2023年5月、長年コーラス部を導いてこられた顧問の柴田由美先生の退任を記念したジョイントコンサートに、コーラス部のOGとともに参加した豊島岡女子学園コーラス部。多くの人を虜にする歌声は、例年各コンクールで高い評価を得、桃李祭でも人気を博していますが、コーラス部の練習時間は放課後の1時間程度と限定的。加えて豊島岡生は学業、行事やイベントと忙しい毎日です。豊島岡のコーラス部で受け継がれているもの、豊島岡のコーラス部だからできることを、現役生、卒業生、3名の顧問の先生にうかがいました。

Teacher
柴田 由美 先生
音大卒業から40年以上豊島岡女子学園一筋の音楽科教諭でコーラス部顧問。 現特別専任教諭。コンクールで常勝の豊島岡コーラス部を育てた。
2023年5月にはコーラス部OGによる『Poppo Musicale(ポッポ・ムジカーレ)』とコーラス部現役生による演奏会が柴田先生の退任を記念して行われた。
Teacher
石井 奈央 先生
豊島岡女子学園音楽科教諭でコーラス部顧問。
同校の卒業生であり、柴田先生に指導を受けたコーラス部OG(元副部長)でもある。
一般大学を卒業後に音楽大学へ進み音楽科教諭になった異色の経歴を持ち、他校でコーラス部を立ち上げた経験も。現在、柴田先生からコーラス部の指揮を引き継ぎ、主な指導を担っている。
Teacher
降籏 みなみ 先生
豊島岡女子学園国語科教諭。
同校の卒業生であり、コーラス部OG(元部長)。
東京学芸大学·同大学院を卒業。大学院生時の2015年より豊島岡女子学園で教べんを執る。
Graduate
立白さん
早稲田大学政治経済学部4年生。
豊島岡女子学園卒業、コーラス部OG(元部長)。 法曹志望で、司法試験に向けて頑張っている。
Student
山田さん
豊島岡女子学園高等学校2年生。
現コーラス部部長。 中学1年からコーラス部で活躍している。理系志望。
豊島岡女子学園コーラス部
部員数
中学生65人 高校生65人 <2023年5月現在>
活動日
水曜・日曜・祝日以外 毎日17時まで

近年の受賞歴

・東京 春のコーラスコンテスト2023 中学校の部(同声) 金賞/高等学校の部(同声) 金賞

・第75回全日本合唱コンクール全国大会 中学 金賞・青森市長賞/高校 銀賞

・第89回NHK全国学校音楽コンクール全国コンクール 中学 銅賞/高校 銀賞・文部科学大臣賞

・第77回東京都合唱コンクール 高校 全日本合唱連盟理事長賞(最優秀賞)

コーラス部OGと
現役生による演奏会を開催
憧れの先輩と同じ舞台に立ち
コーラス部精神を再認識
5月に、コーラス部OGによるPoppo Musicaleと、コーラス部現役生による柴田先生のご退任を記念した演奏会が行われたそうですね。Poppo Musicaleはどのような活動をされているのですか。
石井先生
2013年に「また歌いたい」という声があがってスタートしました。コーラス部のOGから希望者が参加して、常時30人ぐらいで細々と活動してきました。そもそもこのコンサートは2020年3月に企画をしましたが、コロナのために延期の連続で、開催まで3年をかけました。昨年の夏に開催の声かけを再度行い、普段はPoppo Musicaleで活動していない人も含めた大人数で開催したのが今回の演奏会です。
柴田先生
3年前にも卒業生が集まって練習は始めましたが、残念ながらコロナで延期になり、「このままかな」と私も思っていたのです。でも、毎年会場を取ってくれつつ、練習がいつできるだろうと検討を続けてくれて、ようやく昨年の夏に練習を始め、このたび開催していただきました。それは本当にありがたいですね。
立白さん
私は卒業生としてPoppo Musicaleの演奏会に初めて参加しました。現役の時に一緒に歌っていた先輩方、石井先生、降籏先生と一緒に歌える機会はとても嬉しかったです。もともと先輩へのリスペクトが強い部活ですが、尊敬できる方と一緒に同じ舞台で歌えたのは感動的でした。現役生たちからは、「今もあれぐらい頑張らないといけない」と刺激を受けました。練習では遠くから通い、自分の事情は後回しにして参加される先輩たちの姿を見て、これが柴田先生にご指導いただいたコーラス部の精神だと感じました。
降籏先生
演奏会では、いろいろな世代の方からコーラス部についてのお話をうかがう機会がありました。誰もがおっしゃるのが、「柴田先生の指導はずっと変わらないね」ということです。OGに取ったアンケートでの柴田先生の名言1位は、世代に関係なく「聞こえな~い」でした(笑)。例えば歌声が聞こえないときに「アルト、全然聞こえな~い」などとおっしゃるのですが、どの世代もこの「聞こえな~い」を、柴田先生がおっしゃる姿やその声色まで含めて脳内再生できます。それだけ記憶に残る指導だったのだと思います。

