清風南海図書館
清風南海図書館
宕峯館1階(1995年設立)
- 刊行物
- 「本まにおすすめ」「図書だより」「図書館報」
- 蔵書数
- 4万9701冊(2021年度)
- 座席数
- 66席
- 開館
- 月~土
- 貸出
- 1人3冊、2週間まで
- 図書委員
- 前期と後期で1クラス2名。約95名が活動。
2021年度ベストリーディング
<中学>
- 1.天久鷹央の推理カルテ
- 知念実希人 / 著(新潮社)
- 2.天久鷹央の事件カルテ
- 知念実希人 / 著(新潮社)
- 3.リアルフェイス
- 知念実希人 / 著(実業之日本社)
<高校>
- 1.“ことわざDE心理学”のすすめ
- 穴田義孝 / 著(文化書房博文社)
- 2.ドーナツを穴だけ残して食べる方法
- 大阪大学ショセキカプロジェクト / 編(大阪大学出版会)
- 3.君も精神科医にならないか
- 熊木徹夫 / 著(筑摩書房)
清風南海図書委員とは?本好きな図書委員にたまらない!店頭選書
図書委員の活動の内容、楽しさを教えてください。
Uくん基本は週に1回、返却本を書庫に戻す仕事をしています。それが好きな人もいますが、僕には半年に1回、書店に行って自分の良いと思う本を選書できる店頭選書が魅力です。選書本を紹介するポップ作成が条件で、本が好きな人が多い図書委員には魅力的な仕事です。また、クラスで配布される「本まにおすすめ」というプリント用に、図書館にあるおすすめ本を400字程度の文章に書くという仕事もあります。そこに文章載せたいという気持ちと、文章を書くのが好きなら、それも楽しい仕事です。
Sさん私は中3の前期、高1の後期、高2の前期で図書委員を務め、ずっと返却本を片付ける係をしています。本を戻すときは、本の場所を理解しないといけないと同時に、「こんな本があったんだ」と発見にもなります。時折、本の修復や、本の透明カバーを貼り付ける仕事もしてきました。簡単ではないですが、司書の方たちが丁寧に教えてくださり役に立てたので、とても印象に残っています。
Nさん自分が普段読まない本に触れる機会が増えるのも、図書委員の良さです。私は普段、新書は読まないのですが、たまに返却本の中に新書があって、興味を持って読んでみることがあります。
Iさん私は、中1から中3まで図書委員をやっていて、本を返却する仕事が一番楽しいです。私はミステリーをあまり読まないのですが、返却中にあらすじを読んで「おもしろそうだな」と思ったら、そのまま自分で借りています。いろいろな本との出会いがある楽しい仕事だと思っています。
皆さんは、なぜ図書委員になろうと思ったのですか。
Iさん私は本が好きなので、中学では図書委員をやろうと入学時から思っていました。特に中1で店頭選書をしてからは図書委員の楽しさを実感して、中3まで続けてきました。
Nさん私は小学生の頃からずっと本が好きで、志望校に悩んだときに、図書館を見て清風南海に決めました。図書委員になって店頭選書ができることに期待していましたが、中1では図書委員になりたい人が多くてあきらめ、中3になるとなりたい人がいなくなったので「では、やってみよう」と思い、やってみたら本当に楽しかったです。
Sさん私は中3のときに先生から「やってみないか」と言われたのがきっかけです。とてもおもしろかったので、そのままやり続けてきました。
Uくん僕は高2の前期からです。「本まにおすすめ」が配られているのは知っていて気になっていましたが、以前は今ほど本が好きではなく、「どうせ図書委員の中の選ばれた人が書いているんだろう。僕の文章が選ばれるわけがない」と思っていました。それがよく話を聞いてみると、図書委員が書いたら掲載されるということで、「それならやってみたい」と思って図書委員になりました。その結果、僕の原稿は司書の先生に真っ赤にして返されて…それがものすごく悔しかったんです。何回も何回もやり直しました。自分の負けず嫌いが、発動されたんですね(笑)。そして「いずれは1回で通してやる!」という心持ちで、後期の図書委員にもなり今に至ります。
清風南海図書館の魅力とは?私たちのことを考えてくれている図書館
皆さんが思う清風南海図書館の魅力は何でしょうか。
Uくん僕が一番驚いたのは、司書の先生の事細かなフォローです。こちらが本についてたずねたら、ほぼ即答してくれます。圧倒的な熟練度です。
Sさん私も司書の先生のフォローには感謝しています。歴史の事項を調べるための本を問い合わせたら、その本だけでなく次々に関連本を持って来てくれました。それに蔵書数の多さ、多様なジャンルの本があることも良さだと思います。美術本や哲学的な本、全部英語の海外本もあります。私は自分の住む市立図書館にも行きますが、私にとっては学校の図書館のほうが充実しています。
Nさん中学受験時の第一志望を他校と迷ったときに、他校の図書館は勉強に関する本が多くて、進路に関係する本も大人が読むような本ばかりだったんです。でも清風南海の図書館は、生徒に読みやすい本を用意してくれていると感じられたので、私はそこがいいと思ってこの学校を選びました。私たちのことを考えてくれている図書館という気がしています。
Iさん話題の本や新刊本が、とても早く入ってくるのも良さです。「話題のこの本、あるかな?」と探したら、大抵あります。
生徒の皆さんが満足できる図書館ですね。図書館利用頻度や読書量は?
