成果発表Ⅰ
ポスター発表
試行錯誤しながら追究した
85テーマのポスター発表
グループ探究したテーマがまとめられたポスターが掲示され、その前で内容を発表する「ポスター発表」。A・Bのグループが前・後半に分かれ、他の高校1年生や来年探究活動を行う中学3年生、講評の先生方や保護者が足を止めて発表に聞き入り、質問を投げかけます。
「女子高生の理想の顔は黄金比であるのか?」「炭酸飲料と骨の関係」「スポンジにおける細菌の増殖しやすい環境~スポンジって本当にキレイなの?~」「理想のミルククラウンを作ろう!」など、身近な疑問を科学的に考察して検証している発表が多く、ポスターに写真や図表を多用するだけでなく模型まで見せるグループも。伝え方まで考慮していることがよくわかります。
大きな声で簡潔に的確な発表を行う生徒たちからは、「Academic Day」などこれまで同校で培われてきた探究力やプレゼンテーション力の成果もうかがえました。周囲の机では生徒たちが各ポスター発表から選んだテーマを評価シートで細かく評価。発表だけの一方通行の形式に終わらない発表会はすでに完成度が高く、今後の探究活動としての期待もふくらみました。
Pick Up
狭い場所で動かせるアームの構造を考える
分野:物理 工学
ポスター発表
誰かの思いつきが
進化につながる
私たちの研究目標は、災害時に狭い範囲で上下左右に自由に動かせる構造を考えることです。大学のオープンキャンパスでこの研究を見学し、もっと快適なものを作れるのではないかと考えました。また災害用ロボットの開発自体にも興味があり、この研究をすることでより理解を深められるのではないかと思ったのです。
先行研究を基に作成したロボットのアームの構造部分は、細い隙間でも細かい動作ができるように動きやすい形を求め、より滑らかな動きを実現したいと紆余曲折したら、発泡スチロールの球を連ねる形にたどり着きました。
最初は設計図を作るところまでしか考えていませんでしたが、私たちの研究はポスターだけではわかりづらいと考え、模型を作ってより具体化しました。グループ探究は、班員の誰かが思いつきで言ったことが進化につながります。その進めていく過程がとても面白かったです。
Pick Up
カメの学習能力
分野:生物 動物 医学
ポスター発表
予想通りでなかった
結果の考察が面白い
家で飼っている亀が餌を与える前に激しく動くので、亀には私を認識して餌がもらえると考える学習能力があるのではないかと考えて、習得的行動について調べたいと思いました。実験方法は餌を与える前に光をあてる実験を3週間行って、その後に光を当てると餌を求める行動をするかを調べました。
結果としては光を当てても餌を求める行動を取ったり取らなかったりして確実ではなかったのですが、実験開始2週間後に1匹が卵を産んだんです。
自分たちが予想したとおりにならなくても、今回のように卵を産むという結果とは別のことが出てきたことで、それをどう考察するかが楽しかったし、そこに面白みを感じました。また、1人ではないので、違う視点からいろいろな意見が出て来て、それが自分とは違うことに意外性がありました。
Pick Up
化学発光~最強のサイリウムを作るには~
分野:化学
ポスター発表
習っていない分野をみんなで
苦労して進める楽しさ
コンサートで使うサイリウムを、より強く発光させたり、色を操ったりするためにはどうすればいいかを実験しました。結果、強く発光させるためには触媒を用いて酸化還元反応を促進させることが必要だとわかりました。
私たちはまず先行研究が大事だと考え、4人で役割を分担して先行研究を調べたんです。そこを深くやったことで実験の手順がスムーズになり、実際に実験にかけたのは2時間ぐらいでした。ただ、酸化還元のしくみが習っていない分野で苦労しましたが、実験が思ったようにいかず、みんなで試行錯誤して悩みながら進めたことが楽しかったし、普段にはない良い経験でした。
Teacher Comment
先生が感じた
SSH成果発表会
高1学年担任 田尾先生
生徒がやりたいことを存分にやれる機会になるSSH
成果発表会までの過程は時間との戦いでした。本格的にグループで探究を始めたのが12月の冬休みからで、3学期は主に放課後を使って活動しました。ポスターにまとめ始めたのは3月の学年末試験が終わってからです。2月の中頃までにどのグループも中間報告のために背景や目的をパワーポイントにまとめていて、中間報告も活用しながら、その後にできる限り進めた実験や考察を最後に入れる。その仕上げをギリギリまでやっていました。今日までに何をどこまでやれて発表できるのかも、生徒たちの課題だったと思います。
生徒のテーマをご覧いただくと結構壮大なテーマですが、3学期内でできることにテーマを再設定したり、実験してみるとまた課題が見えて来て、実際にまとめようとすると時間が足りなくなったりしたものもありました。