もう一点、今回の演奏会で、いろいろな世代、状況、職業の方がいる中で、誰かに仕事を分担する前に「私がこれをやります」と主体的に動き出す方が多いのを見て、「きっとコーラス部で培われた部分が大きいのだろうな」と思いました。
豊島岡コーラス部で
受け継がれてきたもの
生徒主体の体制になって30余年
受け継がれる「タフさ」
幅広い世代のOGがいる豊島岡のコーラス部で、
受け継がれてきたものは何だと思いますか。
柴田先生
生徒主体のコーラス部を作り上げてきたことでしょうか。私がコーラス部の顧問になって41年が過ぎますが、当初は発表の場が文化祭での合唱しかなく、生徒から「外で発表する場が欲しい」と言われてコンクールに参加するようになりました。そうなると、どうしても私が主導のやり方になってしまいます。

ある時に「このままではだめだ。生徒が自ら動いていけるようにしないとクラブは成り立たない」と気づき、できる限り生徒に任せるようになりました。文化祭でも合唱とミュージカルをやるようになり、最初は私がすべてを耳コピして楽譜に書いていましたがそれも生徒に任せ、ある程度回るようになると私が何も言わなくても生徒だけで進めていくようになりました。今の体制になって30年は経っていると思います。
そうして生徒主体のコーラス部体制が
受け継がれてきたわけですね。
柴田先生
指導のために言いたいことはたくさんありますから、大変ではありました(笑)。言う方が私自身も楽になるし、生徒たちも楽になるとは思いますが、そこをあえて我慢することで自主性は育っていくと感じましたし、生徒たちに任せる体制にしたことは良かったと思っています。
OGである石井先生と降籏先生は、
生徒主体のコーラス部という点で印象に残っていることはありますか。
降籏先生
私も「生徒たちで作り上げていきなさい」という世代でしたが、だからといって柴田先生の指導の影響力が弱まることは全くありませんでした。むしろ限られた時間内に来られて「この時間内になんとか成長させる」という気持ちのこもった指導をしていただき、部員には「柴田先生が次に来られるまでに、絶対にこれができるようにしよう!」という意気込みが生まれていたと思います。
石井先生
その意味ではコーラス部で受け継がれているのは、タフさではないかと思います。他のクラブと比べても「大変そうだ」と言われるコーラス部ですが、そこに普段の勉強もあり、学校の様々なイベントもありますから、意欲的でタフな生徒は多いです。それは社会人になったOGたちを見ていても共通しています。
コーラス部での活動を通して、
タフになっていくのでしょうか。
柴田先生

そこは生徒にお任せですが、部活時間は「私たちの時間」という認識で、常に指揮者対部員の真剣勝負です。活動日の練習は17時までの1時間と決まっていますから、練習時間が終わったら生徒たちは全身に張りつめていた空気がシューっと抜けてしまうかのようですね(笑)。でも、その集中する時間があるからこそ、やっていけるのだと思います。

石井先生
コーラス部として、生徒たちが少ない時間内で何ができるかを考えると、タフにならざるを得ないのです。ですから、タフであることが大事で、タフになりなさいという指導をしているわけではありません。大切なのは今の活動をどのような形で充実させるか。それを生徒には常々考えてもらうし、我々も発信しています。
一人一人が主役
刺激し合いながら頑張っていくクラブ
では、現役生の山田さんやOGである大学生の立白さんは、
コーラス部で受け継がれているものは何だと思いますか。
山田さん
私は受け継がれているものは2つあると思います。1つ目が、先ほど先生がおっしゃった主体性です。普段の練習内容も指導も全部生徒が決めて、生徒主体で動いています。生徒を引っ張っていくのも生徒ですから、全員で高め合っていく、全員で頑張っていく場面が特に多いクラブです。それは先輩方も同様で、その姿を見てきたからこそ自分たちも刺激し合いながら頑張ります。