Iさん学校の図書館は月に3、4回ぐらいの利用で、1回に1~2冊借ります。自習スペースをよく利用して勉強もしています。大きな机に2人席のスペースと、家の学習机のような1人で自習できるスペースがあって、私は1人の自習スペースが好きです。集中できてとても使いやすいです。
Nさん私は主に小説を、年に100冊ほど読みます。図書館には1ヶ月に2、3回行って3冊ずつ借り、読み終わったら返して、を繰り返しています。長期休暇の時は10冊まで借りられるので一気に借ります。
Sさん高校生になって利用頻度は減りましたが、一番利用していた中2では毎日のように図書館に通っていました。1週間に2、3冊の小説を読んでいたような気がします。最近は、学校から課題図書で論理的な本が配られることがあり、それを読んでいます。自習スペースは別の教室を使うことが多いのですが、ペースがつかめないと思ったら図書館の自習席に行きます。
Uくん僕は村上春樹が好きなハルキストです。2ヶ月に1冊ぐらいは読んでいます。村上春樹は、父の知り合いの方に「村上春樹はいいぞ!今のアニメにも通ずるものがある」とプレゼンされ、高1の夏休みに『ノルウェーの森』や『1Q84』を一気に読みました。ただ、僕は読んだ本を自分の本棚に置いておきたいので、図書館で村上春樹の本を見て、借りずにその本を書店で買っています。
読書とは?読めば読むほど楽しい読書
読書は自分にとってどういうものですか。
Uくん立派なことを言いたいのですが、僕にとっては趣味の域を脱していないと思います。結果的に視野が広がったり、日本語力や人と話す時の言葉の経験が増えていたりするかもしれませんが、それ以前にいい趣味です。本を読むと偉いという風潮があり、親もゲームはダメでも本は買ってくれますから、そういう意味でも読書は最強の趣味です。この趣味を持っていたら、またいいことがあるような気がします。
Sさん私は小さい頃から読書をしていますが、自分の話の幅を広げることができる存在だと思います。友人と「あの本よかったよね」と、いろいろ話が盛り上がり、そこで読んでいなかった本を知り、「こういうのもいいな」と気づいて読んでみることもあります。そんな読書をこれからもずっと続けていきたいです。
Nさん私は、先が気になって、本をとても早く読んでしまうタイプです。一気に2、3行ずつ読むので、読み終わった後は達成感がありますが、読み返すと意外と読み飛ばしていたり、ミステリーなら伏線を見つけたりもします。そういう読み終わっても新しい発見ができることや、何回も新しい発見ができることが、読書の一番の楽しさだと思っています。
Iさん小説は主人公が冒険したり、行動したり、感じることで、自分もその世界観に引き込まれ、その本がおもしろければおもしろいほど、その世界に没頭できます。そういう体験が楽しくて本にはまりました。自分の中で読書はゲームのようで、読めば読むほど楽しいです。一種の現実逃避になっていて、隙間時間や暇があれば「本を読もう」と思います。
毎日の学校生活は忙しいと思いますが、読書の時間は取れますか。
Uくん本は読みたいか、読みたくないか。ただ漠然と本を読みたいと思っていても時間はできないと思います。
Sさん読む時間がなければ時間を作ればいいと思っています。無駄な時間を最小限にしたら読む時間も増えてきます。
Nさん嫌な勉強も「この本を読んだら頑張って勉強をしよう」と思えば区切りをつけて頑張れたりします。それに読みたいなら、スマホを見ている時間を「今日は読みたい本があるからやめよう」と調整もできます。不要な時間、嫌な時間を減らして、読みたいからこそ時間を作るんです。
Iさん私も「あの本の続きを読みたい!」という気持ちが強いと、宿題を頑張って早く終われます。読書が大好きだから、他のことも頑張れます。
清風南海図書委員の推薦本
Uくん
『1Q84』村上春樹 / 著(新潮社)
村上春樹がおもしろい
