凛花コースの「凛花活動」とは?
6年間の「凛活」で手に入れた
素敵な大人になるための経験値

- 凛花コースYさん(高3) Hさん(高3)

- 凛花コースリーダー(体育科主任)溝 将之先生
大阪ツアーを企画し、下級生をアテンド
溝先生今日は「凛活」について、二人に語ってもらおうと思います。印象に残っている活動は何ですか。
Hさん高1のときの起業体験です。
Yさん私は「起業体験」と中3の「凛花DAY」も楽しかったです。
溝先生「凛花DAY」は中学期における「凛活」の集大成とも言える取り組みです。中3生がツアーコンダクターとなって、大阪の街を巡るツアーの企画・準備から当日の引率までを行うフィールドワークですが、二人はどこを行き先に選びましたか。
Yさん私のチームは、繁昌亭で寄席を見るツアーを企画しました。
Hさん私のチームは中之島をメインに巡り、お土産購入先としてレトロ建築をショップにしたパティスリー『五感 北浜本館』を行き先に加えました。
Yさん「凛花DAY」は中3がチームごとにツアーの企画を立てて、それを中1・中2の前でプレゼンテーションして、参加したいツアーを選んでもらいますから、お土産購入先は重要です。自分たちのツアーが選ばれないとすごく悲しいんです。
Hさん私も、絶対に私たちのツアーを選んでほしいから、ツアー行程などの内容はもちろん、“星の園雪組のツアー”というコンセプトで、幼稚園の名札をイメージしたビジュアル訴求をするなど、プレゼンでの演出にもこだわりました。
溝先生「凛花DAY」では旅行会社のツアーのように、タイムスケジュールを組んで行動しますが、行き先への交渉や予約の電話もすべて生徒が行うところが素晴らしいと、先生も誇りに思っています。生徒から生まれる自由な発想が「凛花コース」の持ち味ですが、なぜそれができるようになると思いますか。
Yさん「凛花コース」は1クラスということもあって、6年間一緒に過ごすうちに、思ったことを躊躇なく言い合える関係が生まれます。1人だけが「こうしたい」と主張するのではなく、みんなで「こんなことをしたい」と案を出し合って、そこに「では、こうしたら?」を被せていくうちに、一番良い案が生まれていきます。
溝先生では、「起業体験」についてはどんな思い出がありますか。授業内容から紹介してください。
Hさん中学3年の後半からクラス内でチームに分かれて、授業は「株」について学ぶところから始まり、その後に自分で会社を立ち上げます。資本金をもとに商品企画を考え、最終的には作ったものを文化祭で販売しました。私のチームはヘアブラシを作ったのですが、値段設定がとても難しかったです。
Yさん私のチームは携帯カバーに挟めるサイズのステッカーを企画しました。うちの学校のイメージキャラクター“大谷花子”に、先生に許可を取ったうえでいろんな格好をさせて、校訓「朝に礼拝 夕に感謝」を添えたデザインにしました。
Hさん「起業体験」で一番印象に残っているのは、文化祭での販売よりも、販売した後の利益をどう活用するかを考えたことです。能登半島地震の復興支援に役立てよう、雨の日に傘を忘れた生徒のための置き傘の資金にしよう、正門からの道沿いに花を植えよう…といった案が出ました。自分たちで稼いだ資金で、社会に役立つことを考えるのが一番楽しかったです。
Yさん15~16歳で株に触れて起業を体験できるのは、すごく貴重だと思います。実際にその10年後に私たちは社会に出ていくわけですから、とてもいい経験になりました。
溝先生文化祭で販売する商品を作るうえ、メーカーをはじめ企業と直接取引したことも、大きな経験になったと思います。「起業体験」を10年前にスタートした当初は、東京証券取引所が提供するプログラムを活用していて、出資金も東証から出してもらっていました。
現在は完全に「凛花コース」のオリジナルプログラムになっていて、みんなが活用した出資金も、先輩たちの売上を積み立てたものです。実は先日、大阪証券取引所の方が「起業体験」の視察に来られて「大谷のように完全に自走している取り組みを、関西で他に聞いたことがない」と感心されていました。先生たちも誇らしかったです。
探究学習の祭典でグランプリを受賞
溝先生今回、皆さんに登場してもらった理由が、高校1年生のときに探究学習の祭典『TWICE AWARD』でグランプリを取ったからなのですが、『TWICE AWARD』の話を聞かせてもらえますか。
Hさん高1のPBL(課題解決型学習)が、グローバルリサーチという教育プログラムを使ったもので、4人ずつのチームに分かれて、世界中にあるいろいろな問題にSDGsを絡めて発表するという取り組みから始まりました。
溝先生補足すると、「凛活」では各学年でテーマを変えつつPBLに取り組んでいて、教材も主に大会につながる探究学習プログラムを活用しています。高1ではTWICE PLANのグローバルリサーチを主に活用していて、皆さんは『TWICE AWARD』第14回大会のグローバルリサーチ部門に出場してグランプリを勝ち取りました。
Hさん校内予選で選ばれた2チームが『TWICE AWARD』の予選に出場。さらにそこからチームKOKO’Sが全国大会に進出できることになりました。ただ、予選でのプレゼンは、私たちの中では完成度に満足できていないものでした。そこで全国大会出場が決まった時に、「ベストを尽くして完成度の高いものに仕上げよう!」とみんなで決めて、全国大会の前日にプレゼンテーションの構成や演出を大きく変えました。
Yさん普通のプレゼンだと、聞き手が飽きると考え、普段の大阪での話し言葉で、教室で授業を受けているお芝居風の演出にしようと決めて、先生役と生徒役で服装も変えました。
溝先生プレゼン内容についても教えてください。
Hさん世界的な課題として教育問題があり、女子の方が教育を受けにくいジェンダー差別があることを知りました。女子校で学ぶ私たちだからこそ、この問題を取り上げる意義があると考え、女性教育弾圧に反対したマララ・ユスフザイさんの活動のリサーチを開始。最終的にはユニセフに100円を募金したら、学習に必要な鉛筆やノートを3人分、また病気を防ぐワクチン約5人分やビタミンAのカプセル50錠ほどを届けることができることを伝える内容にしました。
Yさん「何も変わらないのならやる意味がない」というのが、私たちの想いでした。今の私たちには、世界を変えることはできませんが、私たちのプレゼンを見た人が世界を変えるための一歩を踏み出すきっかけを作ることはできると考えたのです。そこでプレゼンの最後は見ている人に、「どうですか、100円だけでも募金してみませんか」と語りかける形にしました。嬉しかったのは、審査員の方が「僕、この後、募金しようと思いました」とおっしゃってくださったことです。私たちの目標はそこだったので、やってよかったと本当に嬉しく思ったのを覚えています。

