男子部と女子部の別学スタイルで学ぶ国学院大学久我山中学高等学校。それぞれの特性を伸ばすための教育が、多くの先生方による熱い指導のもと行われています。中高の6年間、家族よりも長く濃い時間を過ごすことになる先生。たくさんの影響を受けることになる先生。いったい、どのような思いで生徒たちを指導されているのでしょうか。
ココロコミュでは国学院大学久我山中学高等学校の男子部の先生に取材して、教育や生徒に対する深い想いをうかがいました。 

“努力することの大切さ”を一人でも多くの生徒に感じてほしい

上原 学先生

英語科担当
高校男子1年担任

教員を目指した理由

人の成長に携わり、その人が成長する姿や実感している
姿を見たい

上原先生
僕が教員を目指したのは、大学時代に所属していたテニスの団体で後輩指導に関わったことがきっかけです。後輩たちが技術的にも人としても成長するところを見られたことが、とても嬉しかったんですね。人の成長に直接携わり、その人が成長する姿、またその人自身が成長を実感し喜んでいる姿を見たい。そういうことを一生続けられないかと考えた結果、教員を目指すようになりました。

この学校ならやりたいことができると思えた

上原先生
地元の広島で英語科教員を3年、その後アメリカに2年留学して、本校に来ました。国学院久我山に決めたのは、「この学校だったら、自分が思うような人の成長に関わることができるかな」と思ったからです。 “努力することの大切さを伝えたい”と思っていて、そのためには勉強だけではなくすべてにおいて全力で取り組める環境が必要だと考え、国学院久我山を選びました。

一つ一つの成長が嬉しい

上原先生
今、教師になって、生徒たちの成長を感じ、彼ら自身が成長を実感して嬉しそうな顔をしている姿を見たときに、やりがいを感じます。小さな成長から大きな成長まですべての成長が、僕にとってすごく嬉しいですね。

上原先生の授業はICTを活用したオールイングリッシュ。生徒は聞き漏らしのないように全力で耳を傾けていた。生徒同士のスピーキング練習の合間も、先生は常に机間巡視をしながら生徒とやり取りをしている。

指導において大切にしていること

努力が報われる環境づくりと成長の発見を大切に

上原先生
指導においては、生徒の努力が報われ生徒が成長を実感することのできる環境づくりを心がけています。努力を報える環境づくりができるように、一度教師をやめアメリカに渡り、自身の英語に磨きをかけるだけではなく英語をどのように教えるかを見つめ直したりもしました。英語を話せるようになるには実際に話し、聞けるようになるためには実際に聞くことが大切なので、授業中にできるだけそのような機会を設けられるようレッスンプランを工夫しています。その中でどんなに小さな成長でも見つけ出し、生徒に1つでも多くの成長を実感してもらいたい。そして、そこで得た自信を英語だけではなく様々な場面での成長につなげてもらいたいです。

久我山の環境

自身をコントロールする習慣を身につけ、目標達成へ

上原先生
目標の舞台でパフォーマンスする時間は、生活の中でごく数パーセントです。そのため、その大半を占めている普段の生活から自身をコントロールできるようになれば、力を発揮したいプレッシャーのかかる本番でも自然と自身をコントロールができるようになると思います。この学校には勉強、部活動、生活のすべての場面で自分と向き合える環境が整っており、そんな環境の中久我山生は来たる夢舞台で輝けるよう普段から自身を律し、何事にもきちんと取り組めるようにしています。

生徒にとっての自分の存在

自分を超え、先を目指し成長してほしい

上原先生
生徒たちにとってお手本となれるような行動をとりたいと思うとともに、最終的には僕を乗り越え、さらなる高みを目指していってほしいと思っています。その上で、僕自身の言葉と行動を一致させるように気を付けています。生徒たちに対して「こうした方がいいよ」ということを僕自身ができていなかったり、やっていなかったら、生徒は「本当にそうなの?」と思いますよね。言葉と行動が一致していない人の言うことをだれが信用するでしょうか。