2つ目が集中力。特に冬は毎日1時間も練習ができないので、限られた時間内にどうやってより良くしていくかが大切になります。「今日はここを絶対に良くしよう」と目標を決め、全員で集中して練習に臨みます。17時に絶対に学校を出ないといけないという環境だからこそ、嫌でもついてしまう能力ですね(笑)。
立白さん
「一人一人が主役」という言葉は、コーラス部のモットーとしてたびたび出てくる言葉です。いろいろな特技を持った子がいて、その特技が一人一人違い、それぞれに役割があります。ミュージカルではダンスが上手な子もいれば、絵が上手な子が大道具として活躍します。歌においても主張がある声もいれば、周りを中和させるような声もあります。「一人一人が主役」であることを今回の演奏会で先輩を見ていても感じましたし、豊島岡のコーラス部の特徴として受け継がれていると実感しました。
豊島岡コーラス部の
「楽しさ」とは?
全力を出し切り、皆で歌える
コーラス部の楽しさ·喜び
立白さんが学生時代に受けてくれた桃李祭(文化祭)後のインタビューでは、「自分たちが楽しむことを大切にしてきたから、あの舞台を作れた」とおっしゃっています。ハードなコーラス部での「楽しさ」とは、どのようなことを指すのでしょうか。
立白さん
桃李祭はコンクールがすべて終わった4日後にあり、今まで歌ってきた歌を合唱する集大成でした。最後の舞台という位置づけなので、当時は「楽しい」という気持ちにあふれたのだと思います(笑)。

普段の活動では、私の学年はコンクールの全国大会を活動の目標としていましたから、綿密な練習スケジュールを立て、少年漫画の「友情!努力!勝利!」のような追い込み方をしていました。そのぶんコンクールの後の解放感は大きく、楽しさでいっぱいでした(笑)。
山田さん
すべてに全力だからこそ、終わった時には楽しいと思えます。コンクールで賞をいただけたらもちろん嬉しいですが、いただけなかったとしても全力で頑張ってきた、皆で歌えて良かったと思えます。全員で一つのものを作り上げる喜びがコーラス部にはあり、完成に向かって皆で頑張ってきた日々が楽しさにつながります。
コーラス部での「楽しさ」に対して、
先生方はどのようにお考えですか。
柴田先生
今はコンクールと文化祭が二つの大きな柱になっていて、どちらも重要だと考えてきました。つまりコンクール至上主義ではないのです。普段は練習時間が限られた中でどれだけできるかを生徒たちに試していますが、コンクールではその場を十分楽しめればいいと思っています。勝ち負けではなく、自分たちが楽しめたかどうか。クラブはやっぱりそこが大切だと思いますね。

もちろん練習では、追い込むところはかなり追い込みます(笑)。けれどもそれで生徒がどう出てくるかの感触を確かめながら双方で真剣にやり合っていますし、結果的にはいつも「よく頑張っているな」と思っています。
降籏先生
自分が学生だったときのコーラス部通信で、柴田先生が「コンクールや演奏会といった本番を見に来てくれる人は、演者の苦労を見に来ているわけではなく、輝いているところを見に来ているのだから、本番はそういう場でありたいよね」と書かれていて、私は非常に感銘を受けました。自分もそうありたいと思って、現役の頃は楽しく歌えるといいなというスタンスでやっていたところがあります。

今の私は専門的な知識はなく卒業生というだけなので、顧問や指導者の立場から何かを言うのではなく、生徒と一緒に楽しく歌いながらコミュニケーションを取れたらと思っています。
石井先生
皆が話しているように、コーラス部の根底にあるものは、やはり楽しさと喜びだと思います。歌っている純粋な喜び、皆で歌っている喜び、作り上げる喜び…、これがなければあれほど頑張れません(笑)。「これぐらいでいい」ではなくて、その先にあるものを追求していく姿勢があってこそ、得られる楽しさがあります。それを一度味わった人間には、抜け出せない輪があるのです。

柴田先生のご指導は音楽そのものにも、表現する生徒側にも、決して妥協しないものでした。その姿勢を受け継ぎ、本当の楽しさと喜びを積み重ねられるように、引き続きやっていきたいと思っています。
コンサートで勝つためではなく、 追求した者だけが得られる楽しさや
喜びを求めていくのが豊島岡のコーラス部ですね。
石井先生

コンクールは自分たちの力を磨くことができる、客観的に自分たちのコーラスを見てもらえるという意味で良い場だとは思いますが、やはり切り取られた一つの場です。時折、学外からお誘いいただくコンサートなどいろいろな場で歌う体験を通して、いろいろな曲と出会い、他の演奏を聴くことも大切なのです。二大活動を主軸にしながら、そういうところにも目を開いていくことを大事にしていきたいです。

