帝塚山学院泉ヶ丘中学校・高等学校

“新しい時代”を生き抜くための「社会人基礎力」を中学から育む!

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帝塚山学院泉ヶ丘中学校・高等学校 “新しい時代”を生き抜くための「社会人基礎力」を中学から育む!
経済産業省が提唱する「社会人基礎力」を養うために「確かな学力」と「表現力」の育成に力を入れる帝塚山学院泉ヶ丘中学校高等学校。特に「表現力」の育みにおいては、中学の総合的な学習の時間を活用した実践的なプログラムで“未来を生き抜く力”の素養を高めます。中1では「群読」を通じて自分を表現する力の土台を形成。その後、中2・中3で段階的に「PBL(Project-based Learning)/問題解決型学習」のステップへ。そうした教育の詳細を担当の先生に語っていただきました。

\「社会人基礎力」のベースになる/「表現力」を育む中学校の取り組み
PBL/問題解決型学習のスキルアップにつなげる!
担当教諭に聞く!Part.1 中1編  自ら表現する土台を「群読」で養う 「群読」指導担当 濱島 康子先生
担当教諭に聞く!Part.1 中1編  自ら表現する土台を「群読」で養う 「群読」指導担当 濱島 康子先生
心と発話の表現を一致させる

― 「表現力」を育む教育の中で、「群読」の位置づけを教えてください。

濱島先生本校では中学入学後から将来を見据えた「社会人基礎力」の育成を目指し、「確かな学力」と「表現力」を養う2本柱の教育で生徒を導いています。「確かな学力」は各教科の授業が充実していますのでそこで力をつけ、「表現力」は総合的な学習の時間や学校行事を通して中学の3年間でじっくり培います。その中で、中1で取り組む「群読」は自分自身を表現する土台を身につけるために行います。

― 「群読」で培う“自らを表現する力”とは、具体的にどのような力ですか。

濱島先生まず挙げられるのが音声言語能力です。「群読」の授業では必ず発声基礎訓練を行いますので、確かな滑舌や相手に届く声のボリューム感が鍛えられます。そこから自分の気持ちを表現していくのですが、その時に重要なのは自らの感情と発話を正しくコントロールできるようになることです。
例えば、誰かに対して怒りをぶつける時は大きい声やパンチのある声、人に何かを尋ねたりお願いしたりする時は優しいトーンの声を使い分けますよね。「群読」は詩や小説などを通じて言葉の中にある喜怒哀楽を理解しながら朗読しますので、まさに心と表現力を一致させる効果が期待できます。

― 個人で行う朗読と「群読」ではどのような違いがあるのでしょうか。

濱島先生「群読」も朗読の一つですが、大きく異なるのは“みんな”と一緒に楽しみながらできるところです。昨今「個」を大事にする風潮もあって、普段の生活の場でみんなと何かをする、声を合わせるといった機会が以前より少なくなっていると感じます。その点でいえば「群読」はみんなと一体感をもって行うものですから、たとえ一人ひとりで考えていることが違っていても、同じ言葉を口にすることで不思議と全員の心が一つになり、同じ目標に向かう気持ちも芽生えます。本校の校長は「舞台が人を育てる」という言葉をよく口にしますが、「群読」はまさにそれを体現するものです。

立ち居振る舞いも成長する

― 「群読」の授業では、どのようなことを心掛けて指導されていますか。

濱島先生「群読」は喜怒哀楽を表現する中で時には演じたりする場面もあるので、あらかじめ作品の文脈を理解して臨む必要があります。ですから、単に「声を大きく出しましょう」という指導に終始していては表現力を鍛えられません。どんな言葉にも必ず意味や意思がありますからそれを理解し、作品を「群読」する時に自分の気持ちと表現力を一致させることが大事です。その点を特に気をつけて指導しています。

― 計10回の授業が行われた1学期で生徒たちはどのように成長しましたか。

濱島先生入学したばかりの4月は生徒同士がクラスの関係性をまだ築けていない状態でしたから、みんなで声を合わせる時はお互いが様子見をしていました。しかし、レッスンを重ねていくと一体感が出始め、「この授業は楽しい!」という生徒の気持ちが表情にあらわれるようになりました。キラキラ輝いている生徒がいれば周りは必ず刺激を受けますので、全員の声が自然に大きくなりはつらつとしてきました。

― 7月に実施された校内発表会の感想は?

