チームで英語力・課題解決力を発揮! クラス対抗英語ディベート大会 -ENGLISH DEBATE CLASS COMPETITION-
2月に豊島岡女子学園高等学校で開催された「クラス対抗英語ディベート大会」。中学3年間の「英語弁論大会」を経て、高校1年から英語ディベートの授業を受けてきた生徒たちが、日ごろの実力を発揮する機会です。勝ち負けよりも、オーディエンスに伝わるスピーチができたのか、レスポンスの力を磨けたのかが問われた英語ディベート大会の模様と、表彰者たちの声を紹介します。
クラス対抗で英語ディベート
議論を通してお互いを認め合う時間

高1の8クラス対抗戦で行う「クラス対抗英語ディベート大会」。論題(Motion)に対して、肯定側(Affirmative Side)と否定側(Negative Side)のチームに分かれ、英語ディベートを行います。
論題が割り当てられたのは3日前。クラスから選抜された生徒たちは4~5人のチームになり、論題で問われている内容を理解して自分たちの主張をまとめ、その課題や疑問まで幅広く調べてきました。その全8試合のディベートを、アメリカのグリネルカレッジで学び英語ディベーターの後進育成にも関わる倉田さんと、豊島岡女子学園の卒業生で現在東京理科大学1年生でESS部員(学部1年生全国大会Asian Bridge 5th best speaker)の中西さん、そして校内から植村先生がジャッジ。最終的にベスト3チーム、ベスト5スピーカーズが選ばれました。

ディベートは、肯定と否定に分かれた立論スピーチ<①④>を行い、それに質問<②⑤>、理由を回答し<③⑥>、最後に反論し合う<⑦⑧>という形式。反対側からどのような質問や反論が出るかを各チームであらかじめ予想して対策を練っていますが、予想外の質問や指摘が飛び出すことも…。それらすべてに英語で対応し、最終的に自分たち側の立論がオーディエンスに響くことを目指します。

試合の流れ

試合が始まると、チーム内で立論や質問などの担当を分担する生徒たちは、それぞれが明瞭な発音で身振り手振りを交え、堂々と、時に笑いを挟みながら、肯定側・否定側からの立論や反論のスピーチを行いました。立論は1.5分、質問・回答・反論は各1分と時間制限があるなかで、時間をオーバーしても必死で意見を言いきるチーム、ベルの音に驚いて終了してしまうチームなど様々。特に質問と回答は、ステージ上で相手のスピーチを聞いてから考えなければならないため、内容がうまくまとまらなかったり、英語での表現を相談したり、チーム内で質問者を交代したりと英語力だけでなく対応力も問われます。オーディエンスもステージ上に注目しながら、内容が良ければ拍手や声をあげてリアクションして元気に応援。マークシートでディベートを採点していく役割も与えられ、会場には共に作りあげている一体感があふれました。

論題は、医学部入学者の男女同数の肯否や選挙での女性の2票投票の肯否など “女性”を軸にしたもの、未成年のコンタクトレンズ使用や10代のポップ音楽グループの肯否といった“未成年”の権利を考えるものなど幅広く、一筋縄ではいきそうにないものばかり。日本語ででも難しそうに思える議論を、生徒たちは英語で進めていきます。 深いところまで調べあげて自信に満ちたスピーチでオーディエンスを引き込むチームもあれば、立論をわかりやすく納得させる素材を用意してオーディエンスを味方にするチームも。言葉に詰まれば仲間で助け合い、相手チームに圧倒されれば即興の作戦会議を開いて巻き返すチームワークの良さがどのクラスも印象的で、英語ディベート大会を通して、生徒たちがお互いを尊重し合いながら結束し、成長していく様子が伝わりました。論破する勝敗よりも、相手の意見をしっかりと聞き、レスポンスすることを楽しんでいた英語ディベート大会でした。

Match up & Motions
第1試合 [Affirmative]class7 vs[Negative]class2

Eating contests should be banned.

大食い大会は禁止されるべきだ。

第2試合 [Affirmative]class3 vs[Negative]class6

Medical schools in Japan should accept equal number of male and female students.

日本の医学部の入学者は、男性と女性を同数にするべきだ。

第3試合 [Affirmative]class5 vs[Negative]class8

Female athletes should be allowed to professionally compete against men.

女性のプロスポーツ選手は男性と一緒に競うことが許されるようになるべきだ。

第4試合 [Affirmative]class1 vs[Negative]class4

Giving of chocolate(and other gifts)on St.Valentin’s Day should be banned at all junior and senior high schools in Japan.

日本の全ての中高でバレンタインデーにチョコレート(そして他のプレゼント)を渡すことは禁じられるべきだ。

第5試合 [Affirmative]class2 vs[Negative]class3

Woman should be given two votes for local & national elections.