この本は、結末も途中の展開も、わからないことばかりですが、それが村上春樹作品の良いところであり、悪いところです。よくわからない比喩表現が多く、それに中2ゴコロをくすぐられているだけとも言われるのですが、僕にとってはそこが魅力です。僕の場合、明確な答えが1つだけある本よりも、自分の受け取り方でいろいろな解釈できる本がおもしろい。『1Q84』も主人公が2人いて、2つの視点で物語が進み、わくわく感があり、比喩表現も巧みです。答えがないので独自の読み方もできます。文庫では6冊に分かれている長編ですから、夏休みをひとつ捨てるつもりで読んでください。
Sさん
『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー / 著(早川書房)
最後までのドキドキ
私はミステリーが好きで、ずっと日本人作家のミステリーを読んでいたのですが、アガサ・クリスティーはミステリーの代名詞のような人だと知り、有名作品の『そして誰もいなくなった』を読んでみました。最初は海外作品なので読みにくいのかなと思いましたが、一気に読み進めていけます。登場人物の視点がコロコロと変わり、最後まで誰が犯人かをわからせず、残り2人になってもどちらかわからない。最後までドキドキさせられました。また、この物語は1冊で完結しますから、海外小説を読むときの最初の1歩としてもおすすめです。私もこれをきっかけに海外小説のおもしろさを知り、ドストエフスキーなども読むようになりました。
Nさん
『正欲』朝井りょう / 著(新潮社)
この作品は2022年の本屋大賞にノミネートされ、図書館にポップアップして置いてあったので読んでみたら、最初の数ページだけでもとてもおもしろかった1冊です。ただ、図書館で借りている本があり一旦諦めたのですが、「本まにおすすめ」に載っていたので思い出して読んでみると、ジェンダー問題、ダイバーシティ&インクルージョンといったことを受け入れるうえでの課題や葛藤がとてもおもしろいんです。最初と最後の違いや展開にも驚かされ、一気に読めました。朝井りょうさんは難しい本が多い印象ですが、この本はわかりやすいです。書店にも絶対に置いてあるので、ぜひ読んでみてください。
Iさん
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ / 著(文藝春秋)
私はもともと瀬尾まいこさんの作品がとても好きです。日常的な出来事や主人公の感情がとても丁寧に表現されていて、ラストシーンではぽろっと泣けるところがいいんです。『そして、バトンは渡された』は、本屋大賞を受賞していて、映画化もされています。主人公の親が何回も再婚離婚を繰り返して、4回くらい親が変わるのですが、それぞれの親の性格が全部違って、主人公も親に振り回されながらも結果的に楽しんでいます。読みやすく、しかもおもしろい。おすすめできる良い作品です。
清風南海図書館の魅力とは?生徒が自己形成、人間成長ができるような作品を
清風南海図書館の良さ・魅力を教えてください。
Mさん生徒目線で蔵書構成をしていることですね。また、学校図書館ですから、生徒の教科学習に直結する本、先生方の授業に必要な本を基本線に選書していますが、勉強に直結するだけではなく、生徒が自己形成、人間成長ができるような作品を選んでいます。読書とは、本を通しての作者との対話です。その対話を通して、自分でいろいろなことを考えて、多様な価値観を身につけ、広い視野でものを見られる人になってほしいと思いますので、様々なタイプの物語や幅広いジャンルの読み物を取り入れています。
また、図書館は本を読むだけではなく、自習でも使ってほしい場所です。本を読まなくても、図書館内をぶらりと歩いて、書名を見て、自分なりに思いにふけるだけでもいいんです。ですから、学校に来たら「図書館に行きたいな」と思えるような気軽でくつろげる雰囲気になるよう心がけて運営しています。
Yさん中学1年生から高校3年生まで多くの生徒が利用する学校図書館ですから、精神年齢的にも幅広い、多感な年頃の生徒たちにとって、借りなくても「行きやすい」場所であればと私も思っています。新刊本も多数揃え、町の図書館では予約が取れない本もすぐ渡せるところは強みですね。特に現代社会に関する本は、司書2人で日々新聞をチェックして、遅れのないように注意しています。
授業とはどのように関わるのでしょうか。
