2024年度よりスタートした巣鴨ビヨンド・ボーダーズ(SBB=Sugamo Beyond Borders)は、独自の国際教育を展開する巣鴨中学校・高等学校のオリジナルプログラムです。約2週間かけてイギリスを縦断し、一般的な研修旅行では得られない様々な体験を通して、生徒一人ひとりが「考え」「気づき」「成長」。その変化は最も身近な家族だからこそ実感できることも大きいようです。そこで今年度も実施されたSBB(7/25~8/8)に参加した高校1・2年生の保護者の方に、SBBへの参加を後押しした理由や期待、参加後の成長や変化、さらには巣鴨中高の教育についてお話をうかがいました。

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峯さん地学が大好きで、地学班と剣道班に所属する高校1年生の保護者。SBBでイギリスから持ち帰った石は、文化祭の地学班発表で展示された。ご自身もイギリスの大学出身であり、親しみのあるイギリスでの生活を息子にも体験してほしいという思いや、信頼を寄せる先生との交流を通じた息子の成長に期待し、SBBへの参加を後押しした。
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上平さん籠球班(バスケットボール部)で活躍する高校1年生の保護者。兄(高校3年)と兄弟で巣鴨学園に在籍。これまで海外にあまり関心のなかった息子は、籠球班の仲間とSBBに参加し、チームワークの大切さを実感して帰国。料理が得意な貴重な存在で、SBBでは参加メンバーの憧れの的となった。保護者としては、充実した内容、費用面・安全面のいずれにも満足している。
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竹内さん参加人数が少なめだった高校2年生の保護者。
初めての海外に不安を抱き、気乗りしない様子で参加した息子を案じていたが、帰国時に口にした「イギリスに住んでいたかった」という言葉に安堵した。SBBでの経験を通して大きく視野を広げ、「気が利く男」へと成長したことにも感動。巣鴨は、安心して子どもを任せられる学校だと思っている。 -
Kさん幼い頃から英語に親しみ、英語を得意とする高校1年生の保護者。SBBの紹介映像や“Understand Yourself”プログラムでのチャーリー先生の人柄、英語の美しさに感動し、家族そろって参加を応援した。SBBでの体験を通して期待していた「自立」も少しずつ身についていることを実感。この経験を将来にどのように生かしていくのかを楽しみにしている。

巣鴨中学校・高等学校の入試広報部部長・国際教育担当。2024年の初回「SBB」に続き、2年目となる「SBB」にも国際教育部長の岡田英雅先生と共に引率を担当。イギリスでの2週間、生徒たちと行動をともにしながら丁寧にフォローし、現地での生徒たちの様子を撮影した写真を随時保護者に共有することで安心につなげた。現地で生徒たちの成長を見守るとともに、帰国後のさらなる成長を楽しみにしている。今後のSBBの発展にも意欲的。


イギリスを2週間かけて縦断するSBB(巣鴨ビヨンド・ボーダーズ)は、巣鴨で実施されている海外研修と一線を画すプログラムです。訪問先や活動内容も従来の海外研修とは大きく異なり、現地での体験を通して、生徒たちに多くの問いや課題を投げかけます。このような冒険的ともいえる独自のプログラムに、ご子息を参加させようとおもわれた理由をお聞かせください。
息子は巣鴨に入学するまで英語が苦手で、「中学では英語は必修。やりたくないな」とよく話していました。私も心配はしていましたが、「ひとつずつ取り組めば大丈夫だよ」と励ますとともに、巣鴨の充実した英語研修プログラムで楽しい思い出を作ってくれることに期待を寄せていました。
実際に授業が始まると、息子は「英語がすごく楽しい」と言うようになり、中2でSSS(巣鴨サマースクール)に参加し、「自分も海外の先生とコミュニケーションを取れる」と思えたことが、自信になったようです。中3ではオーストラリアでの『ロックハンプトン ウィンタースクール』に参加。現地の同年代の生徒と同じ授業を受ける点に不安があり、少しハードルが高かったようですが、とても楽しく過ごすことができ、その経験も「これなら、もう一歩先に進めるかもしれない」という思いにつながりました。
高1で参加するプログラムを検討していたところ、「SSSでお世話になったトリスタン先生がいらっしゃるから、SBBでイギリスに行ってみたい」と息子が希望しました。SBBでは、座学だけでなく先生方と一緒に地理や歴史を学べますし、息子は地学が大好きなのでイギリスならではの地形や国土について学べる良い機会になると考え、家族で話し合って参加を決めました。
