海城中学高等学校の英語科授業では、中学1年から高校3年までの6年間にわたって、生徒たちが大声で英語曲を歌います。中学1・2年では基礎の定着を重視しながら、苦手意識を持たせない楽しい授業を展開。中学3年・高校1年では基盤のできた英語力を活かせるディスカッションなど表現の機会を多く設け、より高度な内容を学習。高2からは大学入試に意識を向けるものの、高3になってもこれまで培ってきた英語力を確実にしながら将来につながる言語「英語」へと仕上げていきます。 進学校だからといって大学入試対策のための英語で終わらせない。海城英語科教育の真髄を取材しました。
英語の基礎を定着させるきめ細かい指導を!
中1・中2の英語演習は1クラスを3分割しておこなっています。基本的には1クラスを半分に分け、少人数で授業をしていて、英語を得意とする一部の生徒には取り出し授業をして3クラス目を設けています。以前は週5時間の総合的な授業と週1時間の英会話授業でしたが、総合的な授業を週4時間に減らし、基礎的なことを繰り返し行って定着させることと、発表をより行いやすくするという目的で、少人数で英会話やスピーチ、文法の復習や単語の練習を扱う週2時間の英語演習にカリキュラムを組み替えました。
分割授業は生徒の集中力が上がるので、とても良い形です。英語演習では、クラス全体でやっている週4時間の授業の復習や、全員では実施しづらい発表をします。テンポよくいろいろなことに取り組み、問題をどんどん解いたり、たくさんの英文を書いたり、短めの英語スピーチなどにも取り組みます。生徒一人一人が見やすく全体のときには気づけない様子にも気づけます。発表では、英語はそんなに得意ではないけれどオリジナリティを発揮する生徒もいて、テスト評価だけではわかりづらい面が見えるのも英語演習の良さと言えます。
英語演習は、生徒に飽きさせないこと、明るく授業を進めることがコンセプト。基礎を組み立てていく時期に落ちこぼれを作らないという意味でも、英語演習の授業には大きな意味があると思っています。
取り出し授業は、中1・中2の基礎を重点的にやる時期に、帰国生入試で入学した生徒や英語が得意な生徒を対象にもう少し高度な内容を提供する希望制の2時間の授業。ネイティブ教員が対応しています。英語圏で使用されているテキストを用いて読解をしたり、生徒が調べてきたことに基づいてスピーチやプレゼンテーションをおこなったりしています。英検準1級程度の英語力としていますが、自信があれば帰国生でなくてもチャレンジすることができます。
実際に使ってみないと始まらない!
高1の論理表現の授業では英語で話す練習を中心に行います。論理的に話したり書いたりできるようになること、そして、説得力のある文章を作れるようになることが目標です。話をする際は、相手の考えを尊重しながらも、自分の意見をきちんと主張できるようになってほしいと思っています。
そのための練習として、ディスカッションとミニディベートの2種類を行います。ディスカッションでは、与えられたテーマについてグループで協力して結論を導く作業をすることが多く、旅行の予定や学校の文化祭のスケジュール作りなどを行います。意見が合わない場合は全員が納得できるまで交渉することも大切になります。
ミニディベートは、勝ち負けではなく、自分の意見を持ったうえで相手の意見をよく聞いて、いろんな立場からもう一度考えられるようになることが目的です。自分が持っている実際の意見と反対の立場についても考える必要があるため、ディベートの中で新しい気づきが沢山生まれます。
どちらの授業に関しても、理由を考え、さらになぜその理由が大事なのかまで考えて表現力を伸ばしていきます。中学からの積み重ねで高校生になるとある程度英語が話せるようになります。ここまで来ると、生徒たちも友達と英語を使ってやりとりをすることに対し、言いたいことが通じる楽しさを実感できるようになります。
高3の論理表現では、自由英作文を書く機会が多くなります。学年が上がると色々なテーマについて更に深く考えること、および、高1のディスカッションやミニディベートで学んだ論理構成を使い、自分の考えを読み手に伝わりやすい英語で書けるようになっていきます。
高3の論理表現では、高1のミニディベートで学んだ段階的でロジカルな構成を踏まえ、書くことがメインになります。学年が上がるとさらに深く考えながらエッセイライティングができるようになっていきます。
授業で唱する英語の歌
中1から高3までの6年間、英語科の授業内で英語の歌を毎日歌っています。20年ほど前から歌い続けていて、当初はさまざまな意見がありましたが、継続してきた結果、今ではどの時間もどこかの教室から歌声が聴こえてくるようになりました。
歌うことの良さは、英語のリズムの強弱がつかみやすく、発音も自然に身につくこと。授業の最初に歌うと、声を出すことへの抵抗をなくして、その後の活動が積極的になる良さもあります。また、歌詞には教科書に出てこないような表現も出てくるので、英語への全般的な興味も増します。歌の扱い方は教員によって自由で、歌として純粋に楽しむことに徹する場合もあれば、定期考査中に音楽が流れて穴埋めを考える問題や「この先の歌詞を選べ」という問題が出ることもあります。大抵の生徒は歌うことが好きで、それは高3になっても同様です。卒業後も海城で歌った英語曲を共に楽しむことがあると聞いています。
曲は中1では「オブ・ラ・ディ オブ・ラ・ダ」や「カントリーロード」などが定番ですが、選曲はあくまで教員の自由。生徒の学年が上がると深みのある歌詞の内容を理解できるようになってきますから、そういった曲や習った文法が歌詞に出てくる曲を取り上げることもあります。やはり細かいところまで意味がわかった上で歌うことは、生徒の英語力の血となり肉となっているのではないかと思います。
英語に対して飽きさせないことが海城の英語科の大きな特色であり、歌はその一つ。英語での対話や発表にも抵抗がない生徒を育てる一因になっていると思っています。