議論を通してお互いを認め合う時間
高1の8クラス対抗戦で行う「クラス対抗英語ディベート大会」。論題(Motion)に対して、肯定側(Affirmative Side)と否定側(Negative Side)のチームに分かれ、英語ディベートを行います。
論題が割り当てられたのは3日前。クラスから選抜された生徒たちは4~5人のチームになり、論題で問われている内容を理解して自分たちの主張をまとめ、その課題や疑問まで幅広く調べてきました。その全8試合のディベートを、アメリカのグリネルカレッジで学び英語ディベーターの後進育成にも関わる倉田さんと、豊島岡女子学園の卒業生で現在東京理科大学1年生でESS部員(学部1年生全国大会Asian Bridge 5th best speaker)の中西さん、そして校内から植村先生がジャッジ。最終的にベスト3チーム、ベスト5スピーカーズが選ばれました。
ディベートは、肯定と否定に分かれた立論スピーチ<①④>を行い、それに質問<②⑤>、理由を回答し<③⑥>、最後に反論し合う<⑦⑧>という形式。反対側からどのような質問や反論が出るかを各チームであらかじめ予想して対策を練っていますが、予想外の質問や指摘が飛び出すことも…。それらすべてに英語で対応し、最終的に自分たち側の立論がオーディエンスに響くことを目指します。
Eating contests should be banned.
大食い大会は禁止されるべきだ。
Medical schools in Japan should accept equal number of male and female students.
日本の医学部の入学者は、男性と女性を同数にするべきだ。
Female athletes should be allowed to professionally compete against men.
女性のプロスポーツ選手は男性と一緒に競うことが許されるようになるべきだ。
Giving of chocolate(and other gifts)on St.Valentin’s Day should be banned at all junior and senior high schools in Japan.
日本の全ての中高でバレンタインデーにチョコレート(そして他のプレゼント)を渡すことは禁じられるべきだ。
Woman should be given two votes for local & national elections.
女性は選挙で2票、投票できるようにするべきだ。
Woman and only woman should be allowed to bear arms(except for police & military personnel).
(警察と軍事関係者を除いて)女性が、そして女性のみが銃火器の所持を許されるべきだ。
The use of contact lens by minors should be banned.
未成年のコンタクトレンズの使用は禁止されるべきだ。
Teen pop-groups should be banned.
10代のポップ音楽グループは禁じられるべきだ。
私は第1試合の「大食い大会は禁止されるべきだ」で、最初に話す肯定側の立論を担当したのですごく緊張しました。私たちはクラスの人から推薦で選ばれたのでその期待に応えようと思って、今日までの準備の3日間必死でした。毎休み時間にみんなで集まって、自分たちの意見をシェアし、たくさん協力し合って原稿作りもすごく頑張りました。おかげでチームワークよく大会に参加できたと思います。質問もたくさん予想して、エビデンス(証拠)集めにも時間をかけ、いろいろな作戦を練って、論破できるように頑張りました。
難しかったのは、相手からの質問を考えるときです。私たちは自分たちの作った原稿は完璧な正論だと思っていたので、どこを突かれるのか予想ができなくて…。だから相手からの質問の予想を今日の本番直前の昼休みまでずっと4人で考えました。
今日のディベート大会で私たちがベストチームになれたのは、表現力だけでなく、相手の質問とどれだけ噛み合ったかが一番大きな決め手だったのかなと思います。準備と、その場で臨機応変に対応できる力の大切さを知ったので、今後そのような力をもっと伸ばしていきたいと思います。
私は第8試合の「10代のポップ音楽グループは禁じられるべきだ」で質問を担当しました。私はクラブ活動(政経部)で日本語のディベートをやっているのですが、やはり大勢が見ている前に立って英語で瞬時に質問を考えるのは難しかったです。思いついたことを英語にできなくて、それを黒沢さんに伝えたら英語で返してくれて、チームで補い合えました。私自身は、普段ディベートを経験しているぶん、とにかく根拠があることを言った方がいい、そして事前に証拠を調べておくとか、相手が言って来るであろうことをできる限り想定してその答えを考えておこうとはみんなに伝えてしっかりとやりました。やり終えた今は、いつもやっている日本語のディベートと根本的には変わらず、相手の意見に瞬時に反応して返す楽しさや、論破する楽しさは英語でも変わらないんだと知れて、ディベートをクラブ活動以外でもやってみたいと思います。英語ディベートも面白いと知れたので、大学生になったら挑戦したいと思いました。
