豊島岡女子学園中学校・高等学校

高2 学年行事開催 ちぎり絵を合わせて作った巨大作品

イベントレポート
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豊島岡女子学園中学校・高等学校
学校生活において生徒の成長の糧になるとともに、大きな楽しみでもある学校行事。ただ、不安定な現状では、中止や延期を余儀なくされているものも増えています。豊島岡女子学園でも高校2年生で予定されていた修学旅行の中止が決定。代替行事として、各クラスの学級委員長を中心とした運営委員が企画し、学年行事「ちぎり絵」が開催されました。「楽しむときは楽しむ」といった豊島岡生らしさを見せてくれた当日の様子と運営委員・先生の声をお届けします。
※学年は取材時(2022年2月)です。
Report
高校2年学年行事「ちぎり絵」
生徒たちの様子

各クラス内で6~8グループに分かれて作ったちぎり絵をつなぎ合わせて、一つの巨大画にすることが今回の目標です。ベースとなる下絵は同学年の生徒が描いたもの。60ブロックに区切られた絵のバルーンやビルは、クラス内のグループだけでなく、他のクラスとも分割さています。用意された色紙は4000枚。シンプルな下絵だけの大きな模造紙に、生徒たちはどのような世界を作っていくのでしょうか。

見本絵に忠実な色や形を目指すグループ、単色でベースを作り上からアレンジしていくグループ、まずは色紙をちぎって下絵に置いてから慎重に貼り付けていくグループ、見本絵の色を全く気にせずに自由にアイデアを形にしていくグループなど、同じちぎり絵であっても各グループの表現方法は異なっていて個性的。アイデアを出し合い、工夫をこらして、カラフルな世界を作り上げていきます。2時限内という時間制約があり、運営委員からは「あと〇分!」「急げ!」という指示が出るクラスもありました。

\ 制作中の生徒の声 /
生徒アイコン私たちは建物部分を作っています。複雑に色を混ぜるという冒険をしてみました。正直、目立つところではないので、色の統一感はわざとなくして遊んでいます。目立たないのですが、カワセミもいます(笑)。
生徒アイコン制作は順調に進みました。私たちは右上の建物部分です。同じような色を組み合わせることできれいに仕上がってきました。満足しています!
生徒アイコン私たちがこだわったのは窓のグラデーション。見本では寒色系ですが暖色系にして、自由に個性を出しました。他のクラスはもっと話し合っているようですが、仕上がりが良ければすべてOKだと思います。分担作業で、時間内の完成を目指します。
生徒アイコン最初に、「空にハートを作りたい」となりました。配色とデザインは難しいですが、学年のみんなの優しさを表現しています。自分たちの思う色と形で突き進めて満足です。
60ブロックに区切られた絵のバルーンやビル

各クラスから集められた60枚の絵を講堂のステージに並べただけで、圧倒的な色の強さを持ったちぎり絵が見えてきました。運営委員が縦6枚、横10枚を貼り付けたものの、巨大になって重さもあり、ポールに吊るすのもひと苦労。学年全員の思いがこもった作品を破損しないように、1枚の絵として完成するように、運営委員たちは慎重に最後の作業に取り組みます。

最後にステージ上にあらわれた巨大なちぎり絵は、下絵の落ち着いた印象とは異なる豊かで元気な色彩にあふれ、アイデアが散りばめられていました。柏と梅に鳩をあしらった豊島岡の校章、空やビルの窓にハートなど、ユニークで遊び心に富んだ創作が随所に見られ、鑑賞する生徒たちも探索を楽しんでいます。 制約にとらわれず、自由に楽しみ、工夫しながら学年全体の協同作品として、独自のちぎり絵を作り上げた生徒たち。楽しむことも全力投球。そんな豊島岡生らしさを感じさせてくれました。

Students Interview
楽しみだった修学旅行の中止自分たちでやるしかないと思えた代替行事

修学旅行の代替行事として開催された今回のちぎり絵では、学級委員長から有志が集まり、運営委員として活動しました。
全員が楽しめ、思い出に残るものを作ろうと尽力した7名。その思いを伺いました。

皆の中にあった
「制限された中でも楽しめるものを」という強い気持ち

― 代替行事の運営委員として活動を始めることになった経緯、それぞれの思いを教えてください。

運営委員がわかりやすく指示各クラスでは運営委員がわかりやすく指示

R.I.さん 修学旅行中止の確定を聞いたその日に、代替案を行うことを決意しました。修学旅行は皆が一番楽しみにしていた行事だったので、「自分たちで何かやるしかない!」と思ったのです。周りに声をかけたところ、「学級委員長を巻き込んで、ひとつのものを作っていこう」という案が出て、そこから運営委員が始動しました。学年の学級委員長や副委員長はだいたいが顔見知りですから、声をかけるとすぐに賛同してくれました。「制限された中でも楽しめるものを」という強い気持ちが皆の中にあり、すぐに団結できたことは良かったです。
それぞれに人脈も得意分野もあり、その能力と強みを活かしたことで実施できた行事でした。私たちが必死だっただけに、クラスの人たちとの温度差は不安でしたが、当日は全員が楽しみ、満足してもらえたのではないかと思います。周りの人たちに助けられ、仲間で支え合えた学年行事になりました。