息子は籠球班に所属していて、「夏休みは部活をしたいから」と言って、中学生の間は巣鴨のさまざまな研修プログラムに全く興味を示しませんでした。高1になって、「こういうプログラム(SBB)があるよ」と話しても、最初は全く乗り気ではありませんでしたが、「高2になったら部活も最後の年になり、行ける機会がなくなるかもしれないよ。今しかないかも?」と話したところ、ようやく「考えてみようかな」と言ってくれました。最終的な行き先は、部活の先輩に相談したり、先生方が作られた動画を見て比較したりしながら、最後は自分なりに考えてSBBに決めたようです。
巣鴨の海外研修は、学校の友達と一緒に行けることも大きな魅力の一つです。息子は、中学に入学後、友達と過ごす時間や一緒に活動する時間がとても好きな様子だったので、友達と研修に行けることには魅力を感じたようでした。実際に、SBBには同じ籠球班の友達が7人ほど一緒に参加することになり、とても喜んでいましたね。
もう一つの決め手は、費用面です。今、自分たちで海外へ行こうとすると、航空券だけでも往復で50万円近くかかってしまいます。その点、SBBはプログラムの内容を考えれば高すぎるという感覚を持つものではなく、「これくらいはどうしても必要だよね」と納得できる金額でした。ホテルではなくドミトリーでの生活も、息子の自立を促す良い経験になったと思います。食事がすべて提供されるわけではなく、自分たちで買い物をして準備をする必要があった点も貴重な経験になりました。親としては、食費を追加費用として求められると思っていましたが、実際には無用な心配に終わり、そのことにも驚かされました(笑)。
現地で工夫しながら友達と過ごし、楽しいこともあれば、時には大変なこともあったと思いますが、若者だからこそ乗り越えられる体験です。あれだけの人数を安全に引率し、充実したプログラムを提供してくださったことには感謝しきれません。
小学生の頃から英語を学んでいるお子さんも多い中、息子は中学入学まで英語に触れた経験がありませんでした。そのため、「自分は英語ができない」という思い込みとコンプレックスがあったようです。巣鴨には様々な国際関連のプログラムがありましたが、「自分には関係ないもの」「選ばれた人だけが参加するもの」と捉えていて、ずっと見送ってきました。そんな息子が中3で一念発起して英検2級を取得し、「頑張ればできるかもしれない」と自信を持ち始めました。そして高1で『ダブル・ヒーリックス』に参加したのですが、これはかなり難しかったようで、「英語はやっぱり難しい。もっと頑張らなくては」と感じたようです。
そして今回、海外研修は高2が最後のチャンスだと気づきました。当初、SBBは全く頭になかったのですが、映像紹介を見て内容に驚き、「これは本当に素晴らしい。こんなプログラムは他にない!」と家族で話し合って参加を決め、急いで課題に取り組み、申し込みに至りました。
SBBが素晴らしいと思ったのは、文化を肌で感じる体験が盛り込まれていて、親が一緒に行ったとしても同様の体験はさせられないだろうということです。それに親でも、旅行会社でも、絶対に行かない場所ばかりだと思いました。家庭では与えられない経験を、出来る限りの安心・安全を配慮したうえで学校が提供してくださるからこそ参加を決めました。
SBBとの出会いは、今年の春に受講した「Understand Your Self」<*>がきっかけでした。SBBの共同創設者のチャーリー先生と1対1で行うプログラムで、課題を2分程度の英語スピーチとして動画で提出し、その内容に評価やアドバイスをいただくという形です。そのときに触れたチャーリー先生の温かい人柄と、一人ひとりに丁寧に寄り添ってくださるコメントに、本人はもちろん、親の私たちも心から感動し、SBBへ関心が高まりました。
息子は家庭の方針で、1歳の頃から毎年海外へ連れて行き、リゾート地だけでなく東南アジアなど、現地の生活に触れる旅も経験してきました。さまざまな言語に出会う中で英語に興味を持つようになり、巣鴨入学後はまず英検準1級取得を目標に努力を重ね、無事に合格。その後は「英語力をもっと活かしたい」「実際に使える英語を身につけたい」と話すようになっていました。そんな折、家族でSBBの紹介動画を見たところ、気づけば3回も繰り返し見ていました。美しい写真と先生の癒やされる声に、家族全員がすっかり引き込まれていたのです(笑)。