豊島岡のコーラスは「サウンド」
表現にこだわり、相手に届けることを大切に
コーラス部の練習に
受け継がれていることはありますか。
石井先生
最後の挨拶でしょうか(笑)。
山田さん
「せーの、ありがとうございました!!お疲れ様でした!!」と大声で挨拶します。ちょっと体育会系っぽいです。
柴田先生
その挨拶は私が入る前からありました。活動の最後に部長が「せーの、ありがとうございました!お疲れ様でした!」と言って終わりです。今は少し形が変わって、手をたたき、部長と副部長の2回挨拶をしますね。
技術的に上達するための
練習方法はあるのでしょうか。
柴田先生
自分たちが楽しむだけではだめだ、聴いてくれる相手がいてこそで、相手にちゃんと受け止めてもらえるような演奏をしなければいけないとは常に言っています。練習方法という形では特にないですね。
立白さん
表現に関しては、豊島岡のコーラスは「サウンド」と評されることがあります。それは、柴田先生の歌をお手本にして皆で目指すのが大きな理由だと思います。
山田さん
皆の中に柴田先生の声が存在していて、その歌声を自分の中で再生して目標にしながら頑張って歌います。感覚的ですが、柴田先生の歌声に似せていくイメージです。
柴田先生
これは生徒に時間がないからというのが一番の理由です。音楽的なことは言えますが、中学生と高校生がいて、理論を言ってもわからない人も多い。言葉の捉え方も一人一人違いますから、まずはニュアンスを感じ取ってほしいのです。そのためには噛み砕く必要があり、「私が歌うしかない!」となります。ただ、私の声を真似してほしいと思っているわけではなく、思っている以上のことを返してくれることを期待していますし、生徒がより良いものを返してくれたときは本当に嬉しいです。
降籏先生
指導の際は、ワンフレーズを歌うごとに「はい、止まる。そうじゃない」と柴田先生から声がかかります。柴田先生のすごいところは、目指すゴールもご自身で歌われますが、「今の歌い方はこうなっているよ。こう直していこう」の「こうなっている」の再現度が非常に高い。だから、生徒は「あ、これが違うから直せばいいんだ」というのがよくわかります。
立白さん

柴田先生からは、音楽的な面での指導以上に人間的な成長につながることをたくさん教えていただきました。当たり前ですが、やるべきことをしっかりやる。コーラス部としていろんな舞台に立たせてもらっているからこそ、守るべきところはしっかり守る。コーラス部での5年間に人として押さえるべきことが鍛えられ、今に生きています。

練習も、タフさも、人間的な面での成長も自然に受け継がれてきたものですね。コーラス部として感動させる歌声を届け続けられる理由は何でしょうか。
柴田先生
もしかしたら私自身が成長したのかもしれません。コンクールの本番になっても、あまりピリピリしなくなりました。生徒は本番では何も言われないので、伸びやかに歌えるのかも(笑)。
山田さん
柴田先生にほめられたくて歌っているところも少しある気がします。なかなかほめられることがないので、たまにほめられると皆で大喜びするのです。それが自然と結果に結びついているかなと思います。
石井先生
コーラス部への注目度は、全国大会に出場しているところが大きく、それはありがたいことです。部としては何も変わっていないのですが、成果という点でいえば、柴田先生の指導の伝わり方かもしれません。熟練の域に入って、生徒ともうまく噛み合うようになっているのでは、とも感じます。意欲的な生徒が多いのは以前からですが、より集中力がついていて、部の雰囲気が磨かれている印象があります。
降籏先生

それに、実は皆さんがイメージされるよりも、豊島岡のコーラス部はゆるやかでしなやかです。コンクールの1週間前から行動ルーティンが共有されるというような決まりもありません。自分が学生の頃と比べても、今の生徒たちは忙しいはずなのに、のびのびやっている印象があります。不思議ですが、それが歌にも出ているのかなと思います。