K.K.さん声を掛けられた時に「自分たちでやるの?」と驚いたのですが、やるなら学年一人ひとりの意見をできるだけ反映した思い出に残るものにしたいと思い、クラスの皆にやりたいことを聞き、運営委員に持ち寄って議論してきました。ただ、できないことも多く、悩んだことは多かったです。運営委員自体は楽しく、コミュニケーションをたくさん取りながら進めたので仲は深まりました。

R.C.さん私は2学期からこの運営委員に入りました。最初は周りが優秀で気遅れしたのですが、R.I.さんが「どうせやるなら本気でやろう」と言ったことに共感して、優秀な皆のように私もなりたいと思って頑張りました。

T.N.さん元からノリがいい学年ではあるんです。でも、生徒主体の学年行事は今回が初めてでした。私も2学期から参加して、思いもつかないような話が飛び出し驚きましたが、皆が優しくて、私が意見を出したら熱心に聞いてくれるので、その嬉しさからもっと頑張ろうと思えました。

M.K.さん修学旅行の中止がとても残念だったので、運営委員に参加できたことが嬉しかったし、何回も重ねた話し合いの結果を形にすることができて良かったです。

H.N.さん私は直前まで文化祭の運営委員長をやっていて、制限がある文化祭で生徒がどれだけ楽しめるかを考えていたので、その経験を学年行事でも活かせるように心がけました。内容が決まらなかったときは方向性を確認し、できるだけまとまるように努めました。

A.T.さん私のクラスは皆が一緒に盛り上がろうとしていたので、忙しくはありましたが準備は楽しかったです。運営委員は行事を成功させたいと強く思っていて、そういう仲間で活動したからこそ実現できたのだと思います。個人的にも良い経験になりました。

0を1にも2にもしよう!
その姿勢が豊島岡生らしい

― 盛り上がったちぎり絵学年行事の感想をお願いします。

吊り上げるのに苦心クラスの作品をひとつにして吊り上げるのに苦心

H.N.さんクラスメイトとの温度差が不安でしたが、始まってみると前向きに意見を出し合い楽しみながらちぎり絵を進めてくれました。講堂で完成品を喜んで見ている様子からも皆の満足感が伝わりました。

M.K.さんちぎり絵を見ると、各班の個性を出したきれいな色使いがたくさんあり、最後に講堂で作品を見た時は予想以上の仕上がりでした。全員で作れたことに感動しました。

T.N.さん皆、和気あいあいとやってくれましたし、完成作品を見てすべての努力が報われたと思いました。

R.I.さん正直なことを言うと、私は皆の芸術センスを疑っていたんです(笑)。だからR.C.さんが塗ってくれた原画の通りに再現できることすらあやしんでいましたが、杞憂に終わりました。皆の個性の豊かさに驚きました。見本があるものを工夫して、0を1にも2にもしようという姿勢が豊島岡生らしいと思いました。

R.C.さん制作時間中は、折り紙が足りなくなったり、終了20分前でも5分の1ほど残っている班があったりして不安でしたが、講堂でつなげた全体絵を見たときは、最高に感動しました。

K.K.さん皆が真剣にこの行事を楽しんでくれて、話し合いながらより良いものを作ろうとしていて、とても嬉しかったです。緞帳が上がって絵が見えた時は、皆から感動が伝わって来て、学年行事を実施できて良かったと思いました。

A.T.さん皆で何かをすることがなかなかなかったので、とても楽しかったです。準備は大変でしたがクラスで作ったちぎり絵をつなげて一つのものを作ったことに感動しました。

ちぎり絵は記念の缶バッジちぎり絵は記念の缶バッジにして全員に配布された
全力で楽しむことができる
人たちが豊島岡にはたくさんいる

― 今回の学年行事には、自分たちで代替行事を開催する行動力、意見やアイデアを出し合ってまとめる力など、普段からやっている豊島岡の幅広い学びの良さがあふれていたように思います。学年行事を通して感じた豊島岡の良さはありますか。

K.K.さん私は高校から豊島岡に入学しました。入学前のイメージは勉強ばかりしているお堅いお嬢様集団だったのですが(笑)、いい意味で他人に干渉しすぎず、自分をしっかり持っている人たちでした。特に今回感じたことは、限られた時間の中でやる時はやって結果を出せること、全力で楽しむことができる人たちがたくさんいることでした。そんな周りの人たちから自分も好影響を受ける機会が多い学校です。