私は反論を担当しました。試合中にどのように反論するかを考えることはとても難しかったのですが、準備の段階で「こう立論されたら、こう反論する」と細かいところまで決めていたので安心感があり、準備の大切さを知りました。このチームで良かったのは、準備の段階から4人で同じくらい意見を出し合えたことです。私たちは普段から仲良しグループというわけではなく、クラスから選ばれて3日前に集まったのですが、私が思いつかないような反論の仕方を他の人の意見を聞いて学べたり、新たな視点に気づけたりして、4人で楽しく進められました。その中で、日本語では思いつけてもそれを英語で表現することの難しさを感じたので、これからはもっとスピーキング力を鍛えたいと思っています。今回、オーディエンスとして他の人たちの試合も聞け、自分が全く想像していなかったような意見や主張に「なるほど」と感心しました。今後、日常生活でも議論が起きそうなことがあったら、自分の意見ばかりを通すのではなく他の人の意見にも耳を傾けてみればディベートのようなことも面白く感じられると思うし、視野も広がるので実践していきたいと思っています。
私は「10代のポップ音楽グループは禁じられるべきだ」で最初の立論スピーチを担当したのですが、緊張して手が震えてしまいました。でも周りに仲間がいることが心の支えになって、最後までスピーチを続けることができました。言い終わった後もみんながフォローをしてくれて、自分が持っていないところを補ってくれるすごくいいチームだったと思います。私はもともとこういう大きな舞台に立つタイプではなくて、推薦されるタイプでもなかったんです。でも、今回クラスで選ばれて、自分もできるんだ、みんなと一緒にやれば楽しいし緊張する舞台も成功させられるんだ、と思いました。
今回のディベート大会は論題に社会的なものが多かったのですが、自分が知らなかったことも他のクラスのディベート内容で知ることができたことが楽しかったです。また、自分たちの発表を通して、はっきりと自分の意見を持ち、根拠とともに伝えることの大切さを学べたと思います。
普段は英会話部でいろいろなディベート大会に出ています。クラブの仲間が今日はクラス対抗で対立する立場だったので、ちょっと緊張しました。それに各チームが強くてうまくて、英会話部に勧誘したいと思ったくらいです。
私は反論を担当しました。ベストスピーカーズに選んでいただいた理由はわかりませんが、自信を持ってなるべく詳しく説明することが重要だと思っていました。説明して「あ、そうなんだ」と思わせ、最終的に納得してもらえるようにしなければ意味がないと、チームで分担していろいろ調べ、反論できるように固めました。うまくできたとしたらみんなのおかげ。だから、ベストチームに入れなかったことがすごく悔しいです。
ベストスピーカーズに選ばれて、やっぱりディベートが好きだなと実感しました。これからも多くの大会に出て自分の力を磨いていきたいです。大学院生になったら留学してみたいなと思っていますが、まずは英語ディベートを頑張りたいです。
Commentary
本校には、海外に短期留学したり、日々の授業で努力していたり、英会話部で頑張っていたりと、英語力に自信がある生徒は多いんです。ただ、そういう生徒たちが活躍する機会や気になっていても認め合う機会がありませんでした。中学3年までは英語弁論大会があるのですが、書いてきた文章を読み込んで発表するので、お互いの応答がありません。そこでこの英語ディベート大会では、一方的に話すだけではなく、お互い話をぶつけ合って、理解を深め合い、見つかるかどうかはわかりませんが答えを求める。そういった過程を体験させたかったんです。
高1から週に1コマ50分のディベート英語があります。3学期はその授業中に2回のディベート試合をさせています。その中の勝ち残っているチームややってみたいという生徒がクラスから選抜されました。球技大会のバレー種目では、バレー部の部員が活躍できます。そんな感じで普段英語を頑張っている生徒が、「私がやりたい!」と手をあげて、クラスの代表になるというイメージでやっています。さらに海外留学してみたいとか、将来、大学で交換留学に行ってみたいということに興味がある者同士の顔がわかるんですね。同じことに興味を持つ生徒同士の友達の輪ができればという思いもあります。
去年と同じものが半分で、残りの半分は私がいろいろなディベート大会を運営していますので、そこでの面白そうなものを使いました。「女性は選挙で2票、投票できるようにするべきだ」は、なぜ2票なのか、投票権とはどういう価値なのか、なぜもう1票もらうのか、誰の代わりに投票するのかといった私の意図を組んでくれていたので嬉しかったです。そして、あんなに盛り上がると思わなかったのが、「未成年のコンタクトレンズの使用は禁止されるべきだ」。これはどういう条件であれば子どもの自由を制限して良いのかが中心にあって、コンタクトレンズはおまけなんです。それをコンタクトレンズで具体化してくれたのが面白かったです。
人前において英語で話す経験ですね。ディべ―ターたちは、どうすればたくさんの人の前でオーディエンスの心がつかめるのかを、他のディベートを見ていてわかったでしょうし、何度も思い返すと思うんです。また、オーディエンス側にとっては、1時間も英語を聞くことはなかなかないのですが、友達のディベートだと聞き続けられますから、良い機会になったはずです。それに「あの子が格好良かったな、私もやってみたいな」と思うきっかけになり、ロールモデルが見つかり、これからの勉強の動機づけになっていくのではないかと思っています。
高1の段階ですから仕方がないのですが、まだ相手への質問の反応が弱いなと思っています。うまく出来ているチームは1/3ぐらいですね。自分の言いたいことだけ言って、相手の質問はよくわからなくておしまいになりがちなので、高2につなげるならどういうふうに質問するか、どうやっていい質問するか、どうやって話を引き出すか、というディベートに留まらないスキルを求めていきたいです。