これまでアメリカ英語にしか触れてこなかった息子が、イギリス英語に触れられる良い機会になる点も魅力でした。イギリスを北から南まで巡りながら、地理や歴史の専門の先生がその場で授業をしてくださる「リベラルアーツ」を体験的に学べる内容は、家族旅行では得難い貴重な経験になると感じ、「ぜひ参加させたい」と思うと同時に、実は親のほうが行きたくて仕方がないほどでした(笑)。


イギリスに12年住んでいた方にSBBの行程や訪れる場所を説明したところ、「それは、イギリス人が死ぬまでに一度は行ってみたい場所ですよ」と言われました。実際、イギリスに留学している学生たちに話しても、「いつか必ず行ってみたい場所だ」と言われます。 SBBを企画する際に大切にしたのは、今はその価値が子どもたちにわからなくても、将来大人になったときに「高校生の頃に、あそこへ行ったんだ」と誇れる経験にすること。周囲に驚かれるような “あとから価値が分かる場所”をあえて選んでいます。 特に北部は、名前は知られていても実際に足を運ぶ人は多くありません。でもSBBでは、あえて子どもたちを連れていきたいと思いました。大人になって振り返ったとき、その経験は、一生の財産になると思っています。

元Eton College 教員で、World Leading Schools Associationの最高戦略責任者を務めていたチャーリー・ジェンキンソン先生によるオンラインプログラム。英語力向上だけではなく、「時間管理」や「人生設計」などを含めた「ライフ スキル」や「ラーニング スキル」を学べる構成になっている上級版の「Craft Your Life」と、それを中学生向けに改良した基礎版の「Understand Your Self」がある。生徒がこのプログラムを通して自分のことを理解していく、自分の人生を築いていくことの一助になればいいと考えスタートした。
心身や思考面でも大きく成長できると期待
峯さん息子はSBBから戻り、今月から「Craft Your Life」に参加しています。普段は剣道に打ち込み地学が大好きなので、剣道や地学への興味についてチャーリー先生と話したところ、後日30分のZoomインタビューを行ってくださいました。
その中で「以前より自信をもって話せるようになったね」と声をかけていただき、息子は自分の成長を実感したようです。インタビューでは、剣道や地学についてさらに深く掘り下げた質問をしてくださり、後日には剣道のスタミナ強化のための「朝10分でできるエクササイズ」まで送ってくださいました。スクワットから始まる本格的な内容で、正直驚きました。
息子の何気ない一言を、先生は何倍にも広げて返してくださり、地学についても考えを深める視点を示してくださいます。一人ひとりを “パーソナル”に見てくださっていますし、その後も「どうだった?」とフォローの連絡があり、「もっとやりたいなら、いつでも準備できているよ」と声をかけてくださいます。継続することで、英語力だけでなく、心身や思考面でも、大きく成長できると期待しています。
チャーリー先生からの「朝10分でできるエクササイズ」
参加を決めたSBB。2025年度は7月25日から8月8日まで実施されました。送り出す前に、期待されたのはどの様な事でしょうか。
やはり、語学の習得だけではなく、イギリスでの生活そのものを楽しんでほしいという思いがありました。また、先生方と一緒に行動する機会が多いので、「わからないことがあれば積極的に質問したらいいよ」と話して送り出しました。帰国後、「僕は巣鴨で英語の勉強の“根っこ”を作ってもらって、いろいろな研修でその“枝葉”をどんどん広げてもらっている気がする」と息子が言ったのを聞いて、とても感動しましたね。そんなふうに受け止めて帰ってきたことが成長として感じられ嬉しかったです。
期待していたのは、英語を流暢に話せるようになることよりも、その土地の空気や匂い、雰囲気を肌で感じてきてほしいということでした。日本は安全ですが、海外では緊張する場面や怖い思いをすることもあります。そうした違いを感じ、現地をよく見て、さまざまな経験をしてきてほしいと思いました。もちろん2週間という短い期間では十分ではなく、言葉を話すための準備も足りなかったと思いますが、息子が海外に興味を持ち、前向きな気持ちで帰ってきたので、「行かせて良かった」と思っています。
息子は、今回が初めての海外で、時差もわかっていないような状況でした。帰国した翌日には合宿に行きたいと言い出すんです。そうした経験の無さも含めて、実際に体験しながら学んでほしいと思いました。また、日本とは違う外国の空気感を感じて現地の雰囲気の中で、語学だけでなく文化そのものを感じてきてほしいという期待が大きかったです。