受験生へのメッセージ

上原先生
久我山にはひたむきに頑張っている先輩たちがたくさんいます。そんな先輩たちと共に何事においても全力で打ち込むことができる久我山で青春を送りませんか。

“生徒が失敗から学んでそれを超えるその機会を逃さないようにしたい

近藤 秀幸先生

理科(物理)担当 中学男子3年担任
生徒指導部生徒会運営委員会主任

教員を目指した理由

久我山の先生に憧れて物理の教員に

近藤先生
教員を目指したのは、論理的かつライブ感のある授業をしてくれた高校の先生への憧れが大きいです。僕は本校出身で、中高一貫の6年間のうち5年間見てくれた担任から、かなり影響を受けました。授業を含めて自由にさせてくださる先生だったので、楽しみながら自発的に勉強できたし、子どもながらに先生に対して「この人、楽しそうだな」と感じていたんです。そこから教員もいいなと思い始めました。
もともとはその先生の影響で数学の教員になろうと思っていたのですが、最後に物理の担当をしてくださった先生がすごく温かい授業をやってくれて物理にも興味を持ち、物理専攻になりました。好きな授業の先生は、他にももう1人いましたね。
その先生たちの授業の魅力は、一言でいうと「ライブ感」。例えば問題演習の時間も問題を黒板に写すとあとは何も持たずに、生徒とやりとりしながら展開していくんです。特に「どうしてここでこう考えたんだろうね?」「これを解くために、なぜそれを使おうと思ったの?」と問題を解く動機を問うやりとりはすごく面白かった。今、なかなか理想には届きませんが、目指す授業はそのライブ感ですね。意識はしています。

教師は生徒の成長を感じて自分のことのように喜べる

近藤先生
教師になって良かったのは、生徒の長期的な変化を、成長として見て感じることができ、それを自分のことのように喜べることです。僕は中学サッカー部の顧問ですが、1日だけでは成長を感じられません。でも、同じようなことを言い続けていると、ふとしたときに「あれ?この子はこんなにしっかり挨拶ができたかな?」と思うときが来るんです。小さなことでも目に見えて成長がわかったときは感動しますし、教師はそれを生活面でも部活面でも成績面でも多角的に感じられます。だからこそ「成長してほしい」「どうにかしてあげたい」と思いますね。

かけた一言や指導内容で生徒の人生が変わってくる責任

近藤先生
教師という仕事は大変ですが、楽しんでやれていますし、まだまだの部分が自分でも見えているのでやりがいはすごくあります。それに生徒にかけた一言や指導した内容でその子の人生が変わってくる可能性もありますから、責任をすごく感じますね。OBが学校に遊びに来て、自分がかけた一言がその子に与えた影響を話してくれるのですが、嬉しいと同時に悪い影響を与えないように自分の発言に気を付けながら生徒とかかわる必要性を感じます。

ご自身でも話されていた「ライブ感」が伝わってくる近藤先生の授業。撮影に困る程に先生の動きが静止することがない。物体のエネルギーについての授業で、水を1℃温めるために生徒にどうするかと投げかけたところ、「お腹の中に入れる」といった生徒の返答が来て盛り上がった。

指導において大切にしていること

課題を達成することで自己肯定感を得てほしい

近藤先生
指導においては、どのような場面であっても、「考えさせること」を大切にしています。知識を正確にインプットしてアウトプットする能力は、現代ではコンピュータがあるので意味がなく、その知識を使う知恵の部分が重要です。だから我々が教えたものを生徒がどう考えて、どう使っていくのかを大切に、コピーアンドペーストではない問題構築や発問を授業内でも意識しています。
ただ、いつも難しいと思うのが褒め方。今は褒めて伸ばすような教育が奨励されていて、それも一つだと思いますが、全部を褒めても子どもたちは成長しないと思っています。課題を達成したときの感覚を味わわせたいという思いがあって、頑張らないと乗り越えられないぐらいのラインを達成させてあげるようにすると、褒めるよりも自己肯定感が出てくると思います。特に部活の指導ではその考えが強いですね。課題を達成させるためのアドバイスもしますが、たとえ失敗しても前の失敗と違って過程での成長があれば「それはすごいことなんだよ」と話します。
だから僕自身、生徒たちに向けてアンテナは張るようにしていますね。生徒たちは失敗から学んでそれを超えられるようになったときに一番表情が良くなるんですよ。なるべくその機会を逃さないようにしたいと思っています。