ただ、そのなかでも生徒たちは、「中途半端に終わらせたくない」という意識を強く持って取り組んでいました。それに興味を持つとわからないことでも飛び込んでいって、自分たちで調べてそれを使って実験をすることもできるんだとわかりました。そこは探究活動をやって良かったと思っていることのひとつです。探究活動を通して生徒がやりたいことを存分にやれる機会が生まれ、そこに探究活動の手応えを感じました。
それはこれまでも、「Academic Day」や「モノづくりプロジェクト」で感じられたことですが、探究活動は全員が対象です。だから今年はそれがより多くの生徒たちに広がり、探究や実験に興味を持っている生徒は、さらにその力を伸ばせたように思います。
高校1年はグループ探究でしたが、高校2年の理系は「科学探究Ⅱ」、文系では「総合探究Ⅱ」という科目に分かれて個人探究に取り組んでいきます。今年の取り組みで、今後も続く探究活動の基本がみえてきたと思います。
成果発表Ⅱ
口頭発表
実験や考察に自信をもって口頭発表
講評を受け止め、次へ進化
講堂では希望した6グループが口頭発表。高校1年生と中学3年生を前に、パワーポイントを使ってそれぞれのテーマについて発表します。「ダイラタンシー現象における外力と硬化の関係」「乾きやすい液体の比較実験をする」「左手の書き方」など、ポスター発表の多彩さに続く幅広いテーマ選択と検証内容。発表後には質問時間が設けられ、生徒だけでなく講評をする先生方からも質問や細かなアドバイスが寄せられましたが、ステージの生徒たちは自分たちの考えや結果でしっかりと受け答えをしていて、いかに多角的にテーマを考察し、自信をもって発表しているのかが伝わりました。
最後は指導講評。午前中に基礎講演をされたシンガポール南洋理工大学の佐藤裕崇准教授をはじめ、大学や企業の錚々たる方達からの指導や講評には、多少手厳しさを感じる内容もありました。しかし、研究におけるオリジナル観点や議論の大切さ、チームワークの重要性、発表における姿勢など、実践的で役立つ言葉が多かった理由は、生徒たちの研究へ向かう意識の高さが生んだ結果でしょう。今後も探究活動を続ける生徒たちは、より深く濃く進化した探究活動を見せてくれそうです。
Pick Up
左手の書き方
分野:数学・情報
口頭発表
世の中で常識とされていることを疑ってみたい
細野さん
今回のテーマは、私が左ききだったことから始まりました。「持ち方がおかしいよ」とよく言われていたし、習字は右手で書かなければならず、「もしかして文字は右利き用に作られているのではないか」と思いました。そこで、それを証明することで世界中の左利きの人に配慮してほしいと考え、2人に持ちかけたんです。
時間の関係上、書く時の圧力を測るのは測定器具が専門的で難しい。でも、結果が出ないのはつまらない。そこで被験者を集めて右手で書く人と左手で書く人のタイムを計りました。被験者は右手が23人、左手は10人です。
今回の研究前、先行研究が全然出てこなかったんです。左利きなんて身近なことなので研究されていないことがすごく不思議に思いました。そして、世の中には、当たり前に思っていても当たり前でないことがいっぱいあるんだと気づきました。だから、常識とされていることを疑ってみたいと考えたし、こういう経験を通してそうした目が育つのかなと思っています。
奥田さん
高校2年になると個人の探究となり、私は理系に進むので「科学探究Ⅱ」をすると思いますが、今回のグループ探究でデータの正確性の大事さや探究する上での基礎を学べたので、それを自分の研究に活かしていきたいと思います。
永村さん
私も習っている先生に左利きの方がいて、話をうかがったらどうしても横棒は押して書くことになるそうなんです。右手で書くなら引くことになるんですね。だから持ち方が決まってきて、やはり書きづらいと言われていたので、グループ探究のテーマにしてみたら面白いと思ったんです。
私はもともと人前で話すのが好きなので、口頭発表には抵抗がありませんでした。一斉に聞いてもらって反応してくれる場がいいと思って、口頭発表を希望しました。だから質問されることも予想していたので緊張はなく、反対に質問が来ることでちゃんと聞いてくれていたんだなと思いました。
口頭発表では、会場の皆さんに「円を書いてみてください」と投げかけをしてみました。このように聞き手に実際にアクションを起こしてもらう問いかけをすることは、初めは少し怖かったんです。「みんな寝ているかもしれない」と思ったんです(笑)。でも、みんながやってくれ、「お~」などと反応してくれとても嬉しかったです。
グループ探究では、他の人を通して客観的な意見が得られることとその重要性を知りました。自分が1人でやるときも、今回の貴重な経験を自分のものにして活かせたらいいなと思います。
Students Comment
中学3年生が感じた
SSH成果発表会
私たちも実験に挑戦したい!
★鉄くぎの腐食の実験が面白かったです。身近に起きたことと実験を結び付けているところや、実験可能なものに代用していたところに感心しました。
★聞いたことがないような材料を使っていましたが、発表がすごくわかりやすくて面白かったです。伝えることも大事だなと思いました。
★教科書で見るような本物の化学実験のようで楽しそうです。来年、私も実験をやりたいです。