「Understand Yourself」を通してSBBを知り、英語がわかる父親は「チャーリー先生の英語はとても美しい」と話していました。だからこそ息子にも、こうした美しい言葉で会話ができる人になってほしいと思い、チャーリー先生とできるだけ長い時間を過ごし、多くを吸収してほしいと強く願っていました。
また、SBBの目的の一つの「自立」にも大きな期待がありました。息子は朝が苦手で、身の回りのことも用意されていて当然というタイプです。しかしSBBでは、前もってスーパーで食材を買い、決められた時間に起きて朝食を作り、片付けをしてから行動します。日本ではなかなか経験できない生活ですが、友達と行動する中で「自分が動かなければグループが成り立たない」と実感し、その経験が息子を少しでも変えてくれるのではないかと楽しみでした。


現地では、チャーリー先生、フィル先生、トリスタン先生が、「なぜこうなっているのだろう?」「これはどうしてだと思う?」と、常に生徒たちに問いかけていました。到着してしばらくは、その問いの多さに戸惑い、「そんなに聞かないで…」という反応も見られましたね。しかし、どこへ行っても「考えてみよう」と促す環境に身を置くうちに、3~4日目頃から変化が現れます。バスの車窓から眺めながら自然と「あれはなぜだろう?」と考える姿が増え、友達同士で仮説を立て、スマホで調べたり、さらに先生に質問したりと、少しずつ自分で学びを深める姿が増えていきました。
日本に戻ってからも、生徒たちは無意識のうちに、さまざまな事象に対して疑問を持ち、自分で考える姿勢を身につけているように感じます。こうした積み重ねが、いわゆるクリティカルシンキングの土台になっていくのだと思います。

SBBから帰国されたご子息たちには、どのような変化や成長を感じられましたか。驚いたこともたくさんあったのでは?
帰国後、息子は「ケンブリッジで化石や鉱物を売っている露店があって、1時間も石を買うか迷った」と話してくれました。地学が大好きな息子は、「イギリスでも珍しい石だよ」とお店の人に勧められましたが、70ポンドという価格に悩んだそうです。地学担当のフィル先生が通りかかられたので相談すると、「本当に珍しいから、良いと思うよ」と背中を押してくださり、最終的にはかなり重い石を手荷物で持ち帰ってきました(笑)。
9月の文化祭では地学班の展示としてその石を紹介しましたが、文献では情報が少なく、筑波の地質学研究所の先生に問い合わせて詳しく教えていただいたそうです。持ち帰った石は、現地での体験や思い出とともに、今では息子にとって大切な宝物になっています。スコットランドは岩盤が強い土地ということもあり、滞在中は至るところで岩に魅了されたようですね(笑)。
帰国後も「Craft Your Life」を続けているのは、SBBでの体験が大きな原動力になっているからだと思います。現地ではチャーリー先生と地理や地学の話を重ね、最後に「興味があれば、いつでもメールしてね」と声をかけていただきました。その一言が励みとなり、「もっと深く掘り下げて学びたい」という思いで継続しているようです。
文化祭で紹介された希少な火山性岩石「レイクランダイト」
参加前はそれほど乗り気ではなかった息子が、帰国後すぐに「留学したい」と言い出したことには驚きました。岡田先生の母校であるダラム大学など実際に大学を訪れ見学したことで、イギリスの学ぶ環境の素晴らしさを肌で感じ、「自分も行ってみたい」と思ったようです。その気持ちを聞いて、「今行くべきなのか、大学進学時なのか、その先なのか」を家族で話し合いました。今、留学するなら、今の友達とは同じタイミングで卒業できないことや、部活、人間関係への影響など、すべてを踏まえて考える必要があります。応援はできますが、タイミングの難しさを感じました。
また、SBBを経験した息子が特に強調していたのが「チームワークの大切さ」です。これまではどこかで「自分が良ければ」「友達は友達」という割り切りがあったようですが、イギリスで何もかもをグループで進めた経験から、「一緒に何かを成し遂げること」の大切さに気づいたようでした。買い物も食事の準備や片付けもグループで行い、他のメンバーとお互いに支え合いながら協力するというその姿勢を、とても大事に思って帰ってきました。その影響か、これまでは自分からあまり話さなかった息子が、積極的にコミュニケーションを取るようになったと感じます。部活でも先輩とよく話すようになり、周囲との関わり方が少しずつ変わってきたように思います。