濱島先生ピシッと背筋を伸ばして舞台に立つ生徒たちを見て感動しました。昨年はミスしてしまった時に恥ずかしくて笑ったり、うつむいたりする生徒もいましたが、今年は全員が最後まで堂々としていました。パブリックの場で求められる態度をしっかりわきまえていて、そうしたことも本校が目指す「社会人基礎力」につながるものだと感じます。

自分を正しく伝えられる大人に

― 2学期以降はどのような目標をもって「群読」に取り組むのでしょうか。

濱島先生次は学年末に堺市南区にある『ビッグ・アイ(国際障害者交流センター)』の多目的ホールで「群読」発表会を行います。保護者の方々も来場いただく規模の大きな場ですので、生徒たちも、私たち指導する側ももう一度気合いを入れて2学期以降の練習に臨みます。

― 生徒の力をより引き出すために、新たに考えている指導はありますか。

濱島先生「群読」は作品によってはソロのパートが重視されるシーンがあります。1学期の校内発表会でパートを決める時、本当はソロに挑戦したいけれど自分から言い出せなかった生徒がいました。そうした生徒の前向きな気持ちにフタをしてしまわないように、2学期以降は全員がチェレンジできる仕組みを作り、どの生徒もしっかり輝いてほしいと考えています。

― 最後に「群読」をきっかけに羽ばたく生徒たちにメッセージをお願いします。

濱島先生自分の言葉で、自分の考えを正しく伝えられる大人に成長してほしいと願っています。言葉がもつ力は強く、一人の言葉によって誰かが救われることもあれば、時には相手を傷つけてしまうこともあります。確かな表現力を身につけ、自身をもって相手とコミュニケーションをとることができるように、「群読」で一緒に頑張りましょう!

群読発表会レポート

中1生・約160人が参加して7月に行われた「群読」発表会。実施場所は校内上階の文化ホール。1クラス/2グループ×4クラスの計8グループが優勝を目指し、いざ舞台へ。

舞台で「群読」を行う生徒たち。どのグループも日頃の練習の成果を余すことなく発揮。欠席者が出たグループはそのパートを仲間がフォローし、絆の強さで困難を乗り越えた。

校内の実施であってもそこはパブリックの場。待機する時、檀上する時、退場する時も凛とした態度でマナーを守れるのは、自分を律することができる泉ヶ丘生の素晴らしさ。

最後は審査員を代表して校長先生が登壇。優勝を果たしたグループの代表者に表彰状を手渡した後、生徒全員に向けて称賛の言葉と今後の期待を込めたエールを送り、無事閉会。

2022年度・校内「群読」発表会の作品
近・現代詩初恋(島崎藤村)サーカス(中原中也)朝のリレー(谷川俊太郎)雨ニモマケズ(宮沢賢治)
古典徒然草/第五二段(兼好法師)外郎売(歌舞伎演目)論語(孔子)枕草子/第一段(清少納言)
担当教諭に聞く! Part.2 \中2・中3編/ 「PBL」につながるアプローチを段階的に
担当教諭に聞く! Part.2 \中2・中3編/ 「PBL」につながるアプローチを段階的に
考える・調べる練習を中2から

― 中2・中3の総合的な学習の時間では、どのような取り組みを行うのでしょう。

金先生中1の時と同様、「表現力」の育成を通じて「社会人基礎力」を育むことに変わりはありません。中2になると「PBL(Project-based Learning)/問題解決型学習」の第一歩として、まず個人レベルによる調べ学習からスタートし、そこから班やグループでの取り組みを段階的に実践していきます。

― 中2では具体的にどのような調べ学習からスタートしますか。

金先生中2では自ら問題意識をもって課題を設定することから始めます。中3の6月に研修旅行で北海道を訪れますが、中2の段階では旅の行程や現地でどのような学びを修めるのかといったことを考え、調べて、皆の前で発表します。いわば「PBL」の初歩的なトレーニングといえる学びです。

― 中3になるとさらに深く「PBL」を実践していくのでしょうか。

金先生その通りです。中3ではグループワークの形で具体的により大きなテーマに向き合います。例えば、社会問題になっている食品ロスの課題であれば、それをどのように解決できるかを食堂のメニューを通じて考えたり、人々の健康をテーマにするのであれば誰もが気軽に楽しめる新しいスポーツを自分たちで考案したりします。

つながりをもって学ぶことが大事

― 「社会人基礎力」に結びつく「表現力」の育みで学校側が重視していることは?

