海城中学高等学校では、中学で音楽と美術を3年間学び、国語の中で書写が扱われます。高校では2年・3年の時期に芸術科目(音楽・美術・書道)を1つ選択して学びます。また、中学1年・2年で技術科、中学3年・高校1年では家庭科と情報科<※>の授業を受け知見を広げます。また、各科目が混合して派生するプロジェクトや課外講座なども多彩に実施。とにかく海城には多岐にわたる分野に及ぶ中高の教育に収まらない学びがあふれています。それらを担う先生と、学びを満喫している高校生に話をうかがいました。
<※>併設型中高一貫教育校特例措置により、高校の情報Ⅰを中学3年次に1単位分、高校1年次に1単位分を実施。

CONTENTS

Profile(左から)
植手くん 高校3年 美術選択/ KAIJO DESIGN TEAM所属(高2まで)/美術部・陸上部
大山くん 高校2年 音楽選択/合唱部・文芸部
吉田くん 高校1年 KAIJO DESIGN TEAM所属/弓道部
菅原くん<写真掲載なし> 高校2年 音楽選択/数学部・物理部

海城の面白さは、個性ある授業とプロジェクトの多さ
自分の好きなことを夢中でやれる場所がある
歌に特化した高校音楽
油絵に専念する美術
海城では、高校2年生から芸術教科(音楽・美術・書道)を選択します。まずは皆さんの選択教科とその理由を教えてください。
大山くん

僕は合唱部に所属していて、子どもの頃からJ-POPが大好きで音楽に興味があったので、迷わず音楽を選択しました。友達とカラオケに行ってみんなで歌うことも頻繁にあり、歌が好きな人も多いから、音楽を選ぶ人が一番多いはずです。高校の音楽の授業は齋藤先生が担当で、僕は中学でも齋藤先生でした。齋藤先生は合唱部の顧問でもあるので、尊敬しています。それも、音楽を選択した理由の一つですね。

高校の音楽の授業は歌に特化していて、海城の授業専用の曲も歌います。通常、教科書に載っている曲は男女混声のものが多いですが、齋藤先生がお知り合いの作曲家にお願いして、海城の授業のためのオリジナル曲を作ってもらったそうです。この学校の音楽の授業だけの歌、男性合唱のためにプロの先生が作られた歌で、どこでも使われてない海城独自の歌ですから、ワクワクします。

菅原くん

僕は美術と音楽で迷いました。美術は道具の準備が大変だし、音楽は歌唱だけでテストの結果が決まりますから、自分の歌の実力が可視化されることが怖かったんです。でも、やはり歌うことが楽しいと感じたので、最終的に音楽を選択しました。また、担任の先生から「楽しめる教科を選んだ方がいい」とアドバイスをもらったことも決め手です。

植手くん

僕が美術を選択した理由は、主に2つあります。1つは、美術の成績が良かったのに対して、音楽の成績がすごく悪かったからです(笑)。もう1つは、単純に美術が好きだったから。子どもの頃から絵を描いて表彰されたこともあり、その成功体験が自信につながり、さらに美術が好きになりました。美術部にも所属していて、高校では油絵でさまざまな作品を作り続けられるので、僕にとってとても満足度が高いです。結果的に「美術しかない!」という感じでした。

高1の吉田くんは、高2から選択することになりますが、 何に興味がありますか。
吉田くん

美術か音楽で悩みますが、僕も友達とカラオケによく行きますし、純粋に音楽が好きなので、音楽選択と思っています。

勉強以外にも自分の興味関心を広げ、
成長できる環境が整っている
今回は、海城の芸術科(音楽・美術・書道)、技術家庭科、情報科といった教科を中心に、海城の枠に収まらないユニークな学びの魅力を聞いていきます。皆さんが印象的な教科やプログラム、講座やその魅力は?
植手くん

さまざまな取り組みが数多くあるKSプロジェクトには、芸術系の活動もあり、興味のある人はさまざまなことに挑戦できるのが大きな魅力です。先生が得意分野を活かしていろいろなプロジェクトを作ってくれて、「興味があればやってみない?」と選択肢を示してくれます。

僕は「KAIJO DESIGN TEAM」<*1>に参加して、東急歌舞伎町タワーの見学や話を聞いたり、海城のロゴ作成に関わったりしました。広告代理店の仕事に興味があってデザインにも関心があったので、とても刺激的な体験でした。