我が家も、最初は本人に「行きたい」という強い気持ちはありませんでした。「自分だけが話せなかったらどうしよう」という不安があったようです。どちらかというと、親が背中を押した形だったので、高2の参加者が少なかったこともあり、帰国まではずっと心配でした。ところが帰国当日、早朝に到着のはずがなかなか帰ってきません。どうしたのかと思っていたら、友達と盛り上がって朝食を食べて話し込んでいたらしく、帰宅はお昼過ぎでした。その様子を見て、「ああ、楽しかったんだな」と安心しました。
「どうだった?」と聞いたときの第一声は、「イギリスに住んでいたかった」です(笑)。出発前の迷いや不安が嘘のようで、行かせてよかったと心から思いました。息子も歴史や石に興味があるため、スターリング城などの建物やいろいろな種類の岩に心を奪われ、通常のツアーでは行けないような場所に行けたことがとても嬉しかったようです。
また、期待していた文化の違いも実感してきました。お弁当を「バナナともう一つ何かあれば十分」「サンドイッチがあれば完璧」と話す姿に、物事を柔軟に受け止める力がついたと実感しました(笑)。
帰国後の生活面での変化にも驚かされています。以前は声をかけていた食事の準備も、今では「何かやることある?」と自分から聞いてくれるようになりました。考え方も、仮説を立てて物事を捉えるようになり、日常の中で息子の成長を実感しています。イギリスでの体験を通して、日常のちょっとした気遣いができる“気が利く男”になって帰ってきたことに驚いています(笑)。
帰国後は時差の影響もあり、1週間ほどほとんど眠り続けていました。「言語が違う環境で過ごすのは、こんなにも疲れるのか」と実感したようです。イギリスでは友達とグループリーダーの間を行き来し、通訳のような役割も担っていたと聞き、とても楽しかった分、頭も心もよく使ったのだと思いました。
そして1週間ほど経った朝、起きてきたら自然に朝食作りを始めたんです。卵を焼き、パンをトーストし、レタスを挟んで、イギリスで毎日のように食べていたサンドイッチを作っていました。その日以来、ほぼ毎朝自分で朝食を用意して学校へ行くようになっています。現地では、限られた材料でも手際よく料理をしていた上平くんにとても刺激を受けたようで、「自分でもやってみよう」と思えたのだと思います。今では時間を逆算して起き、身支度を整えて家を出られるようになりました。その成長をとても嬉しく感じています。SBBに参加させた目的の一つは「自立」でしたが、親にとっては費用に代えがたい価値があったと感じました(笑)。
まだ将来の進路を決めたわけではありませんが、SBBを通して「英語を使う仕事をしてみたい」「人と関わる仕事がしたい」という思いが芽生えたようです。大学で心理学を専攻し、カウンセリングを学んでいたグループリーダーのトム先生の優しく誠実な人柄が本当に素晴らしく、息子は強く憧れたようです。さらにイギリスでの友達同士の橋渡し役を経験し、帰国後に参加した学校の医療体験プログラムを通して、医師を含め「人の役に立つ仕事をしたい」という思いが、少しずつ形になり始めているようです。
トム先生と一緒に。何度も「オーマイガー!」と叫び、グループ名までも「オーマイガー」になった。


去年のSBBとの一番大きな違いは、「生徒が自分たちで買い物をして、食事を作ったこと」です。昨年は、食材をこちらでまとめて用意し、生徒たちが調理する形でしたが、少し物足りなさを感じていたんです。そこで今年は、生活拠点として最も適していたダラムでの滞在を延ばし、生徒自身に買い物から任せることにしました。
現地のスーパーで、Wiseカードに支給されたお小遣いの範囲内で、何食分かの食材を購入します。食べたいものは人それぞれですが、みんなで相談しながら“最大公約数”を考えて買い物をする。その中で、料理が得意な子がいると、一気に尊敬を集めるんです(笑)。中には、お米や炊飯用の容器を日本から持ってきた子もいて、みんなから「カリスマ」と呼ばれていました(笑)。
買い物の時間はとにかく楽しそうでしたが、「食」は生活の要。翌日の昼食のパンが足りないことに気づき、「もう一度買い出しに行かせてください」と必死に交渉する姿もありました。チャーリー先生に時間を作ってもらい、心から感謝している様子が印象的でした(笑)。
時間が限られているときには、「この2人はテスコで食材」「こちらはドラッグストアで日用品」と自然に役割分担が生まれていて、生活がかかると、こんなにも主体的になるんだなと感心させられました。

SBBという独自のプログラムを経て、改めて感じられる巣鴨中高の良さを教えてください。
