清教学園中学校の理科部は、部員たちが自分のやりたい研究や実験に自由に取り組む、まさに部員主体のクラブです。全国大会にも頻繁に顔を出し、地域や学校のイベントで発表の機会をもつなど、活発で積極的な活動を続けています。ココロコミュではその部活動の様子と、部員そして顧問の先生へのインタビューから、個性あふれるクラブ活動の実態を探りました。
理科部の活動は週5日。平日16時になると、理科室に集まった部員たちは、班にわかれて活動を開始。ロボット班は、出場する大会の規定に合わせたロボット製作に励んで好成績を目指し、実験班は自分が興味を持ったやりたい実験を、個人やチームで続けて成果を出す。全員がそれぞれの目標に向かって試行錯誤をしているけれど、その夢中になっている表情は活き活きとして実に楽しそう。
「材料がいっぱいあっていろんなことできる」「毎日来て楽しい」「先輩がいろいろ教えてくれて知識が増える」「にぎやか!」「実験がすごく面白い」「指示待ち人間じゃなく、自分で何かやっていこうという子が集まっている」「やりたいことはすぐにトライ」など、部員からいくらでも出てくる理科部の魅力。特に共通していたのは、自由だということ。そんな理科部の活動は、ブログやYouTubeでチェックできる。
左)FIRST LEGO League 2016 JAPAN OPEN(全国大会)
右)FIRST LEGO League 西日本大会
右)FIRST LEGO League 西日本大会
WRO(World Robot Olympiad)やFLL(FIRST LEGO League)といった国際的なロボットコンテストや科学の甲子園ジュニア、科学の祭典、サイエンスキャッスルなどの学外イベントに積極的に参加。文化祭、地域イベント、幼稚園出張授業、学校見学会でも実験を披露するなど活躍中。
創部 1968年
部員数
中学57名(中1:31名、中2:15名、中3:11名)
高校45名(高1:15名、高2:16名、高3:14名)
※中高活動別。定期的に中高合同発表会を開催
中学57名(中1:31名、中2:15名、中3:11名)
高校45名(高1:15名、高2:16名、高3:14名)
※中高活動別。定期的に中高合同発表会を開催
実績[中学]
2013年度 FLL(ロボット大会)全国大会出場
2015年度 サイエンスフェスタ関西サイエンスフォーラム賞受賞
2015年度 WRO全国大会出場
2016年度 日本テレビ「所さんの目がテン」出演
2016年度 モデルロケット全国大会パラシュート競技6位入賞
2016年度 FLL(ロボット大会)全国大会出場ベストブース賞受賞
2013年度 FLL(ロボット大会)全国大会出場
2015年度 サイエンスフェスタ関西サイエンスフォーラム賞受賞
2015年度 WRO全国大会出場
2016年度 日本テレビ「所さんの目がテン」出演
2016年度 モデルロケット全国大会パラシュート競技6位入賞
2016年度 FLL(ロボット大会)全国大会出場ベストブース賞受賞
大会に向けてのロボット製作。目指すは優勝!
取材日のロボット班は、数週間後に控えたWROに向けて、チームでロボットをパワーアップ中。大会の競技ルールに沿た理想の動きをするように、アイデアを出し合い、調整に悩む様子の部員たち。「プログラミングがうまくいかない!」「どうしたら高い点数を取れるんだろう?」「速さと正確性のためにはどうすればいい?」「ライン上を完走したい!」。各チームから飛び出した思いが、ロボットの性能を向上させ、本番へとつないでいくのだろう。大会のロボット製作以外にも、文化祭や市民祭りで子供たちを喜ばせるレゴのクレーンゲームを作った部員もいた。
取材日のロボット班は、数週間後に控えたWROに向けて、チームでロボットをパワーアップ中。大会の競技ルールに沿た理想の動きをするように、アイデアを出し合い、調整に悩む様子の部員たち。「プログラミングがうまくいかない!」「どうしたら高い点数を取れるんだろう?」「速さと正確性のためにはどうすればいい?」「ライン上を完走したい!」。各チームから飛び出した思いが、ロボットの性能を向上させ、本番へとつないでいくのだろう。大会のロボット製作以外にも、文化祭や市民祭りで子供たちを喜ばせるレゴのクレーンゲームを作った部員もいた。
やりたい実験に挑戦。疑問を自分で確かめる!