金先生やはり中1から中3まで“つながり”をもって学ぶことが重要だと考えています。生徒が様々な体験をすることは確かに大切ですが、それを各学年で完結させてしまっては意味がありません。本校の場合、中学の間に「社会人基礎力」を育むという明確な目標がありますので、その力を中学3年間の総合的な学習の時間でどう系統立てて培うのか、また、中1で身につけた力を中2の学びに、中2で培った力を中3に、どのようにつなげていくかを常に考えて生徒たちを導いています。

― 中学で培った力は高校からの学びにもつながるのでしょうか。

金先生もちろん中高一貫校ですからそこは意識しています。ただ、本校は進学指導特色校であるため、高校からはもう一つの柱である「確かな学力」をより定着させていかなければなりません。ですから、高校での「表現力」の育成は中学のようなやり方ではなく、中学の3年間で培った「表現する力」や「調べる力」をもとに、個々で興味をもったことを探究していく形でもよいと考えています。そこから「もっと究めたい!」という気持ちが芽生えれば、目指す学部や学科が見えてきますし、総合選抜型の大学入試にチャレンジする選択肢も出てくると思います。

自ら行動できる生徒が増えた

― 先生は泉ヶ丘生にどのような特長やカラーがあると感じていますか。

金先生総合的な学習の時間を活用して「群読」からスタートする一連の「PBL」を充実させたことで、確実に生徒たちの自主性や主体性が伸びています。他のことに取り組む時も、例えばボランティア活動に、積極的に協力してくれる生徒が増えました。また、教員と生徒の距離感もぐっと近くなり、授業以外の場でも気軽に話をしながら人間関係を上手く築ける生徒が増えてきたと感じます。

― 先生にとっても新たな気づきを得られる機会が増えたのでしょうか。

金先生それも実感しています。先述した中2の調べ学習の時、旅行会社の方から企画の立て方をレクチャーしてもらうのですが、そうした場でもたくさんのことを学ばせてもらっています。また、実際に生徒たちが考えたプランを見て「その発想はすごい!」と感心させられることも多々あります。「PBL」の主役はあくまで生徒ですが、実は教員にとっても新しい気づきや驚きを得られる場になっています。

― 最後に貴校への入学を目指して頑張る小6生にメッセージをお願いします。

金先生本校は進学指導特色校ですので、生徒一人ひとりが「確かな学力」を身につける教育を行うのが大前提です。ただ、社会に出ると学力だけでは通用しないこともたくさんあり、だからこそ時間的にゆとりをもって学べる中学の3年間で「社会人基礎力」を育成することに力を入れています。今回紹介させていただいた「群読」や「PBL」の学びは、実際に取り組むことでその面白さを実感できるものです。ぜひ期待して入学してほしいです。私たち教員と共に楽しく学んでいきましょう。

「PBL」とは?

中2は個人による調べ学習からスタート。1年後の研修旅行の行き先である北海道について各自が旅程のプランを立て、様々な学びのアイデアを自ら企画して発表する。

中3になるとあらためて「PBLとは何か?」という基礎的な講習を8月に実施。これがキックオフとなり、9月から本格的な問題解決型学習が始まる。

2022年度・中3で取り組む「PBL」のテーマ
国際協力研究食品ロス研究ロボティクス×少子高齢化研究アダプテッドスポーツ研究

「PBL」で設定されるテーマは4つ。その中から興味あるものを中3の生徒たちが自ら選び、グループで探究活動を展開。

中学3年 PBLの様子

個人や班で調べ学習、テーマ検討

テーマを選んで班でクラス発表

実験やアンケートを実施(写真は試食会)

卒業研究発表会で成果を報告(スライド)

卒業研究発表会の様子