僕が思うに、海城生の多くは、将来像を描き、それに向けて勉強や活動を進めている人が多いですね。僕も高3対象の「探究」の時間に「映像表現」<*2>の講座を取って、映像制作に取り組んでいます。海城には、勉強以外にも自分の興味関心を広げ、成長できる環境が整っています。

<*1>KAIJO DESIGN TEAM…技術科と美術科の先生による合同企画。これまでにチームロゴ作成、海城グッズのデザイン、音楽室のリノベーションなどに取り組んできた。

<*2>高3探究「映像表現」…美術科・音楽科・技術科・国語科の教員が協力して開設された「映像表現」。授業では、作品鑑賞や評論を通じて映像表現の歴史や社会との関わりを学び、チームでショートムービー制作に取り組む。2024年度はCM制作に挑戦。業界の最前線で活躍する電通の方によるワークショップ、発表会など本格的で充実した内容となっている。
菅原くん

僕は技術でいろいろなものを作るうちに、創作の楽しさを知りました。特にコンピュータを使って何かを作ることに興味を持ち、それが情報の授業につながり、プログラミングやイラストレーターを使って画像を作るなかで、自分の得意分野を見つけられました。授業をきっかけに興味が広がり、それをさらに自分で深めていけるのが魅力です。

吉田くん

僕も技術の授業で大きな影響を受けました。入学した年に中村先生が技術科の担当に加わり、僕らの場合は、自分の身の回りにある問題を見つけ、それを解決する製品を自分で設計し、製作するという木材加工の授業がありました。みんなそれぞれで違うものを作り、僕は棚を作りました。また、歯車やブロックなどを用いたエネルギー変換の授業では、僕たちの班は卓上掃除機のような実用的なものを作れました。みんなが同じものを作るのではなく、自分でアイデアを出して形にする過程はとても楽しかったです。

この経験は、KSプロジェクト「KAIJO DESIGN TEAM」に参加して、音楽室のリノベーションに関わったことにもつながっています。学校公式グッズのデザインや、そのコンペで意見を言い合って、より良いものを作っていった時間も、すごく刺激的でした。デザインチームで作ったロゴは今も使われているし、公式グッズも約2年で全商品が更新されるので、自分が作った商品を受験生に買ってもらえるのは、作り手として嬉しいです。音楽室もリノベーションが終わった後、実際に使ってみると印象がかなり変わっていて、「すごく良くなった!」と思えて感動しました。海城には多岐にわたる取り組みがたくさんあって、自分に合ったものを選んで挑戦できます。しっかり手応えも感じられます。

吉田くん
大山くん

僕は「俳句甲子園への道」というKSプロジェクトに参加しています。去年は全国3位になり、今年も地方大会では数年ぶりに優勝しました。先輩も多く、とても刺激を受けています。

また、受験勉強には直結しませんが、中3の社会科の総合学習で取り組んだ「卒業論文」も大きな影響を受けた経験です。自分でテーマを決めて取材を行い、その中でつながった人たちとは今でも連絡を取ったり、取材した障がい者スポーツは今でも見に行ったりしています。学校の活動だけではなく、人生における趣味を得られましたね。

植手くん

家庭科の授業も印象に残っています。僕の学年では担当の先生が2人いて、本来の授業に加えて、それぞれの得意分野について話してくれました。性教育に関するビデオを見たり、実際にフィールドワークに行ったりして、家庭科の枠を超えた内容でした。特に性教育については、男子校ならではの視点で、大学に入ってからの女性とのお付き合いに失敗しないためにはどうすればいいかなど、適切な知識を身につけ、楽しい大学生活を送ることに焦点を当てて教えてくれました。僕にとって本当に役立つ授業でした。

植手くん
大山くん

僕も性教育は忘れられません。中3の最後に男性視点での深い話をしてもらったのですが、言われてみれば大事なことがたくさんあったと思います。

できるなら
海城での経験を将来につなげたい
どんどん個性的な授業や取り組みが出てきますね。
植手くん

とにかく海城の面白さは、プロジェクトの多さです。幅広いKSプロジェクトでは、先生が自分の好きなプロジェクトを本気で紹介してくれるので、そこに入って自分の好きなことを夢中でやれます。それが最大の魅力だと思います。