実験班は個人でもチームでも取り組みOK。自分の興味があるやりたい実験をインターネットや本で調べ、わからないときは先輩や先生に相談して実験内容を決めていく。「水気圧を利用したゲーム作り」「円柱形の強さの証明」「光るスライム」「電気分解で燃料電池を作る実験」「光の反射と屈折を応用した蜃気楼作り」など、この日も部室内の各所で全く異なる実験が行われていた。自分が面白いと感じたことを「なぜだろう?」「どうなるんだろう?」と確認していく実験は、どれだけ時間がかかっても失敗しても楽しいとの声が何度もあがる。そうした清教学園の個性あふれる理科部の活動を記録して紹介していく動画作成チームもいた。
実験班は個人でもチームでも取り組みOK。自分の興味があるやりたい実験をインターネットや本で調べ、わからないときは先輩や先生に相談して実験内容を決めていく。「水気圧を利用したゲーム作り」「円柱形の強さの証明」「光るスライム」「電気分解で燃料電池を作る実験」「光の反射と屈折を応用した蜃気楼作り」など、この日も部室内の各所で全く異なる実験が行われていた。自分が面白いと感じたことを「なぜだろう?」「どうなるんだろう?」と確認していく実験は、どれだけ時間がかかっても失敗しても楽しいとの声が何度もあがる。そうした清教学園の個性あふれる理科部の活動を記録して紹介していく動画作成チームもいた。
山本くん(中学3年・部長・ロボット班)
角谷くん(中学2年・副部長・実験班)
角谷くん(中学2年・副部長・実験班)
何をやるかを決めるときが実は苦しい。
自由だからこその難しさがある。
――入部のきっかけを教えてください。
山本くん この学校の理科部は僕が入学する前から結構有名で、ロボット製作をやっているというのは聞いていました。僕はロボットに興味があって、将来機械工学をやってみたいと思っているので、理科部から将来につながればいいなとか、単純に楽しみたいなという思いで入りました。入部したらすごく充実していて、先輩方も高度な技術を持っていていろんなことを教えてくれて、とてもためになりました。
角谷くん 僕はもともと理科が大好きで、実験も大好きだったんです。清教学園の理科部は本当に有名で個性的だったので、自分の個性が一番輝ける場所かなと思って入部しました。自分の個性が生かされているなと感じる場面がありますし、みんなの前でしゃべることが多くて、プレゼン力が少しずつですが身についていると感じます。将来の社会生活でも役立つことが学べているなと思います。
――人数が多く、個人やチームでやりたいことに夢中で取り組んでいるだけに、部長や副部長は取りまとめるのが大変そうですね。
角谷くん はい。みんながうるさい時は叫ぶので、時々のどをつぶします(笑)。
山本くん 僕は理科部として自主的に活動するということを目標としているので、自分から静かにしてほしいと思っているので、前に立ってずっと黙っていたりします。5分ほど待たされるだけで、怒ってしまいますけど(笑)。みんなのやることがひとつなら把握もできるのですが、やっている内容が多岐にわたっていて手に負えないので、まとめるのは難しいです。なるべく見学に行ったり、声をかけたりするようにはしています。
――理科部の楽しさや喜びはどういうところだと思いますか。
山本くん どの部活と比べても、自分の好きなことが一番できると思います。今は班として実験班とロボット班の2つを設けていますが、それ以外に作ることも大歓迎で、やりたいことがあれば作れます。ただ、何をやるかを決めるときが、実は苦しかったりするんですけどね(笑)。小学校の自由研究みたいなもので、「何をしたらいいの?」と悩む部員もいるのですが、そのときは手を差し伸べるように心がけています。自由だからこその難しさがあるんです。そこを先輩たちがカバーしていくことが、大事になってくるクラブだと思います。
角谷くん 実験や研究はコツコツやっていくものなので、発表する時は達成感が大きいんです。理科の面白さや楽しさを、校内や学外の人に発信していくことも実験班の喜びです。
山本くん ロボットに関していうと、作り方を先輩が後輩に全部教えてしまうとダメなんです。それぞれが考え、発見しつつ、もしわからなくて迷っているなら助けるということを意識しています。ロボットは結構難しく集中力も必要なので、ロボット班から実験班に変わる人もたくさんいます。反対に実験班からロボット班に変わるのも自由です。
角谷くん 実験の難しさは時々失敗してしまうことです。でも、失敗は成功のもとだと思って、何がダメだったのか、どうすればいいのかを考えて、次の成功に向けてやっていきます。
