column ココロの特集
いじめ解決後も元気がない子どもへの接し方 ~親ができるサポートと回復のヒント~
子どもがいじめを受けたものの、加害者からの謝罪があり、表面上は落ち着いたように見える。登校もできている。
それでも笑顔が減ったり、些細なことで不安が強くなったり、不眠を訴えたり……。
「もう終わったはずなのに、なぜ?」「いつになったら元気になるの?」
いじめを受けたわが子のその後に、焦りや不安を感じる親も多いのではないでしょうか。
この記事では、いじめの「その後」に子どもの心で起きていることを整理し、親ができる具体的な寄り添い方を紹介します。
「いじめは終わったはずなのに」と悩んでいる方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
それでも笑顔が減ったり、些細なことで不安が強くなったり、不眠を訴えたり……。
「もう終わったはずなのに、なぜ?」「いつになったら元気になるの?」
いじめを受けたわが子のその後に、焦りや不安を感じる親も多いのではないでしょうか。
この記事では、いじめの「その後」に子どもの心で起きていることを整理し、親ができる具体的な寄り添い方を紹介します。
「いじめは終わったはずなのに」と悩んでいる方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
監修:正木大貴[博士(医学)]
もくじ
- この記事のポイント
- いじめが「解決」したように見えても、子どもの心の回復には時間がかかる 親が「いじめの後遺症」からの回復を焦ると、子どもにプレッシャーを与えかねない 親が心がけるのは、回復を急かさず側にいること、子どもの気持ちを否定しない
1いじめが解決したのに、子どもが元気にならないのはなぜ?

いじめが「出来事」としては収まった後も、子どもの心には恐怖や不安、自己否定の感覚が残ることがあります。いわば「いじめの後遺症」ともいえる状態です。
大人が考える「解決」と、子どもが感じる「安心」との間にはギャップがあり、その違いを理解することが、親が子どもに寄り添うための出発点になります。
ここでは、いじめが解決したように見えても子どもが元気にならない理由を、2つの視点から見ていきましょう。
大人が考える「解決」と、子どもが感じる「安心」との間にはギャップがあり、その違いを理解することが、親が子どもに寄り添うための出発点になります。
ここでは、いじめが解決したように見えても子どもが元気にならない理由を、2つの視点から見ていきましょう。
理由①親と子どもで「いじめの解決」の受け止め方が異なる
大人にとってのいじめの解決とは「いじめていた子から謝罪があった」「学校がいじめていた子を注意・指導した」など、目に見える対応が取られた状態を指すことが多いでしょう。
一方、いじめられた子どもにとっての解決とは、それとは別に、「もう自分は大丈夫だ」「もう安心だ」と、心から感じられることです。
そのため大人の目には「何らかの対応があった=解決した」と映っても、子どもにとって、まだ安心しきれていない場合があります。こうした「解決」に対する受け止め方の違いが、親子の間にズレを生むことがあります。
一方、いじめられた子どもにとっての解決とは、それとは別に、「もう自分は大丈夫だ」「もう安心だ」と、心から感じられることです。
そのため大人の目には「何らかの対応があった=解決した」と映っても、子どもにとって、まだ安心しきれていない場合があります。こうした「解決」に対する受け止め方の違いが、親子の間にズレを生むことがあります。
理由②いじめは体験として子どもの中に残る
いじめの記憶は、時間が経てば自然に薄れることはありますが、すぐに消えるものではありません。子どもが元気になれないのは、弱さや気にしすぎが原因ではなく、それだけ受けたショックが大きかったためと考えられます。
いじめは、「恐怖」「恥ずかしさ」「自分はダメなんだという感覚」が一体になった体験です。単なる出来事ではなく、自分の存在そのものが揺らぐような体験として、心に深く残ることがあります。
そのため状況が落ち着いても、ふとしたきっかけで不安がよみがえったり、人の言葉に敏感になったり、「また同じことが起きるのではないか」とおびえたりすることがあります。それは、子どもの心にまだ緊張や不安が残っているサインともいえます。
いじめは、「恐怖」「恥ずかしさ」「自分はダメなんだという感覚」が一体になった体験です。単なる出来事ではなく、自分の存在そのものが揺らぐような体験として、心に深く残ることがあります。
そのため状況が落ち着いても、ふとしたきっかけで不安がよみがえったり、人の言葉に敏感になったり、「また同じことが起きるのではないか」とおびえたりすることがあります。それは、子どもの心にまだ緊張や不安が残っているサインともいえます。
親が「早く元に戻ってほしい」と思うのは自然なこと

