げすぎると嫌がられることもありますし、相談に来なくなる時期もあるかもしれません。それでも、できるだけ気軽に立ち寄れるような雰囲気づくりを心がけ、少しでも夢の実現に近づけるようサポートしたいと思っています。
また、慣れ親しんだ日本を出てみることで、これまで気づかなかった新たな自分と出会い、自分の可能性を大きく開花させるチャンスがあります。その体験を、ぜひしてほしいので、「自分の可能性に自分でキャップをしないで!」と、生徒たちにはよく話しています。本当にやりたいと思ったことがあるなら、それを言葉にして行動に移してくれることを願っています。

不安、疑問、憧れ…

相談して夢を実現「海外進学ガイダンス」

C-Room<*>で行われる「海外進学ガイダンス」には、放課後に多くの生徒が相談に訪れる。内容は、留学に向けたエッセイのサポートや、ブリティッシュ英語を学ぶための国選びなど具体的なものから、海外で働くことへの憧れや、より良い大学を探すための漠然とした質問まで様々だ。鈴木さんは柔軟に対応し、憧れを持つ生徒には「何に興味があるか」などを質問して考えを引き出す。報徳学園のC-Roomは、興味や夢を実現する場として、生徒とスタッフの支え合いを感じさせる場所となっている。

*C-Room
ネイティブスピーカーが常駐し、生徒が自由に利用できる。国籍や文化、言語、宗教などを超えた学習や交流を実施することで、生徒が自ら課題を見出し解決する力や多様性への認識を養う場所。

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