自由をプラスにするか、
マイナスにするかは、部員次第
――以前、池宮先生を取材したときに、「理科部ではこんなことをやりたいという希望が出ればすぐにGOサインを出す」と仰っていました。池宮先生はどんな存在ですか。
山本くん 池宮先生が一言くれるだけでみんなのやる気が上がりますし、「もっとやらなあかん!」となります。こうしろという命令型ではなく、もっとこうしたらどう?というアドバイス的な一言が多いですね。それに対して、一人ひとりがより良い結果を出そうと頑張るので、問題もあまり起きないです。
角谷くん 池宮先生がいなかったら、理科部が崩落して部員もだらけて、今の自由さが悪い方にいって理科部として成り立たなくなってしまうと思います。池宮先生が自由にさせてくれていることを、プラスにするのか、マイナスにするのかは、部員次第で決まります。
――自由で個性にあふれる理科部ですが、理科部員ならではのエピソードがあれば教えてください。
山本くん 理科部としての雰囲気がありますね。みんな自分の意志を持つことを意識しているところがあって、うちの学校では前で話す機会が多いのですが、その時でも言葉がしっかりと出て自分の意見が言えているなと思います。理科部員は、大会とか中高合同発表会という交流の場など、前に出ていく機会が多いのでプレゼン能力が高くなっていくんです。
――教室の中で実験やロボット製作だけをしているわけではない?
山本くん 閉じこもって自分の研究に没頭しているだけではないです。外に出ていくことも多いです。
――では、理科部に興味のある小学生たちにメッセージをお願いします。
山本くん 今、自信がなくて、不得意があったり、人間関係で困ったりしていても、理科部に入ればそのうち慣れて、一通りできるようになっていきますので、ぜひ入部してもらえればと思います。僕も最初はロボット初心者でしたが、ここまできました(笑)。
角谷くん 理科部に入ると、プレゼンテーションをしたり、パワーポイントで資料を作ったり、今後の社会で役立つことがたくさん得られます。また理科部は個性的な子が多くて、話していても、一緒に作業していてもおもしろいです。
――部としての今後の目標は?
山本くん いろいろな大会で優勝を狙っていきたいです。そして、全国的に清教学園理科部の知名度を上げていきます。
理科部顧問 池宮広信先生
外部発信、交流で
生徒の才能や個性に気づいてほしい
――池宮先生の熱い想いは以前お聞きしているので[「先生に聞こう」]、今日は理科部の様子や方針をうかがいます。今日の取材では、部員の皆さんがきちんと自分たちの取り組みを説明してくれました。発表の機会が多いとのことですが、それが影響しているのでしょうか。
池宮先生 おかげさまで理科部は人気が出てきて、発表の機会をいろいろ与えていただくことが多くなりました。今年度に入ってからも河内長野の市民祭やキリスト教学校フェアで理科部が実験やロケットが飛んでいる動画を見せ発表もしました。次は幼稚園での出張授業も予定しています。
――他の理科部にない活動のように思いますが、外部発信や交流に力を入れられているのですか。
池宮先生 研究で優秀なことをやっている生徒がいても、周りの人はその生徒の良さや個性を知らないままになることが多いんです。でもコンクールや大会に出て賞を取ったり、外部で発表や交流をしたりすれば、周りが生徒の才能や個性に気づいてくれるし、認めてくれます。
スプリングカップ[ロボット大会]大阪大会優勝
ナレッジイノベーションアワード 中学生部門 準グランプリ
――理科部で取り組む製作や実験は、部員自身が考えているんですね。
池宮先生 そうです。他にも合宿の内容なども全部部員たちに考えさせています。もちろんチェックはして、さすがに変えなければいけないところは言いますが、できる限り訂正はしないようにしています。やはりいろいろ訂正すると、子供たちのモチベーションが下がってしまいますから。
――先生に信頼されているから頑張ろう、ここはきっちりやらなければいけないという関係ができあがっているのですか。
池宮先生 そこに気づくまでが大変ですけどね(笑)。1年生は楽しさでいっぱいですが、2年生くらいになるとこちらとの意思疎通が図れてきて、3年生になったら信頼がおけるという感じです。
方向転換して
部員の自主性に任せるスタイルに
――以前の取材で理科部を指導するにあたっては、「NOは言わない、すべてGOサインを出す」と言われていました。それは先生の中でゆるぎないものですか。