わが子が苦しんでいる姿を見て、「早く元気になってほしい」「以前のように笑ってほしい」と願うのは、親として自然な気持ちです。
ただ、回復のペースは子どもによって個人差があります。親が「そろそろ大丈夫だろう」と思う時期と、子どもが安心を取り戻すタイミングが一致しないことも少なくありません。
それは、子どもの心の回復には時間が必要だからです。親がそれを知っておくことが、子どもへの向き合い方を考える手がかりになります。
ただ、回復のペースは子どもによって個人差があります。親が「そろそろ大丈夫だろう」と思う時期と、子どもが安心を取り戻すタイミングが一致しないことも少なくありません。
それは、子どもの心の回復には時間が必要だからです。親がそれを知っておくことが、子どもへの向き合い方を考える手がかりになります。
2回復期に親が“気をつけたい”3つのことは?

いじめの直後だけでなく、「解決した後」の回復期にも、親の関わり方が子どもの心に影響します。励ましのつもりの言葉がプレッシャーになったり、見た目の様子だけで安心してしまい、変化を見落としてしまったりすることもあります。ここでは、回復期に親が特に気をつけたい3つのポイントを紹介します。
「もう大丈夫だから」が、子どもにとってプレッシャーになることがある
「もう終わったことだよ」「気にしなくていいよ」「これから楽しいこともあるよ」。こうした励ましの声かけは、親として自然に出てくる言葉です。しかし、子どもにとっては、「自分の気持ちをわかってもらえない」と感じたり、「早く気持ちを切り替えなければ」と負担になったりすることがあります。なかには、自分の気持ちを抑え込んでしまう子もいます。親の励ましは大切ですが、子どもにつらさが残っているときは、その気持ちを否定せず受け止める姿勢が、子どもの安心につながります。
子どもは、親の前で元気にふるまうことがある
学校に通えている、友達と話している、生活リズムも戻っている。そのように見えると、親は安心したくなりますが、それだけで「もう大丈夫」と判断するのは早いかもしれません。子どもは「心配をかけたくない」「普通でいなければ」と、無理をして元気にふるまうことがあります。しかし、見た目の様子と、心の状態が必ずしも一致しているとは限りません。「元気そうだから大丈夫」と決めつけず、「今の気持ちはどうだろう」と少し慎重に見守ることが大切です。
「いじめられる側にも原因がある」とは言わない

いじめは、基本的に加害側の行為によって起こるものです。たとえ理由を考えたくなる場面であっても「あなたにも原因があったのでは」といった言葉は、子どもの自己否定を強めてしまう可能性があります。子どもが安心して自分の気持ちを話せるように、親は「あなたは悪くない」と伝え続けましょう。どんな場合も、問題があるのはいじめた側です。これは、親として心に留めておきたい大切な前提です。
いじめを経験した子どもは、「自分に原因があったのでは」と感じてしまうことがあります。子どもが「自分が悪かったのかな」などと自分を責めるようなことを口にしたときは、その思いを受け止めたうえで「あなたは悪くないよ」と静かに伝えてあげてください。子どもが話してくれたその場で、丁寧に伝えることが大切です。
いじめを経験した子どもは、「自分に原因があったのでは」と感じてしまうことがあります。子どもが「自分が悪かったのかな」などと自分を責めるようなことを口にしたときは、その思いを受け止めたうえで「あなたは悪くないよ」と静かに伝えてあげてください。子どもが話してくれたその場で、丁寧に伝えることが大切です。
3いじめの「その後」を支える ――親の寄り添い方・5つのポイントとは