女性は選挙で2票、投票できるようにするべきだ。

第6試合 [Affirmative]class6 vs[Negative]class5


Woman and only woman should be allowed to bear arms(except for police & military personnel).

(警察と軍事関係者を除いて)女性が、そして女性のみが銃火器の所持を許されるべきだ。

第7試合 [Affirmative]class8 vs[Negative]class1

The use of contact lens by minors should be banned.

未成年のコンタクトレンズの使用は禁止されるべきだ。

第8試合 [Affirmative]class4 vs[Negative]class7

Teen pop-groups should be banned.

10代のポップ音楽グループは禁じられるべきだ。

Best Team Class7 Commentary
準備とその場での臨機応変な対応力の大切さを知った英語ディベート大会

私は第1試合の「大食い大会は禁止されるべきだ」で、最初に話す肯定側の立論を担当したのですごく緊張しました。私たちはクラスの人から推薦で選ばれたのでその期待に応えようと思って、今日までの準備の3日間必死でした。毎休み時間にみんなで集まって、自分たちの意見をシェアし、たくさん協力し合って原稿作りもすごく頑張りました。おかげでチームワークよく大会に参加できたと思います。質問もたくさん予想して、エビデンス(証拠)集めにも時間をかけ、いろいろな作戦を練って、論破できるように頑張りました。
難しかったのは、相手からの質問を考えるときです。私たちは自分たちの作った原稿は完璧な正論だと思っていたので、どこを突かれるのか予想ができなくて…。だから相手からの質問の予想を今日の本番直前の昼休みまでずっと4人で考えました。
今日のディベート大会で私たちがベストチームになれたのは、表現力だけでなく、相手の質問とどれだけ噛み合ったかが一番大きな決め手だったのかなと思います。準備と、その場で臨機応変に対応できる力の大切さを知ったので、今後そのような力をもっと伸ばしていきたいと思います。

日本語ディベートの経験を活かし、英語ディベートでも楽しさを実感!

私は第8試合の「10代のポップ音楽グループは禁じられるべきだ」で質問を担当しました。私はクラブ活動(政経部)で日本語のディベートをやっているのですが、やはり大勢が見ている前に立って英語で瞬時に質問を考えるのは難しかったです。思いついたことを英語にできなくて、それを黒沢さんに伝えたら英語で返してくれて、チームで補い合えました。私自身は、普段ディベートを経験しているぶん、とにかく根拠があることを言った方がいい、そして事前に証拠を調べておくとか、相手が言って来るであろうことをできる限り想定してその答えを考えておこうとはみんなに伝えてしっかりとやりました。やり終えた今は、いつもやっている日本語のディベートと根本的には変わらず、相手の意見に瞬時に反応して返す楽しさや、論破する楽しさは英語でも変わらないんだと知れて、ディベートをクラブ活動以外でもやってみたいと思います。英語ディベートも面白いと知れたので、大学生になったら挑戦したいと思いました。

他の人の意見に耳を傾け、視野を広げるディベートの面白さ

私は反論を担当しました。試合中にどのように反論するかを考えることはとても難しかったのですが、準備の段階で「こう立論されたら、こう反論する」と細かいところまで決めていたので安心感があり、準備の大切さを知りました。このチームで良かったのは、準備の段階から4人で同じくらい意見を出し合えたことです。私たちは普段から仲良しグループというわけではなく、クラスから選ばれて3日前に集まったのですが、私が思いつかないような反論の仕方を他の人の意見を聞いて学べたり、新たな視点に気づけたりして、4人で楽しく進められました。その中で、日本語では思いつけてもそれを英語で表現することの難しさを感じたので、これからはもっとスピーキング力を鍛えたいと思っています。今回、オーディエンスとして他の人たちの試合も聞け、自分が全く想像していなかったような意見や主張に「なるほど」と感心しました。今後、日常生活でも議論が起きそうなことがあったら、自分の意見ばかりを通すのではなく他の人の意見にも耳を傾けてみればディベートのようなことも面白く感じられると思うし、視野も広がるので実践していきたいと思っています。

チームで力を合わせれば、自分にも大きな舞台を成功させられた!