吉田くん

KSプロジェクト以外にも、情報科が主催する「Unityクリエイターコース」や「アプリ開発コース」というプログラミング講座が楽しいです。海城ではMacBookを1人1台持っているので、興味があれば参加できて実践的な内容を学べるんです。

情報や技術の授業で使用できるように学校が一括でアカウントを取得してくれていて、ソフトがMacBookに入っているので、ソフトのダウンロードは自由にできます。動画編集やイラスト制作、写真加工などをしている人がたくさんいるし、できるならこうした経験を何らかの形で将来につなげたいです。

菅原くん

情報は独自の講座や実習があって、とても面白いです。夏休みの宿題では Adobe Illustratorで修学旅行で行く京都市の地図の製作、冬休みの宿題では修学旅行で行った場所の観光促進Webサイト製作などがありました。自分が本当に作りたいプログラムを考えたり、データを分析してレポートを書いたりするタスクが多く、かなりユニークだと思います。

宿題は大変な部分もありますが、自分の作りたいものを自由に作れるので僕はとても楽しかったです。僕は3DCGを使っているので、その分野に興味があります。まずは大学で研究してみたいと考えています。

この学びが将来にも生きるといいですね。
植手くん

高1の「芸術鑑賞会」では高校生有志が集まって「シェイクスピア」の舞台発表を行います。プロが脚本を書いてくれて、演劇指導もプロから受けて、約2ヶ月の特訓を経てお披露目するんです。参加した僕の友人は、プロの方とつながりができて、結果的にその後も演劇にハマり、有志で集まって、大学で専門にしている人たちと組んで公演をするようになりました。「芸術鑑賞会」を起点に動き出す人もいます。

大山くん

僕は実際に「芸術鑑賞会」に参加しました。プロの演者さんと一緒に取り組み、先生たちも総合的にサポートしてくれて同じ舞台に立ったんです。小道具も本格的で、何よりも講堂に舞台がしっかりと作られ、舞台監督さんが付いて本格的な劇をできるのが本当に楽しかったです。

大山くん
強制されることなく、
自分のやりたいことを追求できる
皆さんの経験が、「これがあるから海城は楽しい、面白い」の連続でしたね。充実した学校生活を送っていることがよくわかりました。
大山くん

海城には「勉強だけ!」という人は見当たらなくて、勉強以外の何かに誰もが本気になっています。先生たちも真剣に教えてくれるので、僕らも自然と本気になれます。僕自身は「芸術鑑賞会」に参加したことで本気になり、自信が持て、褒められたことが嬉しかった。あの達成感は一生忘れないと思います。僕らはそんな環境がある海城で育っています(笑)。

菅原くん

自由にやりたいことができるのは、海城の大きな強みですね。強制されることなく、自分のやりたいことを追求できる環境です。だからこそ、いろんな活動に参加して自分の興味や視野を広げられます。これが一番の良さです。無気力な人はほぼいなくて、スポーツに打ち込む人もいれば、科学の研究や実験に夢中な人もいれば、僕のようにコンピュータに没頭している人もいて、それがいいなと思いますね。個性ある周りの人たちに僕も日々感化されています。

植手くん

大学を卒業して社会に出てからのことを見据えた授業が多く、選択肢も豊富で、それが自分の興味の幅を広げて、人としても成長させてくれます。先生たちが様々な種を蒔いて、僕らに芽を出すよう促してくれるのは本当にありがたいことだし、その期待に応えたいですね。僕自身、KSプロジェクトや映像制作などを通じて、すごく鍛えられました。自分の中で「これが面白い!」と感じるものが増え、どんどん解像度が上がる感覚があります。

吉田くん

中1の頃はデザインに対して「面白そうだな」という程度の興味でしたが、実際に取り組むと「本当に面白い」と感じ、どんどん好きになりました。また、もともとパソコンが好きでしたが、情報で本格的なプログラミングを学び、実際にそれも自分で使う機会を得ることで、さまざまなことができること楽しさを知り、ますますのめり込みました。音楽室のリノベーションも頭の中で考えるだけではなく、「こうなればいいのに」というものを提案して、外部業者さんに交渉して、大きなお金が動いて形になる経験で、自分1人では絶対にできない貴重なもの。自信にもなりました。こうしたたくさんの機会を作ってくれる海城は、とても面白い学校です。

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