では、親は子どもとの関わり方に気をつけたうえで、どのように寄り添えば良いのでしょうか。いじめが解決した後、子どもに必要なのは「今のままの自分でいていいんだ」と思える安心感です。「こうしたら良かった」と正解を教えたり、いじめられた過去を整理したりすること以上に、「ここにいれば安全だ」と思える日常があることが、回復の土台になります。それを意識しながら、親は子どもに寄り添ってあげてください。
(1)質問攻めにせず、ただ側にいることを意識する
元気にならない子どもの気持ちを知りたくて「何があったの?」「今どう思ってる?」と、いろいろ聞きたくなるかもしれません。しかし、無理に話を引き出そうとすると、かえって負担になることがあります。
「話さない」という選択も、子どもにとっては自然な反応のひとつです。うまく言葉にできない場合もあれば、思い出したくない気持ちもあるのかもしれません。その気持ちを尊重することも、大切な寄り添い方です。
特別なことをしなくても、一緒に食事をする。同じ部屋にいる。何気ない会話を交わす。そうした日常の積み重ねが安心感につながります。親の「いつもそばにいる」「話したくなったらいつでも聞く」という姿勢が伝わることが、子どもの支えになります。無理に話をさせないことと、いつでも話せる状態でいること。そんな関わり方が、子どもが安心できる土台になります。
「話さない」という選択も、子どもにとっては自然な反応のひとつです。うまく言葉にできない場合もあれば、思い出したくない気持ちもあるのかもしれません。その気持ちを尊重することも、大切な寄り添い方です。
特別なことをしなくても、一緒に食事をする。同じ部屋にいる。何気ない会話を交わす。そうした日常の積み重ねが安心感につながります。親の「いつもそばにいる」「話したくなったらいつでも聞く」という姿勢が伝わることが、子どもの支えになります。無理に話をさせないことと、いつでも話せる状態でいること。そんな関わり方が、子どもが安心できる土台になります。
(2)子どもが感じたことを「間違い」にしない
「怖かった」「悲しかった」「悔しかった」「情けなかった」など、子どもが気持ちを口にしたときは、その感情をまず受け止めることが大切です。親はつい「気にしなくていいよ」と励ましたくなりますが、子どもが苦しんでいるときは、事実の整理より感情の受容を優先することが子どもにとって支えになります。「そう感じたんだね」「つらかったね」。そんな短い一言でも、子どもにとっては「今の気持ちは間違いじゃないんだ」「つらいと思っていいんだ」と安心するきっかけになります。
いじめを経験した子どもは、「誰にもわかってもらえない」という孤独感を抱えていることが少なくありません。だからこそ、親がその気持ちを否定せずに受け止めることが、子どもの心をほぐす力になります。
いじめを経験した子どもは、「誰にもわかってもらえない」という孤独感を抱えていることが少なくありません。だからこそ、親がその気持ちを否定せずに受け止めることが、子どもの心をほぐす力になります。
(3)回復は少しずつ進むと知っておく

友達と話せた、外に出られた、学校に行けた。そうした変化は、子どもにとって大きな一歩です。その「できた」を、さりげなく認めてあげてください。気をつけたいのは、以前の子どもの様子と比較しないことです。「前はもっと元気だったのに」といった言葉は、たとえ悪気がなくても今の自分を否定されたように感じさせてしまう恐れがあります。
回復は「元に戻る」ことではなく、つらかった体験を自分の一部として受け入れながら「前に進む」過程です。
たとえば「以前の明るい子に戻ってほしい」という思いを持つのは親として自然ですが、子どもはいじめを経験した「今の自分」を生きています。その今の子どもの小さな変化に目を向けることが、回復を支える出発点になります。
いじめの経験をなかったことにしたり、つらい記憶を完全に消したりするのは、簡単ではありません。しかし、安心できる環境の中での穏やかな時間や、人に受け入れられた経験は、子どもの心を少しずつ支えていきます。そうした積み重ねが、回復につながっていきます。
回復は「元に戻る」ことではなく、つらかった体験を自分の一部として受け入れながら「前に進む」過程です。
たとえば「以前の明るい子に戻ってほしい」という思いを持つのは親として自然ですが、子どもはいじめを経験した「今の自分」を生きています。その今の子どもの小さな変化に目を向けることが、回復を支える出発点になります。
いじめの経験をなかったことにしたり、つらい記憶を完全に消したりするのは、簡単ではありません。しかし、安心できる環境の中での穏やかな時間や、人に受け入れられた経験は、子どもの心を少しずつ支えていきます。そうした積み重ねが、回復につながっていきます。
(4)親の落ち着きが、いちばんの安心材料になる
子どもがつらい状況にあると、親も不安や怒りを感じることがあります。しかし、親が子ども以上に動揺してしまうと、子どもは「自分が親を苦しめている」と感じ、自分の気持ちを閉じ込めてしまうことがあるのです。
親が意識したいのは、できるだけ普段に近い生活を保つことと、過度に反応しすぎないこと。そのうえで、見守っているという姿勢は静かに伝えます。子どもの気持ちに寄り添いながら、親自身も「普通」の日常を保つ。このバランスが、子どもにとっていちばんの安心感になります。
ただ、子どものそばで落ち着いていようとすることは、親にとっても簡単ではありません。わが子が傷つけられたことへの怒りや、「もっと早く気づけばよかった」という罪悪感を抱える親も多くいます。
それは当然の反応です。親自身の気持ちも乱れているときは、信頼できる人に話す、相談窓口を活用するなど、親自身もサポートを受けることを考えましょう。
親が意識したいのは、できるだけ普段に近い生活を保つことと、過度に反応しすぎないこと。そのうえで、見守っているという姿勢は静かに伝えます。子どもの気持ちに寄り添いながら、親自身も「普通」の日常を保つ。このバランスが、子どもにとっていちばんの安心感になります。
ただ、子どものそばで落ち着いていようとすることは、親にとっても簡単ではありません。わが子が傷つけられたことへの怒りや、「もっと早く気づけばよかった」という罪悪感を抱える親も多くいます。
それは当然の反応です。親自身の気持ちも乱れているときは、信頼できる人に話す、相談窓口を活用するなど、親自身もサポートを受けることを考えましょう。
(5)いじめからの回復――その先を見据えて
いじめの影響は、気持ちの落ち込みだけでなく、人との関わり方に表れることもあります。
たとえば、相手の顔色を常にうかがう。自分の意見を言えなくなるといった変化です。こうした行動は、子どもなりの自分を守ろうとする自然な方法ですが、長く続くと態度が萎縮してしまったり、人間関係に影響が出てしまったりすることもあります。それでも、安心できる環境の中で信頼できる人との関わりを通じて、子どもは新しい関係の築き方を学んでいきます。
「再びいじめが起きないようにすること」だけに終始するのではなく、今大切なのは、回復に集中することです。子どもが「ここは安全だ」と実感できる場所をつくることが、回復とその後の成長にもつながっていきます。
たとえば、相手の顔色を常にうかがう。自分の意見を言えなくなるといった変化です。こうした行動は、子どもなりの自分を守ろうとする自然な方法ですが、長く続くと態度が萎縮してしまったり、人間関係に影響が出てしまったりすることもあります。それでも、安心できる環境の中で信頼できる人との関わりを通じて、子どもは新しい関係の築き方を学んでいきます。
「再びいじめが起きないようにすること」だけに終始するのではなく、今大切なのは、回復に集中することです。子どもが「ここは安全だ」と実感できる場所をつくることが、回復とその後の成長にもつながっていきます。
4いじめ解決!? よくある質問