R.C.さん豊島岡の魅力は友人の長所や特技を認められるところです。今回の学年行事では各班で何が得意かを考えて、ちぎり絵の場所を割り振りました。各班もそれを理解して、それぞれの得意を活かして制作してくれました。お互いを理解できているのは日々の成果です。

R.I.さん豊島岡の良さは、楽しむ時は楽しむというスイッチを入れられるところです。メリハリをつけられるのは、普段の生活も影響しています。時間を守る大切さは中学1年の頃から言われてきましたし、メリハリをつけられるすごい人がクラスの中に何人かいて、その人たちを見習うと自分もメリハリをつけられるようになっていきます。

T.N.さん豊島岡は、挑戦させてくれる機会がたくさんあり、結果を出すすごい人がいて、その人たちに触発されるんです。以前なら私も「自分なんか…」と思って学級委員長は絶対にやらなかったと思いますが、触発されてやってみたら、挑戦する楽しさを知り、いろんなことに手を出し始めています。今回の運営委員もそういう人たちでした。

M.K.さん私も豊島岡に入ってから、生徒会活動にも関わり、いろいろなことに参加したいと思えるようになりました。そういう挑戦や参加できる場があるのが豊島岡で、今回の学年行事の運営委員もその1つです。1学年に約300名ものいろいろな個性を持った人がいて、さまざまな刺激を受けられるのも良さだと思います。

H.N.さん計画を立てて物事に取り組むのが豊島岡生です。楽しいことだけでなく、勉強も計画を立ててテストに向けてやっています。目標に向かって、自分で考えて行動できるようになったのは豊島岡の日々の生活から身に付いたことです。

A.T.さん今回はいつもの学業とは関係なく芸術センスが必要で、私にはあまりないものです。でも、やってみたら楽しいと思えて、自分が得意としているテリトリー以外にも挑戦すると得るものがあると気づきました。そういう機会をもらえるのは豊島岡の良さだと思います。

― 今、豊島岡と同じように行事が中止になる学校も増えています。今後の後輩も同様かもしれません。諦めずに自分たちで行動を起こし皆さんだからこそ伝えたいメッセージを最後にお願いします。

R.I.さん外部のいろいろな活動やイベントに積極的に参加するなかで思ったことですが、どの学校の人も「私たちの学校は先生が優しいです」とか「周囲にサポートされています」と言いますが、全部が受け身のように感じます。豊島岡でも先生はサポートしてくれますが、まずは自分からつかみに行くというステップが大事で、自分が行動しないとその先に未来は広がらないと思っています。ですから、修学旅行が中止になったと諦めて自分たちの未来は楽しくないと思って留まっているなら、それはその人の責任。自分が楽しい方向に進みたいと思うのであれば、まずは勇気をもって一歩踏み出してみることが大切です。先生に相談するなり、親に伝えてみたりして、自分の人生は自分で切り拓いていく。その主体性を持つことが、今後の私達には求められていると思います。

Teacher Comment
協同作業を鍛えてきた高2だからこその作品 高校2年 学年主任 菱沼洋介先生

2021年度は、5月に修学旅行の中止が決定しました。早い段階で中止と判断すれば、そこから代替行事を企画することが可能です。結果、遠足、朗読劇の鑑賞を実施してきまして、ちぎり絵が3つ目の代替行事になりました。
中止決定後に生徒から「自分たちで何かやりたい」と学年行事開催の提案がありました。ただ、生徒の企画は学校のルールやコロナ禍の現状と折り合いがつかず、企画決定までには紆余曲折がありました。生徒と何度も話し合いを重ね、2学期の初めに各クラスでの制作物を合わせて一つの大きな作品を作ることに決まり、最終的にちぎり絵での作品制作になりました。
運営委員は、話し合いのたびに議事録を取り、Classiで情報共有しながら進め、意見も積極的に出し合って、自分たちで行動していました。気付いたら企画が大きく進んでいたことも多かったです。
完成までは不安しかなかったですが、完成作品は生徒それぞれの発想を自由な形にした、実はユニークなものが隠れている素晴らしいものになりました。見本とは違っていても、隣のクラスと合わせる必要がある箇所は合わせて、どこが大切かを見極めながら自由に制作しているところには感心しました。普段から協同作業を繰り返し、今まで鍛え上げられてきた高2というのも大きいでしょう。学習以外であっても意見を出し合いまとめる力がついていることを実感させられました。
今回の作品は、記念撮影したものを缶バッジにして配ります。運営委員以外の生徒にも楽しかった思い出の一つになってくれたらいいですね。