豊島岡女子学園の
コーラス部だからできること
目に見える成果だけでなく
コーラス部の本質を受け継ぎ、進化
今後の豊島岡のコーラス部に
期待することはありますか。
柴田先生
私は私なりのやり方をやってきたので、石井先生には石井先生なりのやり方をやっていただければいいですね。部員の皆はとてもしなやかで柔軟な姿勢を持っていて、集中力もあり、切り替えもできますから、しっかり石井先生についていってもらえれば安心です。
降籏先生
これからも楽しめるところは楽しんでもらいたいし、苦しいときは支え合って頑張ってもらえればと思います。もともと先輩からの影響力が強い部活ですが、後輩は先輩の姿をよく見て、憧れるところは自分たちも受け継ぎ、大変そうなところは自分たちのやり方を考えてほしい。そういう育っていける部活であってほしいと思います。
石井先生
今日、あらためてお話をする中で、良き伝統が培われていることを感じました。それらを大事に受け継いでいってもらえるように、生徒と向き合って一緒に日々活動していきたいと思います。目に見える成果だけでなく、具体的ではない本質も受け継いでいくこと、そして進化していけるようにしていきたいです。
山田さん

私が中1の時から大事にしていたのが、何事も楽しむことです。「練習が楽しい」「部活が楽しい」と皆にも思ってもらえることが一番嬉しいです。私個人としても、合唱を好きで続けられるように、部活をずっと好きでいられるように、残されたわずかな時間を楽しみたいと思います。

立白さん
今振り返ると、中高での部活期間は必死だった分あっという間でした。コンクールや文化祭といったその時しかできないことに全力で向き合い、試行錯誤した時間はとても大切な時間で、家族同然の心許せる関係になりました。それは今も続く、同期との仲の良さにつながっています。つらいこともあると思いますが、仲間と悩みながらも一番頑張ったと思えるところまでやり切ってほしいです。
努力する能力を持った生徒が
存分に発揮できる場がある豊島岡
最後の質問として、このコーラス部が
成立する豊島岡女子学園の良さを教えてください。
立白さん
私は、コーラス部の全国大会の映像を見て、憧れて豊島岡に入学しました。実は2月2日の入試に落ち、同じ年にコーラス部が全国大会·金賞を獲った課題曲「友 旅立ちの時」を、その映像からオーディオプレイヤーに取り込み、号泣しながら聴いて次の入試を乗り切っています。そこまでして入学したかった学校が、私にとっての豊島岡です。そういう目指す場所、憧れの場所であり、憧れの先輩が頑張っている姿を見て影響を受け、先輩に負けないように頑張ろうと自然に成長していきます。
山田さん
私も先輩への憧れは強くありました。それにこの学校は、一人一人のスペックが高く、まじめで、集中力があり、努力家の人ばかりです。やっていないと言いながらも実はしっかりと頑張っている人が集まり、周りにいるからこそ、自然と自分のダメなところを改善して成長できるのが豊島岡の良さだと思います。
柴田先生
私立学校の良さがありますね。コーラス部では高校2年生で引退しますが、5年間同じように歌えるし、同じ先生に指導してもらえます。5年間で豊島岡の声を形成していきますから、その成長が見られる嬉しさもあります。
そして、やはり生徒の質が高い。集中力、持続力、瞬発力もですが、努力する力は能力です。そういった高い能力を持った生徒が存分に力を発揮できる場が豊島岡にはあります。だからこそ、結果としてコーラス部は全国大会まで行けるようになったのではないかなと思います。
降籏先生
日々努力し続けることを厭わない生徒が多いのが、豊島岡の魅力です。そして、年頃もあるのかもしれませんが、周りのことをよく見ている生徒が多いですね。例えば友達がどのぐらい勉強に取り組んでいるのか、授業に対してどのぐらい熱心なのかに非常にアンテナを張っています。その結果、元から素直な生徒が多いので、周りをリスペクトして、私も頑張ろうかなという心意気が合わさって、最終的に自分を成長させていくことができる。そういう環境が豊島岡の良さだと思います。
石井先生
5月の演奏会を行いながら、私自身もこの学校だからこそのコーラス部だな、と感じていました。コーラス部だけではなく、代々の校長先生も言われていて私も大好きな「かわいこちゃん」気質というものが豊島岡にはあり、その影響が大きいのではないかと思います。「かわいこちゃん」気質はコーラス部の生徒たちには浸透していて、周りの人から愛され応援されるには、周りに感謝を持たなければいけないし、わがままになってもいけない。コーラス部が、「すごいね」と言われる存在になっても、その心構えは大切にと柴田先生もおっしゃられてきたと思います。だからこそ周りの生徒たちも先生方も、コーラス部を温かく見守ってくださり、それは本当にありがたいことです。コーラス部だけ、自分たちだけにはならないところが豊島岡の魅力だと思います。