いじめが「出来事」としては収まった後の子どもへの接し方について、多くの保護者が疑問や不安を感じるポイントをQ&A形式でまとめました。記事本文と合わせて、日々の関わり方のヒントにしてください。
- Q.いじめが解決したと思われる後も、学校に経過を共有したほうが良いですか。
-
A.
同じことで再度連絡するのは、気が引けるかもしれません。しかし、家庭と学校で子どもの様子が異なることも多く、情報共有は大切です。具体的には、
- 担任やスクールカウンセラーに「家庭での様子」を伝える
- 学校での様子について「気になることがあれば教えてほしい」とお願いしておく
- 年度替わりで担任が変わる場合は、引き継ぎの有無を確認する
こうしたやりとりは「蒸し返し」ではなく、子どもを継続的に見守るための前向きな行動です。
- Q.いじめが再発する兆候にはどんなものがありますか?
-
A.
すべてのケースで再発するわけではありませんが、次のようなサインが見られた場合は、注意深く見守る必要があります。
- 笑顔や会話が、再び減ってきた
- 特定の曜日や時間帯に体調不良を訴える
- 学校に関する話題を避けるようになった
- 持ち物の紛失や破損が起こる
- スマートフォン使用後に元気がなくなる
こうした変化が気になる場合は、担任やスクールカウンセラーに相談してみてください。
- Q.子どもが「もう大丈夫」と言っている場合、それを信じていいですか?
-
A.
子どもが「大丈夫」と言う背景には、「親を安心させたい」「自分でも判断できないが、大丈夫なことにしたい」「つらさは続いているが、どう表現すればいいのかわからない」といった思いが含まれている可能性があります。見極めのポイントは、「大丈夫」という言葉と、日常の行動・表情が一致しているかを見ることです。たとえば睡眠が不安定だったり、好きだったことへの関心が薄れていたりする場合は、まだ心の中に不安が残っている可能性があります。「大丈夫」と言ってくれたことは否定せずにそのまま受け止めたうえで、無理に深掘りせず、日々の様子を見守っていく親の姿勢が、子どもの安心につながります。
5まとめ

いじめの「その後」に必要なのは、子どもを急がせないことです。親にできることは、特別な正解を見つけることではありません。そばにいること、気持ちを否定しないこと、小さな回復を認めること、変化を見守ること、必要に応じて周囲の力を借りること。
「元に戻す」のではなく、「一緒に進む」。その姿勢が、子どもの回復を支えます。
「元に戻す」のではなく、「一緒に進む」。その姿勢が、子どもの回復を支えます。