久我山の生徒たち 成長の思い出

生徒を細かく見やすい学校。だから声かけもできる

近藤先生
中学時代、数学が苦手で課題からも逃げ、欠席しがちになった生徒がいました。家庭訪問・放課後の面談、放課後に欠席したところやテスト範囲の補講をして、中学を卒業。高校生でめきめきと力を伸ばし、国公立大を目指せるレベルまで成長してくれました。結果的には二次試験で挽回することになったのですが、縁あって6年間担任したその生徒は最後に、「見捨てないでくれてありがとうございました」と言ってくれたんですね。あきらめないで丁寧に教えることの意味、目標を定めた時の生徒の力を感じさせられました。
本校は、いろんな点で生徒を細かく見やすい学校です。小テストも提出物も多く、生活指導も細やかで、生徒を見ることができるポイントが多いんですね。その意味で教員はどこかで気づき、的確に声をかけていきます。先ほどの生徒も時間はかかりましたが、最後の最後に自己肯定感が出てきましたし、6年間を通して成長できたことが本当に良かったと思います。僕としても自分がやったことに対して自信が持てるようになりました。

生徒にとっての自分の存在

ふと思い出してくれる先生に

近藤先生
一言では難しいですが、卒業後ふとしたときに思い出せる人というイメージでしょうか。壁でもあったし、優しくもあったし、面倒も見てくれた先生がいたなと思い出してくれる教員ではありたいと思います。

受験生へのメッセージ

近藤先生
温かい環境の学校です。そういう環境で自分が成長していきたいと思う人は集まれ!(笑)

“サインを出す生徒に意識して近づき話しかけることを続けてきた

浅野 光洋先生

地歴公民科(日本史)担当
高校男子1年担任

教員を目指した理由

感性豊かな子どもたちと向き合い、ともに学べる

浅野先生
教員になった理由は、小学生以来、様々な魅力ある教員との出会いが背景にあると思いますが、一番大きかったのは大学生の時の教育実習経験ですね。人生で初めてのとんでもなくきつい日々を過ごしたのですがすごく充実していたので、教職もいいなと感じました。結果、大学卒業後から36年間ずっと久我山で教えています。最初の頃は地理や世界史も教えていましたが、現在は主に日本史ですね。
教職の魅力は、感性豊かな子どもたちと向き合い、ともに学べることであると思います。生徒がなかなかわからないところが出てきたり、質問が出てきたところを一緒になって調べたり、自分でも新しい発見を感じたりすることがたくさんあって、生徒と共に学びずっと成長していけることに喜びを感じています。学び続けられる教員を仕事にできたことは、すごく良かったと思いますね。

指導において大切にしていること

生徒の興味・関心を引き出すことを大切に

浅野先生
なかなか実践できないことですが、わかりやすく楽しい授業になるように、生徒の興味・関心を引き出すことを大切にしています。最近の授業では、そのきっかけとして生徒に先生役をやってもらっています。例えば高3の演習の授業で、問題を解いたらクラスの仲間に解説してもらうんです。受験生の場合詳しく調べる時間もないのですが、自分が教える立場になると自分がわかっていることとわかっていないことがはっきりするので、その部分の教科書や資料を読むだけで「ああ、こういうことだったのか」となるんですね。それに教えることから意外に興味を示してくれることも多いので、ちょっとしたきっかけづくりとしてやっています。
日本史は暗記ばかりで好きではないという生徒もいます。もちろん最低限は暗記が必要ですが、どれだけ関心を持てるかがその教科に強くなるという意味では大事だと思っています。今、生徒の手元には詳しく調べられるものがたくさんありますし、教科書に出ていないことでも身近な話題から関心を寄せて、それを勉強につなげてくれるといいですね。