巣鴨には多くの行事がありますが、その背景には先生方の手厚いサポートと、OBの皆さまの温かな協力があります。卒業後も母校に戻り、行事を支えるOBの姿を見るたびに、深い学校愛を感じますし、将来息子も同じように「支える側」になってくれたら素敵だなと思っています。
受験前に初めて巣鴨の文化祭を訪れたとき、どの学校の地学班よりも巣鴨の先輩方が優しく親切にしてくださったことが、強く心に残っています。その人柄の良さこそが巣鴨の文化であり、OBが自然に母校や後輩を手伝いたくなる理由なのだと感じます。
また、生徒が挑戦できる機会が学校全体に用意されているのも大きな魅力です。英語研修をはじめ、「やりたい」という気持ちを受け止め、後押ししてくださる環境が整っています。
巣鴨に「硬派」「厳しい」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実際に通ってみると、決して息苦しい厳しさではありません。社会で必要な責任感や礼節を、日常の中で自然に身につけられる、温かい学校だと感じています。
我が家は兄が高3で、兄弟そろって巣鴨にお世話になっています。兄の頃から感じているのですが、男の子を育てる環境としては、本当に良い学校だと思います。先生方は自由にさせてくださる一方で、必要なところはきちんと厳しく指導してくださいます。ただ放任するのではなく、子どもが自分でやろうとする姿を信じて見守る、いわば「見守り型のほったらかし」に近い印象です。やりたい子には、本気でやらせてくださる学校だと感じています。
母親としては、本来なら「あれダメ、これダメ」と言いたくなる場面でも、巣鴨では意外と細かく言われません。男子が多い環境ということもあって、良い意味でおおらかに、いろいろな経験をさせていただいていると思います。
今年は「大菩薩峠越え強歩大会」に初めて参加できました。中止の年もあり心配していましたが、他校ではなかなかできない体験です。医療チームや山岳班などのサポート体制もしっかり整っていて、「やりっぱなし」ではなく、安全を確保した上で挑戦させてくださる点が巣鴨らしいと感じました。子どもの「やってみたい」という気持ちを引き出し、挑戦できる環境を用意してくれることが、巣鴨の大きな魅力だと思います。
強く感じているのは、「安心して子どもを任せられる学校だ」ということです。小学生の頃は、なかなか勉強に向き合えず、提出物や忘れ物も多く、親として心配が尽きませんでした。
巣鴨に入学した際、担任の先生から「提出物は苦手ですが、任せてください。男子は最初、みんな同じです。最後までしっかり見ます」と言っていただき、その言葉が本当に心強かったです。実際、今では提出物もきちんとこなし、遅刻もなく、生活リズムを自分で管理できるようになりました。朝は自ら起きて勉強してから登校する日もあり、中1の頃とは見違えるほど成長しました。
SBBから帰ってきて以降は、周囲への気遣いもできるようになり、私に対しても自然と気配りをしてくれるようになりました。こうした変化は、日頃から先生方が子どもたちを信じ、温かく見守ってくださっているおかげだと感じています。
守るべきところは守りつつ、状況に応じて柔軟に対応し、必要なときにはきちんと叱ってくださる。巣鴨は、そのメリハリがとても的確だと感じます。子どもたちは、そうした日々の積み重ねの中で、人の気持ちを考え、空気を読む力を自然と身につけているのだと思います。親としては、こうした教育に感謝しかありません。
今年、SBB以外で息子が楽しんでいたのは、生徒会の活動だったと思います。巣鴨の文化祭はほぼ生徒に任されていて、その自由度の高さに驚かされます。「何をしてもいい」というわけではありませんが、許可を取れば幅広い挑戦をさせてもらえる機会です。
夜に学校で撮影をしたり、三連休を文化祭準備に費やしたりと、学業と両立しながら忙しい日々を送っていましたが、露店の企画を提案すると先生が背中を押してくださり、親目線でも「信じて任せてくださっているんだな」と感じることが何度もありました。もちろん、完全に丸投げするのではなく、先生方がしっかり見守ってくださっていました。
入学前は「勉強が忙しくて厳しい学校では?」と少し構えていましたが、実際には生徒の挑戦を温かく支えてくださる学校です。寒稽古や朝礼など、最初は不安もありましたが、さまざまな行事を通して学校全体の雰囲気に触れるうちに、その印象は大きく変わりました。今では、厳しさの中に生徒を信頼する確かな温かさがある学校だと思って、安心して息子を通わせています。