私は「10代のポップ音楽グループは禁じられるべきだ」で最初の立論スピーチを担当したのですが、緊張して手が震えてしまいました。でも周りに仲間がいることが心の支えになって、最後までスピーチを続けることができました。言い終わった後もみんながフォローをしてくれて、自分が持っていないところを補ってくれるすごくいいチームだったと思います。私はもともとこういう大きな舞台に立つタイプではなくて、推薦されるタイプでもなかったんです。でも、今回クラスで選ばれて、自分もできるんだ、みんなと一緒にやれば楽しいし緊張する舞台も成功させられるんだ、と思いました。
今回のディベート大会は論題に社会的なものが多かったのですが、自分が知らなかったことも他のクラスのディベート内容で知ることができたことが楽しかったです。また、自分たちの発表を通して、はっきりと自分の意見を持ち、根拠とともに伝えることの大切さを学べたと思います。

Best Speaker Commentary
自信を持って、相手に納得してもらえるように話すことを大切に

普段は英会話部でいろいろなディベート大会に出ています。クラブの仲間が今日はクラス対抗で対立する立場だったので、ちょっと緊張しました。それに各チームが強くてうまくて、英会話部に勧誘したいと思ったくらいです。
私は反論を担当しました。ベストスピーカーズに選んでいただいた理由はわかりませんが、自信を持ってなるべく詳しく説明することが重要だと思っていました。説明して「あ、そうなんだ」と思わせ、最終的に納得してもらえるようにしなければ意味がないと、チームで分担していろいろ調べ、反論できるように固めました。うまくできたとしたらみんなのおかげ。だから、ベストチームに入れなかったことがすごく悔しいです。
ベストスピーカーズに選ばれて、やっぱりディベートが好きだなと実感しました。これからも多くの大会に出て自分の力を磨いていきたいです。大学院生になったら留学してみたいなと思っていますが、まずは英語ディベートを頑張りたいです。

Teacher
Commentary
小林良裕先生[英語科]
話をぶつけ合い、理解を深め、答えを求めるディベートその過程を英語で体験
クラス対抗ディベート大会を学年行事として企画・実施した理由を教えてください。

本校には、海外に短期留学したり、日々の授業で努力していたり、英会話部で頑張っていたりと、英語力に自信がある生徒は多いんです。ただ、そういう生徒たちが活躍する機会や気になっていても認め合う機会がありませんでした。中学3年までは英語弁論大会があるのですが、書いてきた文章を読み込んで発表するので、お互いの応答がありません。そこでこの英語ディベート大会では、一方的に話すだけではなく、お互い話をぶつけ合って、理解を深め合い、見つかるかどうかはわかりませんが答えを求める。そういった過程を体験させたかったんです。

高1ではディベートの授業があるそうですね。

高1から週に1コマ50分のディベート英語があります。3学期はその授業中に2回のディベート試合をさせています。その中の勝ち残っているチームややってみたいという生徒がクラスから選抜されました。球技大会のバレー種目では、バレー部の部員が活躍できます。そんな感じで普段英語を頑張っている生徒が、「私がやりたい!」と手をあげて、クラスの代表になるというイメージでやっています。さらに海外留学してみたいとか、将来、大学で交換留学に行ってみたいということに興味がある者同士の顔がわかるんですね。同じことに興味を持つ生徒同士の友達の輪ができればという思いもあります。

今年のディベート大会の論題は幅広かったですね。小林先生がディベート大会を見ていて印象的だったものはありますか。

去年と同じものが半分で、残りの半分は私がいろいろなディベート大会を運営していますので、そこでの面白そうなものを使いました。「女性は選挙で2票、投票できるようにするべきだ」は、なぜ2票なのか、投票権とはどういう価値なのか、なぜもう1票もらうのか、誰の代わりに投票するのかといった私の意図を組んでくれていたので嬉しかったです。そして、あんなに盛り上がると思わなかったのが、「未成年のコンタクトレンズの使用は禁止されるべきだ」。これはどういう条件であれば子どもの自由を制限して良いのかが中心にあって、コンタクトレンズはおまけなんです。それをコンタクトレンズで具体化してくれたのが面白かったです。

会場を巻き込んでいましたね。やはりオーディエンスへの訴え方や論題を深く掘り下げる力も鍛えられる場だと感じました。ディベート大会ではいろいろな要素が求められると思いますが、生徒にどのような力がつくことを期待されますか。

人前において英語で話す経験ですね。ディべ―ターたちは、どうすればたくさんの人の前でオーディエンスの心がつかめるのかを、他のディベートを見ていてわかったでしょうし、何度も思い返すと思うんです。また、オーディエンス側にとっては、1時間も英語を聞くことはなかなかないのですが、友達のディベートだと聞き続けられますから、良い機会になったはずです。それに「あの子が格好良かったな、私もやってみたいな」と思うきっかけになり、ロールモデルが見つかり、これからの勉強の動機づけになっていくのではないかと思っています。

今日2年目の英語ディベート大会を終えて、見えたことはありますか。

高1の段階ですから仕方がないのですが、まだ相手への質問の反応が弱いなと思っています。うまく出来ているチームは1/3ぐらいですね。自分の言いたいことだけ言って、相手の質問はよくわからなくておしまいになりがちなので、高2につなげるならどういうふうに質問するか、どうやっていい質問するか、どうやって話を引き出すか、というディベートに留まらないスキルを求めていきたいです。