Mさん中学1年生のカリキュラムでは、1年間・週1回の「読書の授業」があります。本の読み方や読んだうえでの考えをどのようにまとめて、どう発表するか、といった授業です。私たちは、その読書相談や生徒と一緒に本を探すといったサポートをしています。
先生方から「こういうテーマで授業したい」という要請がありましたら、それに基づいた選書リストを作成して、そのコーナーを図書館内に設定したり、生徒に提供したりすることもあります。「読む」ということは全ての教科の土台ですので、それがしっかりできていないと、話になりません。その考えを軸に、学校として読書は大切にされています。
貸出順位を見ると小説が多いように思いますが、中学と高校の貸出本に特徴や傾向はありますか。
Yさん中学生は小説が多く、自分たちと同世代の主人公の小説、青春小説、恋愛小説が多いです。男子と女子には特に違いがありません。高校生になると推理小説など中学生から一段階成長したような大人も読む小説が多くなります。また、進路選択が迫ってきますので、将来に繋がるものを選んでいるように感じます。
司書としての想い多彩な読書で、いろんな見方を身につけてほしい
お二人の司書としてのやりがいは?
Mさん「こういう授業を図書館でしたい」と、各教科の先生方からお声をかけられることで、先生方が授業要請できるような蔵書構成になっているのかなと嬉しく感じます。生徒からも、月1回発行している「図書だより」の裏の新着リストに反応して、あまり見かけない生徒が「図書だより」を手に図書館を訪れてくれた姿を見ると、「良かった」と思いますね。
Yさん最もやりがいを感じるのは、本を探している生徒にピッタリ合う本を渡せたときです。初めに大きなくくりで相談に来てくれるので、話をしながら徐々に範囲を絞り込み、悩んだ末に提案したら「読んでみます」と借りてくれる。その時が一番嬉しいですね。
中高時代の読書の良さは何でしょうか。
Mさん時間的にも物理的にも多くの人に会うのは難しいですが、本は作者の考えが詰まっていますから、例えばうちの図書館なら5万冊近い本の5万通りの考え方に出会えます。時空を超えて、世界も超えて、いろんな国の人たちに出会い、いろいろな考え方に触れられるのが読書の良さ。そして、読書で作者と対話することによって、「この作者はこう考えているんだ」と新たな視点を自分の中に生み出していけるのが、読書の素晴らしさです。生徒がこれから社会に出るにはさまざまな価値観を身につけることが必要なので、中高生の間はいろんなものを読んで、いろんな見方を身につけてほしいと思います。
Yさん小説なら、読んだ本のいろんな登場人物の考えや生き方を学べ、自分だったらどうするかを考えることができます。教養本なら、ダイレクトに書かれている悩みの解決法を知り、試す機会も生まれます。それが読書の良さです。想像力や思考力も養われます。そして語彙が増えますから、自分が思っていることを伝えられます。読書によって何通りもの考えを持ち、人生に必要な力をつけてほしいと思います。
清風南海図書館 司書の推薦本
司書 Mさん
『本と幸せ』北村薫 / 著(新潮社)
北村薫さんの2000年から2019年までのエッセイで、それぞれは北村さんが読まれた様々なジャンルの本の感想です。私の仕事は本をすすめることですが、私の好みに偏ってきますので、いろいろな書評集を選定の参考に使っています。『本と幸せ』は、北村さんの本に対する愛情と、「読書はすごく楽しいんだよ」という思いがひしひしと伝わってきて、これを読んでページを閉じたら、楽しさや幸せが2倍になると思います。タイトル通り「本と幸せ」になれる本です。
司書 Yさん
『おおきな木』シェル・シルヴァスタイン / さく・え(篠崎書林)
本校の図書館には、絵本が約380冊あります。絵本は子どもだけのものではなくて、大人が読んでも十分読み応えのあるものがたくさんありますが、私のおすすめは『おおきな木』です。少年と1本のリンゴの木の話で、原題は『The Giving Tree』。「与える」がテーマで、木が自分を犠牲にして少年に与えているようにも見えますが、木は自分が大切に思っている相手が幸せなら自分も嬉しい。相手に対する最高の表現が主題になっています。正解はないのですが、いろいろ考えることで成長していける1冊です。