模擬国連で国際協力の難しさを体感
溝先生高校2年で取り組む「凛活」の「模擬国連」についても紹介してください。
Yさん1学期にくじ引きで担当する国を決め、その国の課題や理想とする他国との協力関係についてリサーチし、3学期の最後に飢餓のない世界の実現をめざす「ハンガーゼロ」をテーマに模擬国連を開き、決議を目指しました。私はインドの国連代表のチームでした。
Hさん私はマダガスカル担当でしたが、決議を通すのが本当に難しかったです。本当の国連に出席されている外交官の方はどれだけ大変なのだろうとつくづく思いました。
Yさん国を背負ってるからこそ、どうしてもこの案を通したい。でも別の国からは違うことを言われて、それはわかるけれど譲れません。どこかの国が妥協しなければいけないのですが、それがもどかしく、難しいんです。
Hさん最後に一つの結論を出そうという方針でしたが、私たちの代ではたくさんの案が乱立してしまい、議論は白熱したのですが、最終的にみんながどの案にも賛成することになってしまいました。
Yさんそこは反省点ですが、高1でグローバルリサーチを経験していたことで、担当国が抱える問題点に対する理解や、必要な支援を発想することがスムーズで、学びがつながっている実感がありました。
溝先生では最後に、「凛活」を通じて自分が成長したと思うことを教えてください。
Hさん私は何かをコツコツ続けることが苦手だったのを克服しました。「凛活」ではプレゼンテーションに取り組む機会がたくさんあります。そこでチームで役割分担しながら計画的に物事を進めます。また役割分担をスムーズにするためには、相手の感じ方や考え方を知ろうとすることが大事だと学べたことが良かったと思います。
Yさん担任の先生から言われた「あなたたちは企業体験などを通じて、社会に出て必要な全部を学んできているはずです」という言葉に、「確かにそうだ!」とハッとしました。
Hさん「凛活」の「Farm to Dish」では学校内の畑で野菜を育てながら、農家の方がいかに大変かも学びました。育てた野菜は、天王寺の産直市場「よってって てんしば店」で販売させていただきました。
Yさん文化祭でも販売は体験しましたが、あの時は「大谷生の取り組みだから」というフィルターがあって売れた部分が大きかったんです。「Farm to Dish」で初めて、一般の方にフィルターを通さず販売する体験をして、取り組みがグレードアップしていると感じました。
溝先生凛花コースの「凛活」は、何かを調べて発表するだけの探究活動とは一線を画したものです。学校外の人や施設を巻き込みながら実際に行動するという、社会と深く関わっていくところが「凛活」の強みだと思います。凛花コースは推薦入試での大学進学を前提としているので、我々教員が意識しているのは社会に出た後のことで、「凛花コースで学んだなら一人でもやっていける。強く生きていけ!」と自信を持って送り出しています。
Yさん起業体験にしても、模擬国連にしても、『TWICE AWARD』にしても、普通の勉強とは違う「凛活」ならではの経験から得られるたくさんのことを、この高校3年間で身につけることができました。
Hさんそうした経験は、将来社会人になったときに役に立ちます。そこは確かな自信を持っています。

















