吉祥女子中学・高等学校

独自の進路プログラムによるキャリア教育

発見!私学力
吉祥女子キャリア教育先生インタビュー進路中学受験私立中学東京女子校

吉祥女子中学校のキャリア教育

吉祥女子中学校の萩原茂教頭先生
創立から77周年を迎え、2007年からは中高完全一貫校となった吉祥女子中学校・高等学校。多様な卒業生を輩出し、近年では半数以上の生徒が理系に進学するなど、個性豊かな明るい生徒が育つことで評価されています。そうした同校の「進路プログラム」や「キャリア教育」に対する考えを取材しました。6年間の学校生活で段階を追って生徒を啓発していく精神や思考とは? 同校での教員歴35年目の萩原茂教頭にうかがいます。

自分のライフスタイルを構築し 自分が将来どう生きていくかを考える

ココロコミュ
御校のキャリア教育は、他にないチャレンジや特長があると感じます。 学校としてキャリア教育をどのようにお考えなのでしょうか。
萩原先生
卒業生あるいは女性で社会に貢献・活躍している人をロールモデルとして、女性の生き方を中心としたキャリア教育を行うことが本校の理念です。昨年、卒業生110名の軌跡を紹介する「羽ばたけ撫子たち」という創立75周年の記念誌を作り、企業・起業系、教育・医療系、公務・法務・マスコミ系、芸術・芸能・スポーツ系に分けて、様々な職業についている30~50代の卒業生を紹介しました。普通なら、そういった記念誌の卒業生紹介には、有名であったり、医者や弁護士などが並びますよね。でも、生徒全員がそのような道には進まない。様々な分野で活躍し、地道に頑張っている卒業生もたくさんいます。本校の生徒たちのロールモデルとして、その人たちは欠かせないのです。今の時代、共働きを前提とした自分のライフスタイルを構築する中で、自分が将来どう生きていくかを考える、それが本校のキャリア教育で大切にしていることですね。
ココロコミュ
確かに、幅広い職業で活躍する卒業生がいらっしゃいますね。
萩原先生
本校では「キャリア教育」ではなく「進路プログラム」と言っていますが、それが30年ほど前から始まりました。当然かもしれませんが、キャリアや進路の話をする時に、普段関わっている教師が話すより、別の人から話を聞く方が生徒への浸透度が違うんですよ(笑)。一番はやっぱり卒業生。今では、高1の時に30歳前後の卒業生が講演に来てくれ、高2では大学、学部、学科別に50人ほどの卒業生が、キャンパス情報を話に来てくれます。文化人を招いた講演会もあります。例えば、『女性の品格』の坂東眞理子さん、『ロボットは東大に入れるか』の新井紀子さんが来てくれました。そういった学校が用意したプログラムに生徒たちが乗ってきて、啓発されて、勉強の目標に対するモチベーションが上がってくる。卒業生が来てくれるのも、自分たちもたくさんの先輩に話を聞いたからだと思います。そういうスパイラルが出来上がっているんです。
多方面で活躍する先輩に啓発され、在校生は自身の将来の可能性を広げて行く。