池宮先生 そうですね。やはり自主性の尊重は大きいですね。実は今の理科部と昔の理科部では雰囲気が全然違っていて、卒業生が来ると驚くんです。僕が顧問になって最初の1、2年は、部活らしく全員に同じ実験テーマを与えて、材料も準備してやっていたんですね。それだと見た目は良いのですが、部員は「今日は何の実験するんですか」と与えられるものを待つばかりだったんです。「自分たちで考えてみて」と言っても考えられない。その結果、大会などでの成績も伸びませんでした。その時に、受け身になっているからかなと考え、思いきり方向転換して今のように部員の自主性に任せるスタイルにしました。
――部員は戸惑ったのではないですか。
池宮先生 2014年の最初あたりからその方法でやり始めたのですが、その年はうまくいかず、結果も出せませんでしたね。でも、続けているうちに、ロボットやロケットで才能が秀でている部員が出てきて、そういう部員を中心に自分もやりたいという生徒が集まり、だんだん結果が出せるようになっていったんです。部員たちも変わっていきましたから、自主性は本当に大事だと思いますね。
――自分で何をするか考えるというのは、特に実験班が大変そうですね。
池宮先生 そうですね。ロボット班は、大会がありルールも決まっていてやりやすいのですが、実験班はそういうものが何もありません。科学の祭典などに出る時は実験内容をみんなで決めますが、それ以外の実験は何でもありです。どうしても何をすればいいのかわからない部員がいたら、その時はちょっとアドバイスをします。どんなことが好きかとか、何に興味があるかなどを聞いて、「それなら、こんなのがあるよ」と紹介する時はあります。
――自主性とともに、「自由」の本当の難しさも理解していくのかもしれませんね。また、部員たちからは「社会で役立つと思う」という言葉もよく出てきましたが、それも先生のご指導ですか。
池宮先生 部活5則を叩きこんでいるからでしょうね。特に「社会で役立つ」などは、私が言い続けているのが知らず知らずのうちにインプットされているのかもしれません(笑)。部活5則は、前向きにやる気を持ってやる「向上心」。優れた環境とは言い切れませんが、与えられた環境の中で「ベストを尽くす」。3つ目が「化学道即人道」で、今やっていることが将来につながっていくということ。そして「気づき即実行」で、気づいたらすぐやる。5つ目が「感謝」です。これらを元に部員にはよく話をしています。
――池宮先生としては、科学部の次の展開をどのように考えられていますか。
池宮先生 個人的には、部活の顧問になったときに、全国大会に行く、テレビに出る、本を出すと言っていたんです。全国大会出場がかなって、去年はテレビに出られたので、次は部活の内容をまとめた本を出版したいなと思っています。本校以外の科学に興味がある子供たちが科学に興味を持つきっかけになるような本を作りたいなと思います。
あとは、全国大会だった目標が、今は世界大会になりました。目標を言い続けていると、みんなマインドコントロールされるのか、だんだんそういう思考になっていくのがおもしろいですね。顧問1年目の時も、正直なところ全国大会レベルではなかったのですが、私が「全国大会に行って勝つから」と言い続けていると、みんなが「全国大会に行くんだ」となって行くことができました。世界大会も「世界大会に行くから」と言っていたら、きっといけると思います。
あとは、全国大会だった目標が、今は世界大会になりました。目標を言い続けていると、みんなマインドコントロールされるのか、だんだんそういう思考になっていくのがおもしろいですね。顧問1年目の時も、正直なところ全国大会レベルではなかったのですが、私が「全国大会に行って勝つから」と言い続けていると、みんなが「全国大会に行くんだ」となって行くことができました。世界大会も「世界大会に行くから」と言っていたら、きっといけると思います。
――夢中になって、自分がやっていることを話してくれた部員の皆さんがとても印象的でした。あの熱はすごいですね。やはり理科部の良さはそこですか。
池宮先生 理科部員たちのエネルギーは、私が与えたのではなく、元来持っているものです。一見おとなしそうな子も、「これが好き」という熱を心の中に持っているんです。それを表に出してしまうと、変わった奴だと思われてしまうことが多い。でも、理科部でそれをOKにしてあげたら、自分の中の熱を思い切り出してきます。それを出すことは本当にカッコいい。それができるのが理科部です。