自分たちが学校を作るという意識を持ってほしい

浅野先生
今年から弓道部の顧問になりましたが、昨年まではずっと写真部の顧問をやっていました。特に文化部は、自分たちがどうやりたいかを考えさせることが大事だと思うので、撮影会の内容は生徒たちに工夫させるように心がけてきました。また、昨年までは生徒会の担当でもありましたので、文化祭でやりたいことなど生徒のアイデアをなるべく聞いて、できる限りのバックアップをしてきました。ただ、ある意味久我山らしいとも言えますが、最近の生徒は「これは学校では許されないのではないか」と先に考えて抑えてしまう傾向があります。そのようなところに思いを馳せることができるのは社会に出れば大事なことかもしれませんが、中高時代には自由にいろんな発想をして挑戦してみてもいいのではないかと考え、生徒たちが殻を破れるきっかけを作れるように指導してきました。学校として変わらず続くものもありますが、今ここで生活している生徒たちが学校を作るという意識を持ってほしいと思っています。

今日の浅野先生の授業では、藤原氏台頭の頃を学ぶ。先生が一方的に話すというよりは、生徒と掛け合うシーンが多く見られ、キーワードをおさえつつも、「実はね」と資料集に載っていない話も組み込みながら、一つの戦いの背景を詳しく説明する。話の途中でチャイムが鳴ってしまい、「その先が気になる・・・!!!」とつぶやく生徒がたくさんいた。

久我山の生徒たち 成長の思い出

卒業後にも相談に来てくれる喜び

浅野先生
初めて担任をした生徒がなかなか学習について行けなかったとき、毎日プリントを用意して具体的に学習時間や学習内容を考えさせ、実行していくことを見守りました。その後、成績も伸び、希望の大学へ進学、就職先を相談に来てくれたときは成長を感じましたね。他にも大学の史学科に進んだ生徒から専攻を相談され、私が大学時代に専攻していた考古学を薦めたところ、専攻して最終的にはその仕事にも就きました。今は國學院大學の先生で専門家として活躍しています。彼が本校に話をしにきてくれたときに私の名前を出して、「この道に進んだきっかけ」と言ってくれたらしく、そのような話を聞くとやはり嬉しいですね。

生徒のサインに気づき意識して接する

浅野先生
もちろん私も人間ですから、相手が生徒でも「苦手かな?」と思う場合もあります。そう思った生徒こそ、より意識して接するということが、若い頃からずっと続けていることですね。今まで教師を続けてこられたのは、そのような生徒に声をかけ、近づいていったからかもしれません。生徒に話をしてみると、実際は全く違う印象や心情を感じることが多いのです。だからそれも生徒の一つのサインかなと思うんですね。見逃しがちなおとなしい生徒やサインを出してくる生徒には、こちらから声をかけて気持ちを向けるように意識しています。

生徒にとっての自分の存在

いろいろな印象を残せる教員になれたら

浅野先生
私にも自分が生徒だったとき、授業だけに関わらず様々な印象を残してくれた先生方がいます。後々になってそんなことを思い出してもらえるような教員になれたらと思いますね。

受験生へのメッセージ

浅野先生
国学院久我山は男子部女子部と分かれているめずらしい形態ですが、共学校と男子校・女子校の両方を体験できるなかなかおもしろい環境だと思います。男子部の場合、教室では女子の目を気にすることなく、仲間と楽しくできるという声は今年の生徒からも聞こえます。また勉強に集中できる環境が整い、部活動も多く揃います。かけがえのない楽しい6年間を過ごせると思いますので、ぜひ一緒に学べたらと思います。