陽が当たる立場ではなくても 信頼できる人に

ココロコミュ
よく社会での活躍、社会での貢献と言われますが、 これだけ多くの先輩たちのケースがあれば、その意味もわかりそうですね。
萩原先生
これは前校長、現理事長の言葉ですが、「時にはリーダー、時にはそれを後押しする人になろう」「華やかで陽が当たる立場ではなくても、信頼できる人になろう」と言っています。信頼できるというのは、リーダーやそれをフォローする人を問わず必要なものです。社会的に高い地位にある職業の人を人格者だと勘違いしますが、社会の片隅でも自分が与えられた場で輝く人にも人間性が高い人はいます。そういうことを、生徒にはよく言っています。
ココロコミュ
「進路プログラム」では、中1で「環境」、中2で「福祉」、中3で「国際交流・ライフプラン」というプログラムが組まれていますが、これは今活躍している卒業生たちから逆算のうえ設定されているのですか。
萩原先生
そうです。中1では、自分を取り巻く環境の中で一番身近な社会人である親にインタビューします。中2では、福祉とボランティア。これはハンディキャップやお年寄りの感覚を知り、一緒に生きましょうという考え方を学びます。中3では「カナダ語学体験ツアー」へ行くので、それを受けて自分が女性としてどう生きるか、結婚、仕事の両立のことなどを考えます。カナダでは、カナダ人のライフプランや職業観を英語で聞く課題があり、職業観が多岐に亘ることをインプットできるんです。そして自分が目指すものを考え、高1で目標とする職業像の設定から学部学科を選び、高2で大学を選び、高3で実際の受験へ向けての準備をしていく。本校の進路プログラムは、モチベーション重視型ですね。
職業と密接に関係しているだけに、理系志望者は50%を超える。

ロールモデルとなる卒業生が 社会で頑張ってくれている

ココロコミュ
実際にこの「進路プログラム」をやってきた生徒には、育まれるものがあるのではないですか。
萩原先生
本校の生徒には、粘りみたいなものが備わっているのではないでしょうか。受験希望の保護者の方が、学校説明会に「会社にいるあの元気でパワーのあるお嬢さんが通っていた学校を見たい」と言って来校されることがあります。大学の先生も本校へ来ると、卒業生が元気でパワフルだと言ってくれます。ロールモデルとなる卒業生が社会で頑張ってくれているんですね。
ココロコミュ
今、学んでいる生徒たちの今後の理想像を聞かせてください。
萩原先生
今は、仕事と家庭の両立が当然で、仕事での自己実現、家庭での自己実現が大切です。それに結婚しない、事実婚や同性愛などの選択肢もありますから、旧態依然とした結婚という意味ではなく、仕事も家庭も両立して、輝かしい人生を送ってほしいと思っています。卒業後に大学や仕事で挫折を経験したり、離婚する人もいますが、自分がどういう職業であれ、どんな両立の仕方であれ、自信を持って生きて、何かの折には堂々と母校に帰って来てほしいですね。

吉祥女子中学・高等学校の進路プログラム

中1中2中3
環境 福祉 国際交流・ライフプラン
「環境」について理解し、社会と自分とのつながりについて考えます。「福祉」について理解し、社会に貢献する生き方について考えます。「国際交流」についての理解を深めると同時に自分自身の「ライフプラン」について考えます。
● 社会人にインタビューし、身近な人と地域について理解します。 ● 社会人にインタビューした内容を発表します。● ボランティアの人の話を聞き、実際にボランティアの体験をします。 ● 弁論大会で自分の考えを相手に伝わるように発表 する力を養います。● 国際的な舞台で働く社会人から、国際社会の中で仕事をすることの意味について学びます。 ● 海外事情について学習します。 ● カナダ語学体験ツアーで国際交流を学びます。
高1高2高3
職業と学部・学科 大学と学部・学科 大学受験
将来の生き方・職業観を深めて、必要な学問・資格を把握します。学部・学科の内容を調査し、志望の方向性を定め、基本的な学習計画を立てます。卒業生や各種の入試問題を活用し、目標を定めて進路達成を目指します。
● 社会で活躍する卒業生の講演会により、職業についての考え方を深めます。 ● 学部・学科選択のためのレポートを作成します。 ● 高1担任によるパネルディスカッションで、職業 について身近に考えます。 ● 高2からの文・理・芸術系の選択を考えます。● 大学で学ぶ卒業生による講演会により、キャンパス情報や受験に向けての意識を高めます。 ● 志望する大学のオープンキャンパスに参加し、レポートを作成します。 ● 入試情報の活用の仕方を学び、自分の進路目標へ生かします。● 社会で活躍する文化人の講演会により、進路達成の意欲を高めます。 ● 卒業生の「受験体験記」や模擬試験を活用して、入試対策について計画します。 ● 併願パターンの研究とガイダンスにより、自らの能力を高めていきます。